【作業療法士が解説】FIM認知5項目の採点基準と具体例|理解・表出・社会的交流・問題解決・記憶

作業療法士が解説

FIM認知5項目(理解・表出・社会的交流・問題解決・記憶)は、会話ができるか、認知機能検査の点数が高いかだけでは採点できません。見るべきなのは、生活場面でどの程度自立しているか、他者の声かけや促しがどのくらい必要かです。この記事では、5点と6点の違い、声かけの扱い、項目別の1〜7点の具体例と記録のポイントを作業療法士の視点で整理します。「FIMの5点と6点の違いは?」「声かけだけでも減点される?」「予定表を見て動ける人の記憶は何点?」と迷う方は参考にしてください。

⚠️ この記事の位置づけ

本記事は公開資料に基づく教育用解説です。正式な採点では、採用する日本語版FIMマニュアル・講習内容に従ってください。海外資料の運用上の補足は、出典を明記して紹介します。

Contents
  1. FIM(機能的自立度評価法)の5点と6点は何が違う?
  2. 声かけはFIMの採点にどう扱う?
  3. FIM認知5項目では何を評価する?全体像
  4. FIM認知項目の1〜7点はどう見分ける?基本的な見方
  5. FIM認知項目の採点前に押さえたい4つの原則
  6. FIM認知項目の「理解」は何を評価する?1〜7点の具体例
  7. FIM認知項目の「表出」は何を評価する?1〜7点の具体例
  8. FIM認知項目の「社会的交流」は何を評価する?1〜7点の具体例
  9. FIM認知項目の「問題解決」は何を評価する?1〜7点の具体例
  10. FIM認知項目の「記憶」は何を評価する?1〜7点の具体例
  11. FIM認知5項目のどれで評価する?迷いやすい場面の整理
  12. FIM認知項目の採点根拠が伝わる記録の書き方は?
  13. FIM認知項目を退院支援にどう生かす?
  14. FIM認知項目の採点でよくある質問
  15. まとめ

FIM(機能的自立度評価法)の5点と6点は何が違う?

FIM(Functional Independence Measure:機能的自立度評価法)では、7点が完全自立、6点が修正自立、5点が監視・待機的な促しです。最も重要な違いは、他者による支援が必要かどうかです。

点数大まかな位置づけ判断のポイント
7点完全自立他者の支援や特別な配慮なしに、適切かつ安全に行える
6点修正自立その項目で求められる内容を他者の支援なしに行えるが、時間や補助手段などを要する
5点監視・待機的な促し監視やまれな促しを要する。理解・表出・問題解決では、基本的な内容は自立していても、複雑な内容に支援を要する場合も含む

6点は、その項目で求められる内容を他者の支援なしに行えるものの、時間や補助手段などを要する状態です。5点では、監視やまれな促しを要する場合に加え、理解・表出・問題解決において、基本的な内容は自立していても複雑な内容には支援を要する場合があります。AROCのFAQでも、基本的な問題しか解決できない場合は5点を超えないとされています。[3]

つまり、「声かけがなければ6点以上」とは限りません。日常の基本的な内容に促しが不要でも、複雑な内容を自立して扱えなければ、理解・表出・問題解決は5点にとどまります。

たとえば、記憶を補うための予定表を本人が自分で確認し、他者の促しなしに行動できる場合は、6点を検討することがあります。一方、「予定表を見てください」と毎回声をかける必要がある場合は、5点以下を検討します。

🟦 5点・6点で併せて確認したいポイント

  • 声かけや促しが本当に必要か
  • 必要な場合、どのくらいの頻度か
  • 基本的な内容だけか、複雑な内容も扱えるか
  • 補助手段を自分で使えるか
  • 評価期間全体で同じ状態が確認できるか

声かけはFIMの採点にどう扱う?

認知項目では、身体に触れる介助がなくても、次のような声かけや促しが支援に含まれます。

  • 説明を言い換える
  • 内容を繰り返す
  • 行動開始を促す
  • 手順を指示する
  • 選択肢を提示する
  • 予定や依頼を再提示する
  • 対人場面で順番や感情の調整を促す
  • 問題に気づかせ、対応方法を示す

したがって、「身体介助がないから5点以上」とは限りません。声かけの頻度や内容によっては、4点以下になる場合があります。一方で、声かけが一度あっただけで、直ちに低い点数になるわけでもありません。

⚠️ 通常の会話と、障害を補うための促しを分ける

通常の会話に必要な質問や確認を、すべて介助として数えるわけではありません。「どの辺りが痛みますか」という確認も、誰に対しても行う問いかけであれば、それだけでは介助とはいえません。本人だけでは必要な内容を理解・表出・判断・想起できず、障害を補うために言い換え、選択肢の提示、語句の補完、繰り返しの誘導などを要する場合に、その支援内容と頻度を評価します。

🟦 声かけがあったら記録しておきたい4点

  1. どの場面で声かけが必要だったか
  2. 声かけの内容は何だったか
  3. 声かけ後に本人がどこまで自力で行えたか
  4. 同様の支援がどの程度の頻度で必要だったか

FIM認知5項目では何を評価する?全体像

FIMは18項目からなり、運動13項目と認知5項目に分かれます。認知5項目は各1〜7点、合計5〜35点です。[1]

分類項目生活で確認する内容
コミュニケーション理解相手から伝えられた内容を理解できるか
コミュニケーション表出自分の考えや必要なことを相手に伝えられるか
社会的認知社会的交流周囲との関係や場面に合わせて交流できるか
社会的認知問題解決困りごとに気づき、判断し、対応できるか
社会的認知記憶日常で必要な人・日課・依頼を覚え、行動につなげられるか

社会的認知の3項目(社会的交流・問題解決・記憶)の採点手順は、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。
👉 FIMの認知項目の採点方法|社会的認知(社会的交流・問題解決・記憶)を新人でも迷わず評価する完全ガイド

FIM認知項目の1〜7点はどう見分ける?基本的な見方

次の表は、認知5項目に共通する大まかな見取り図です。6〜7点の条件や1〜2点の反応の質は、項目ごとに追加確認が必要です。割合だけを当てはめる採点表としては使用しないでください。[2,4]

点数大まかな位置づけ確認するポイント
7点完全自立その項目で求められる内容を、他者の支援や特別な配慮なしに適切に行える
6点修正自立他者の支援は不要だが、時間・補助手段・軽度の困難などがある
5点監視・待機的な促し基本的な内容はおおむね自立し、促しはまれ。複雑な内容の条件にも注意
4点最小限の促し・指示基本的な内容について、ときどき支援が必要
3点中等度の促し・指示支援を要する場面が増えるが、基本的な内容の半分程度以上を自力で行える
2点最大限の促し・指示基本的な内容でも多くの支援が必要
1点全介助継続的な支援が必要、または支援しても適切な反応・遂行が極めて乏しい

⚠️ 「促しなしで行える割合」は目安として扱う

促しなしで行える割合の目安として、5点が90%超、4点が75〜90%程度、3点が50〜74%程度、2点が25〜49%程度、1点が25%未満と示す海外資料があります。[2,4]割合は判断材料の一つであり、理解・表出の低得点では反応の一貫性なども重要です。

FIM認知項目の採点前に押さえたい4つの原則

1.実際の生活場面で確認する

訓練室で一度できたことだけで判断せず、食事、排泄、更衣、病棟での会話、予定変更など、複数の場面を確認します。

担当者が先回りして説明したり、毎回予定を教えたりしていると、支援の必要性が見えにくくなります。安全に必要な支援は継続したうえで、「その支援がなければ何が難しいか」を記録しましょう。

2.声かけの内容と頻度を記録する

認知項目では、促し・指示が必要な頻度が判断材料の一つになりますが、頻度だけで点数を機械的に決めることはできません。[2]「声かけあり」とだけ記録せず、次のように具体化します。

  • 「説明を一度言い換えると理解できた」
  • 「行動開始の促しが毎回必要だった」
  • 「予定表を自分で確認できた」
  • 「選択肢を提示すると希望を示せた」

3.基本的な内容と複雑な内容を分ける

理解・表出・問題解決では、日常の基本的な内容と、複雑・抽象的な内容を分けて考えます。

「トイレに行きたい」と伝えられることと、「退院後の生活で何を優先し、どの支援を利用するか」を相談できることでは、必要な認知的処理が異なります。

4.評価期間全体で判断する

午前中の会話だけでなく、夕方や予定変更時の様子も共有します。AROCの公開FAQでは、認知項目は24時間における支援の必要頻度で評価すると説明されています。[3]

「一度失敗したから最も低い点数」「成功した場面があったから高い点数」と機械的に決めず、施設の正式な評価期間・運用に沿って情報を集めます。

🔄 FIM認知項目の評価の流れ

  1. 食事・排泄・会話・予定変更など、複数の生活場面を観察する
  2. 必要だった支援の内容(言い換え・再提示・手順の指示など)と頻度を記録する
  3. 基本的な内容と複雑な内容に分けて、自立している範囲を整理する
  4. 日中・夕方・夜間を含め、評価期間全体の情報を照合する
  5. 採用しているFIMマニュアルの定義に照らして点数を判定する
  6. 看護師・PT・ST・医師・MSWなど多職種へ共有し、支援方法をそろえる

FIM認知項目の「理解」は何を評価する?1〜7点の具体例

評価する範囲

理解は、音声だけでなく、文字や身ぶりなどによる情報の受け取りも含みます。基本的な内容には食事・水分・排泄・痛みなど、複雑な内容には生活方針や複数の条件を含む相談などがあります。[2]

単にうなずいたかではなく、次の点を確認します。

  • 選択した内容が説明と合っているか
  • 行動が伝えた内容に対応しているか
  • 言い換えや繰り返しが必要か
  • 運動障害など別の要因で実行できない可能性はないか

コミュニケーション領域の「理解」と「表出」の1〜7点の目安を一枚にまとめると、下の図のようになります。

FIM理解・表出の採点方法ガイド:基本的な内容と複雑な内容で見る1〜7点の目安

理解の採点例

以下は、同様の状態が評価期間全体でも確認されていると仮定した架空の例です(この後の4項目の採点例も同じ前提です)。表内の一場面だけで点数を決める例ではありません。

点数の例架空の生活場面判断の理由
7点家族の勤務時間と住宅環境を含む退院後の説明を聞き、条件を整理して相談できる。特別な時間や補助手段は不要複雑な内容も他者の促しなく理解している
6点複雑な相談も理解できるが、情報を整理するために通常より時間がかかる。追加の説明や誘導は不要理解に時間を要するが、他者の支援は不要
5点食事・排泄などの説明はほぼ理解できる。まれに言い直しが必要で、複雑な説明には支援を要する基本的な内容への促しがまれで、複雑な内容は自立していない
4点食事や排泄の説明はおおむね理解できるが、更衣の手順を続けて伝えると途中で混乱し、一つずつ区切って言い直す必要がある。同様の言い換えが、日常の説明場面の約2割で必要だった基本的な内容でも、ときどき促しを要する
3点「お茶にしますか」などの短い質問は理解できるが、「食後に薬を飲んでから歯みがきをしましょう」のように二つ以上の内容を含む説明は、区切ったうえで実物を見せる必要がある。こうした支援が日常の説明場面の約4割で必要だった基本的な内容の半分以上は自力で理解できるが、支援が多い
2点食事・排泄の希望など、ごく簡単な内容の一部は分かる。多くの場面で一語ずつの説明や身ぶりが必要理解できる範囲が限られ、最大限の促しを要する
1点簡単な質問も反応が一定せず、身ぶりや繰り返しを加えても、意味に合った反応がほとんど確認できない促しても適切で一貫した理解が極めて乏しい

5点と6点の違い:理解

理解では、基本的な内容だけでなく、複雑な内容を他者の支援なしに扱えるかがポイントです。

  • 5点:基本的な説明はほぼ理解できるが、まれに促しが必要。複雑な内容は自立していない
  • 6点:複雑な内容も理解できるが、時間や補助手段などの修正がある。促しは不要

声かけの扱い:理解

補聴器を使っているだけで低得点にするのではなく、その状態でどの内容まで自立して理解できるかを確認します。AROCのFAQでは、補聴器は補助具として扱われ、補聴器を使って他者の支援なく理解できる場合は6点(修正自立)とされています。[3]

一方、補聴器を使用しても、基本的な説明のたびに繰り返しが必要であれば、その支援を評価に反映します。

FIM認知項目の「表出」は何を評価する?1〜7点の具体例

評価する範囲

表出は発話だけを評価する項目ではありません。書字やコミュニケーション手段を用いて、相手に意味が伝わるかも確認します。[4]

「流暢に話すが、何を求めているのか伝わらない」「発話は少ないが、筆談で具体的に伝えられる」といった違いに注意しましょう。

表出の採点例

点数の例架空の生活場面判断の理由
7点退院後に希望する生活と、その理由、家族への配慮を、相手が理解できるよう適切な時間で伝えられる複雑な考えも自立して表現している
6点言葉を探すため時間はかかるが、自分の希望や理由を、相手の誘導なしで最後まで伝えられる軽度の困難や時間延長はあるが、他者の支援は不要
5点空腹・排泄・痛みなどはほぼ自分で伝えられるが、まれに言葉が出ず、相手が選択肢を示す必要がある。複雑な考えを伝える際には支援を要する基本的な内容への促しはまれで、複雑な表現は自立していない
4点空腹や痛みは自分で伝えられる。一方、家族への連絡を希望する場面では、相手や用件を伝えられず、「奥さんですか、お子さんですか」など具体的な選択肢の提示を要する。同様の支援が日常的な要望の約2割で必要だった基本的な内容でも、ときどき表出を助ける支援が必要
3点トイレや痛みは伝えられるが、食事の好みや予定の希望などは単語が途切れ、相手が語句を補ったり「はい/いいえ」で確認したりする必要がある。こうした支援が日常的な要望の約4割で必要だった基本的な表出の半分以上は可能だが、支援が多い
2点自発的に伝わる内容は少ないが、実物や選択肢を繰り返し提示すると、一部の希望を一貫して示せる最大限の支援によって限られた内容を伝えられる
1点発話・身ぶり・選択肢を使っても、希望を安定して確認できず、反応の意味がほとんど特定できない促しても適切で一貫した表出が極めて乏しい

5点と6点の違い:表出

  • 5点:基本的な要望はほぼ伝えられるが、まれに内容を引き出す支援が必要
  • 6点:時間がかかる、言葉を探すなどの困難はあるが、他者の誘導なしに複雑な内容まで伝えられる

声かけの扱い:表出

通常の会話に必要な質問や確認を、すべて介助として数えるわけではありません。本人だけでは必要な内容を伝えられず、障害を補うために選択肢の提示、語句の補完、繰り返しの誘導などを要する場合に、その支援内容と頻度を評価します。

また、筆談という手段だけで6点とは決まりません。AROCのFAQでは、通常の紙とペンは補助具に当たらず、複雑な内容まで適切な時間で伝えられれば7点、時間を要する場合は6点と説明されています。[3]

FIM認知項目の「社会的交流」は何を評価する?1〜7点の具体例

評価する範囲

社会的交流は、治療や日常の対人場面で、他者と折り合いをつけ、参加するために必要な支援を評価します。[4]次のような場面を観察します。

  • 順番を待つ
  • 相手の発言を聞く
  • 話題を調整する
  • 気持ちを落ち着けて相談する
  • 場面に応じて行動を切り替える

⚠️ 性格で採点しない

内向的であることや、一人で過ごすことが好きという理由だけで低く採点しません。同様に、もともとの人見知りや慎重な性格だけでは、修正自立(6点)とも判断しません。性格の違いだけで点数を下げず、現在の対人場面で、適切に交流するための時間や配慮、他者の支援がどの程度必要かを確認します。

社会的交流の1〜7点の目安と、支援として記録するもの・しないものを一枚にまとめると、下の図のようになります。

FIM社会的交流の採点方法ガイド:1〜7点の目安と支援が必要な場面の割合、性格だけで採点しないポイント

社会的交流の採点例

点数の例架空の生活場面判断の理由
7点混雑した訓練室でも順番を待ち、希望が通らないときも相手と相談できる。調整役は不要他者との交流を自立して調整できる
6点発症後、対人場面で感情や行動を調整するまでに通常より時間を要する。ただし自分で調整でき、他者の仲裁や促しは必要としない調整に時間を要するが、他者の介入は不要
5点普段は適切に交流できるが、慣れない集団ではまれに気持ちを落ち着ける促しが必要支援が必要なのは限定的な場面で、頻度も少ない
4点普段の会話は適切だが、集団訓練では順番を待てずに話し始めることがあり、職員が「次は○○さんの番です」と順番を伝える必要がある。同様の介入が対人場面の約2割で必要だった適切な交流のため、ときどき介入が必要
3点1対1では落ち着いて話せるが、予定変更や待ち時間があると声が大きくなり、職員が理由を説明して気持ちを落ち着けるよう促す必要がある。こうした介入が対人場面の約4割で必要だった自立して交流できる場面は半分以上あるが、支援が多い
2点自分で交流を調整できる場面は3割程度で、多くの場面に職員が介入する必要がある適切な交流を保つため、最大限の介入が必要
1点ほぼすべての対人場面で継続的な調整が必要で、介入しても適切な交流の成立が極めて難しい交流のための支援がほぼ常に必要

5点と6点の違い:社会的交流

  • 5点:普段は適切だが、慣れない場面などでまれに促しが必要
  • 6点:対人場面での調整に時間がかかるなどの困難はあっても、他者の仲裁や促しは不要(人見知りなど性格だけでは6点としない)

声かけの扱い:社会的交流

順番を伝える、発言を止める、気持ちを落ち着けるよう促す、相手との間に入って調整するなどの対応は支援として記録します。

ただし、痛みや説明不足に対する合理的な拒否まで、社会的交流の問題として扱わないようにします。まず背景を確認し、どの場面でどのような調整が必要だったかを具体的に共有しましょう。

FIM認知項目の「問題解決」は何を評価する?1〜7点の具体例

評価する範囲

問題解決では、次の流れを確認します。

  1. 問題に気づく
  2. 対応方法を判断する
  3. 行動を開始する
  4. 手順を実行する
  5. 結果に応じて修正する

🟦 観察を整理するための問い

  • 必要な物がないときに、自分で気づけるか
  • うまくいかない方法を繰り返さず、別の方法を選べるか
  • 自分では対応できないと判断したとき、適切に援助を求められるか
  • 解決するまで行動を続け、結果を確認できるか

問題解決の1〜7点の目安を一枚にまとめると、下の図のようになります。

FIM問題解決の採点方法ガイド:1〜7点の目安と、気づき・判断・開始・修正で確認するポイント

問題解決の採点例

点数の例架空の生活場面判断の理由
7点退院後の移動方法について、家族の都合・費用・身体状況を整理し、必要な相談先も自分で選べる複雑な問題でも適切に判断し、行動できる
6点生活費とサービス利用の調整に時間はかかるが、問題点を整理し、自分で適切な相談・対応を進められる軽度の困難はあるが、他者からの誘導は不要
5点普段の困りごとには対応できるが、慣れない状況ではまれに「別の方法を考えてみましょう」と促しが必要日常の問題への支援は少ないが、複雑な問題は自立していない
4点食事に必要な物がないときは自分で職員に依頼できる。一方、更衣で衣服の向きを間違えた際にはそのまま続けようとし、「向きを確認しましょう」という促しを要する。同様の支援が、日常の問題解決場面の約2割で必要だった基本的な問題でも、ときどき指示が必要
3点物品の不足には自分で気づけるが、移乗前に車椅子のブレーキをかけ忘れる、ナースコールを使う場面を判断できないなど、職員が「まずブレーキを確認しましょう」と手順を示す必要がある。こうした支援が日常の問題解決場面の約4割で必要だった基本的な問題の半分以上は自力で対応できるが、支援が多い
2点自分で対応できる日常の問題は3割程度で、多くは職員が問題点や対応の順序を具体的に示す必要がある開始・判断・手順に最大限の指示が必要
1点困っても対応を始められず、ほぼすべての場面で次の行動を継続的に指示する必要がある問題解決にほぼ常時の支援が必要

5点と6点の違い:問題解決

  • 5点:日常の基本的な問題には対応できるが、慣れない状況や複雑な問題でまれに促しが必要
  • 6点:時間がかかるなどの困難はあっても、複雑な問題を他者の誘導なしに整理・判断・対応できる

声かけの扱い:問題解決

「別の方法を考えましょう」「まず職員を呼びましょう」といった声かけは、問題解決への支援です。

一方、「助けを求めた」という事実だけで減点するのは適切ではありません。自分の身体能力では難しいと判断し、必要な援助を適切に依頼する行動は、問題解決ができている表れにもなります。[3]

FIM認知項目の「記憶」は何を評価する?1〜7点の具体例

評価する範囲

記憶は、次のような生活上の情報を保持し、行動につなげられるかを確認します。

  • 生活でよく接する人を認識する
  • 日課を覚える
  • 依頼されたことを覚えて実行する
  • 時間が経過した後も予定や約束を利用する

担当者の氏名を正確に言えるかだけで判断しないようにしましょう。「いつもの担当者である」と認識できるか、伝えられた予定を時間が経ってから行動に反映できるかなど、生活の中で観察します。

記憶の1〜7点の目安を一枚にまとめると、下の図のようになります。

FIM記憶の採点方法ガイド:人・日課・依頼の記憶を評価する1〜7点の目安

記憶の採点例

点数の例架空の生活場面判断の理由
7点担当者や日課を覚え、時間をおいて依頼された物を持参できる。特別な補助手段や再説明は不要生活で必要な記憶を自立して利用できる
6点日課を保持するための専用チェック表が必要だが、自分で確認する習慣があり、他者からの促しなく行動できる記憶を補う手段が必要だが、その利用は自立している
5点人や日課はほぼ覚えているが、まれに依頼を忘れ、短い確認が必要になる思い出すための他者の支援はまれ
4点担当者や普段の日課は覚えているが、あらかじめ依頼された持参物を忘れることがあり、再提示を要する。人・日課・依頼の実行を含む評価場面全体で、約2割に促しが必要だった日課・依頼を保持するため、ときどき促しが必要
3点担当者の顔は分かるが、リハビリの時間や前日に決めた予定を忘れることが多く、そのたびに職員が予定を再提示する必要がある。こうした支援が評価場面全体の約4割で必要だった生活に必要な記憶を自力で利用できる場面は半分以上ある
2点自分で保持し行動につなげられる場面は3割程度で、多くの場面で日課や依頼を再提示する必要がある最大限の記憶支援が必要
1点よく会う人や日課、直前の依頼もほとんど保持できず、繰り返し伝えても行動への反映が極めて乏しい生活に必要な記憶の利用が極めて限定される

5点と6点の違い:記憶

  • 5点:人や日課はおおむね覚えているが、まれに他者からの確認や再提示が必要
  • 6点:予定表やチェック表などの補助手段は必要でも、本人が自分で使い、他者の促しなしに行動できる

声かけの扱い:記憶

予定表の存在だけで6点にはなりません。次の点を分けて確認します。

  • 一般的な予定管理として使っているのか、記憶障害を補うために不可欠なのか
  • 自分から確認できるのか、「表を見てください」という促しが必要なのか
  • 表を見たあとに必要な行動へ移れるのか
  • 誰かが予定を繰り返し説明する必要があるのか

🟦 作業療法士の視点:補助手段は「使えているか」を見る

「専用の記憶補助手段を自分で使える」場合と、「毎回、見ること自体を促す必要がある」場合は区別します。後者は促しの頻度によって5点以下を検討します。チェック表は点数を上げるための道具ではなく、本人が日課を自分で回すための手段として、生活の中で機能しているかを確認しましょう。

FIM認知5項目のどれで評価する?迷いやすい場面の整理

「トイレの前に職員を呼べない」は、どの項目?

同じ行動でも、背景によって関連する項目が異なります。

観察された困難確認したい内容関連する項目
「呼んでください」の意味が伝わっていない伝え方を調整すると理解できるか理解
呼ぶ必要は理解しているが、希望を伝えられない発話・身ぶり・機器で伝えられるか表出
約束を時間が経つと忘れる説明直後と時間経過後で違いがあるか記憶
約束は覚えているが、その場で危険性を判断できない安全な方法を選択し、開始できるか問題解決
他者との調整が必要な場面で仲裁や行動調整を要する説明の理解や本人の意向も含め、背景を確認できるか社会的交流など

行動を一つの項目に無理に割り当てる必要はありません。複数の項目で困難があれば、それぞれの定義に沿って評価します。

失語症があると認知5項目はすべて低くなる?

失語症という診断名から、一律に点数を下げません。一方で、実際に生じている生活上の支援を「言語の問題だから除外」と扱うことも避けます。AROCも、コミュニケーション障害の影響があっても、各項目の実際の遂行を評価するよう説明しています。[3]

発話だけでは状況を把握しにくい場合、普段使っている文字・身ぶり・実物なども確認し、STを含む多職種で情報を共有します。

「10回中1回失敗した」だけで4点と決めてよい?

単純な小テスト10問の正答率を、そのまま生活全体の割合に置き換えることはできません。必要なのは、その項目に該当する日常場面における支援の必要性です。

記録では、観察場面の偏り、内容の難しさ、同じ出来事への繰り返しの促しなどを確認します。境界付近なら観察を追加し、正式な基準に照らしてチームで判断しましょう。

FIM認知項目の採点根拠が伝わる記録の書き方は?

「理解良好」「認知低下あり」「声かけ必要」だけでは、点数の違いを共有しにくくなります。次の4点を記録すると、再評価や退院支援にもつながります。

記録する要素書く内容
場面いつ、何についてのやり取りだったか
支援前の状態どこまで自力でできたか
支援内容言い換え、選択肢、再提示、手順の指示など
頻度と結果どの程度必要で、支援後に何ができたか

📝 理解の記録例

食事・排泄・更衣に関する説明は多くの場面で理解する。観察した日常のやり取りの約2割で、説明を短く区切る言い換えが必要だった。言い換え後は内容に対応した選択ができた。複雑な退院後の生活説明は整理を要した。理解4点を検討。

📝 問題解決の記録例

日常の物品不足には自分で気づき、職員へ依頼できる。予定変更時や初めての手順では対応を止めることがあるが、促しが必要なのはまれ。複雑な生活上の調整は自立しておらず、問題解決5点を検討。

📝 記憶の記録例

記憶障害を補う専用チェック表を自分から確認し、持参物と日課を管理している。確認を促す声かけや依頼の再提示は不要。人の認識を含む他の評価範囲でも人的支援はなく、記憶6点を検討。

⚠️ 割合は観察した事実から書く

記録中の割合は、実際に観察・共有した情報に基づいて記載します。点数に合わせて後から割合を作らないことが重要です。

FIM認知項目を退院支援にどう生かす?

認知合計点が同じでも、必要な支援は異なります。以下は支援を考えるための架空例です。

項目AさんBさん
理解46
表出46
社会的交流66
問題解決63
記憶65
合計2626

Aさんは、説明の伝え方や意思表示の手段を整えることが課題になります。Bさんは、会話が成立していても、生活上の判断や行動の手順に支援が必要な可能性があります。

🟦 作業療法士の視点:家族には「点数」より「支援の中身」を伝える

家族へは「認知26点でした」だけでなく、「どの場面で、どのような声かけが必要か」を伝えます。合計点は同じでも、AさんとBさんでは自宅で整える支援がまったく異なります。服薬、火の管理、金銭、外出などは、実際の生活課題として別途確認しましょう。

FIM認知項目の採点でよくある質問

FIMの5点と6点の違いは何ですか?

6点は、その項目で求められる内容を他者の支援なしに行えるものの、時間や補助手段などを要する状態です。5点は、監視やまれな促しを要する状態で、理解・表出・問題解決では、基本的な内容は自立していても複雑な内容に支援を要する場合も含みます。

声かけだけなら、最低でも5点ですか?

いいえ。障害を補うための促しが必要な頻度によっては、4点以下になる場合があります。「身体介助なし」だけで5点とまとめないようにします。

声かけがなければ6点以上ですか?

いいえ。理解・表出・問題解決では、基本的な内容に促しが不要でも、複雑な内容を自立して扱えなければ5点にとどまります。

予定表を自分で見て動ける場合、記憶は6点ですか?

記憶障害を補うために予定表が必要で、本人が自分から確認し、他者の促しなしに行動できる場合は6点を検討します。一般的な予定管理として使っているだけでは、6点とは判断しません。「表を見てください」という促しが必要なら5点以下を検討します。

会話が流暢なら、理解・表出は7点ですか?

流暢さだけでは決まりません。意味が相手に届くか、複雑な内容まで支援なしに扱えるかを確認します。

補聴器を使っていると、理解は何点になりますか?

AROCのFAQでは、補聴器は補助具として扱われ、補聴器を使って他者の支援なく理解できる場合は6点とされています。繰り返しの説明が必要なら、その支援を反映します。

筆談で伝えている場合、表出は6点ですか?

筆談だけで6点とは決まりません。AROCのFAQでは、紙とペンは補助具に当たらず、複雑な内容を適切な時間で伝えられれば7点、時間を要する場合は6点とされています。

自分から助けを求めた場合、問題解決は減点されますか?

助けを求めた事実だけでは減点しません。自分では難しいと判断し、適切に援助を依頼できることは、問題解決ができている表れにもなります。

HDS-RやMMSEの点数からFIMを決められますか?

そのまま換算しません。検査結果は観察の手がかりとして使い、日常生活で必要な支援を評価します。

✅ 振り返りポイント

  • 6点は「支援なし+時間・補助手段」
  • 5点は「まれな促し」または「複雑な内容に支援」
  • 通常の会話と障害を補う促しを分ける
  • 補助手段は「自分で使えているか」を見る
  • 人見知りなど性格だけで採点しない
  • 支援の場面・内容・頻度・結果を記録する

まとめ

FIM認知5項目を評価するときは、会話の印象や検査結果だけでなく、生活に必要な支援を具体的に捉えます。

  • 6点は、その項目で求められる内容を他者の支援なしに行えるが、時間や補助手段などを要する状態
  • 5点は、監視やまれな促しを要する状態。理解・表出・問題解決では、基本的な内容は自立していても複雑な内容に支援を要する場合も含む
  • 通常の会話に必要な質問は介助とせず、障害を補うための言い換え・選択肢の提示・再提示・行動の促しを支援として評価する
  • 理解・表出は、基本的な内容と複雑な内容を分けて確認する
  • 社会的交流は、性格ではなく、現在の対人場面で、適切に交流するための時間や配慮、他者の支援の必要性を評価する
  • 問題解決は、気づきから判断・開始・修正まで確認する
  • 記憶は、人・日課・依頼を生活の中で利用できるかを確認する
  • 点数だけでなく、声かけの内容と頻度を記録する

まずは次の評価から、「声かけあり」の一言で済ませず、どの場面で・どんな声かけを・どのくらいの頻度で行い、その後に本人が何をできたかを書き残してみてください。記録がそろうと、点数の根拠をチームで共有しやすくなります。

点数に加えて支援の中身を残すことで、病棟での対応をそろえ、家族が実践できる退院後の支援へつなげやすくなります。FIM認知5項目の境界で迷う場面は、一人で判断を抱え込まず、採用マニュアルを確認したうえで看護師・PT・ST・医師などとすり合わせましょう。

📚 参考資料

  1. Independent Hospital Pricing Authority. Functional Independence Measure(FIM), METEOR metadata 495857.
    https://meteor.aihw.gov.au/content/495857
  2. UK FIM+FAM Users Group. The UK FIM+FAM, Version 2.2, September 2012. 認知項目および各FIM項目の解説を参照(FAM追加項目や英国独自のルールは本記事に適用していません)。
    https://www.kcl.ac.uk/nmpc/assets/rehab/uk-fimfam-manual-v2.2.pdf
  3. Australasian Rehabilitation Outcomes Centre(AROC), University of Wollongong. FIM / WeeFIM Frequently asked questions. 基本・複雑な内容と5点、補聴器、筆談、認知項目の支援頻度などを参照。
    https://www.uow.edu.au/australasian-health-outcomes-consortium/aroc/fim-weefim/faqs/
  4. Traumatic Brain Injury Model Systems National Data and Statistical Center. FIM Data Dictionary. 各認知項目の定義を参照。
    https://www.tbindsc.org/staticfiles/DD/Chapters/FIM.html

※資料確認日:2026年10月24日。本文の採点例・観察の問い・記録例・ケース比較は、各定義を踏まえて作成した独自の教育用例です。

※本記事は参考情報であり、正式な採点マニュアルや講習内容の代替ではありません。

この記事を書いた人:Home Reha 福岡|作業療法士

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homereha
作業療法士。千葉県の回復期病院と福岡県の一般病院で、脳卒中・脊髄損傷・骨折・肩関節周囲炎などのリハビリに携わり、実施件数は約1.5万件。現在も病院勤務を続けながら、福岡で訪問型の自費リハビリ「Home Reha 福岡」を運営しています。福岡県作業療法士学会での発表、「作業療法・福岡」への論文掲載あり。

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