SIASとは?9領域・22項目の採点と臨床での活用を作業療法士が解説
「麻痺の程度は把握したのに、なぜ更衣や移乗が難しいのか説明しきれない」と感じることはありませんか。生活動作には運動麻痺だけでなく、感覚、筋緊張、関節可動域、疼痛、体幹機能、視空間認知、言語、非麻痺側の筋力も影響します。SIAS(脳卒中機能障害評価法)は、これらを共通の枠組みで整理できる評価法です。SIASとは何か、何点満点なのか、どう採点し臨床でどう活かすのかを解説します。
✍ 福岡で訪問型の自費リハビリを行う作業療法士が、PT・OT・STなどのセラピスト向けに解説しています。
目次
SIAS(脳卒中機能障害評価法)とは?
SIASは、脳卒中によって生じた「からだと脳の働きの低下」を、運動だけでなく多くの側面から点数で整理する評価法です。正式名称は Stroke Impairment Assessment Set(脳卒中機能障害評価法) で、「サイアス」と読みます。脳卒中による機能障害を多面的に捉えるために開発されました。[1,2]
基本構成は9領域・22項目で、運動機能の5項目は各0〜5点、残る17項目は各0〜3点です。合計は0〜76点で、原則として高い点数ほど、その項目で評価する機能が保たれていることを示します。[1,2]
臨床でSIASを使う主な目的は、次のとおりです。
- 運動麻痺以外の機能障害も含めて、障害の全体像を整理する
- 項目ごとの変化から、経過を共通の指標で追う
- 動作が難しい背景について、仮説を立てる手がかりにする
- 多職種で同じ枠組みを使い、情報を共有しやすくする
SIASは主に心身機能の評価で、日常生活でどの程度介助が必要かを直接示すものではありません。食事や更衣などの自立度は、FIMやバーセルインデックス(BI)、実際の動作観察と組み合わせて確認します。機能の評価と生活の評価をつなげて読むことで、介入の焦点が絞りやすくなります。
SIASの9領域・22項目と満点は?
下の図は、SIASの9領域・22項目の全体像をまとめたものです。
以下は評価内容を理解するための要約です。実施姿勢、反復回数、刺激の与え方、得点境界、細分類の扱いは、正式な採点基準に従ってください。[2]
| 領域 | 項目 | 各項目の得点範囲 |
|---|---|---|
| 麻痺側運動機能 | 上肢近位、手指、股関節屈曲、膝関節伸展、足部運動 | 0〜5点 |
| 筋緊張・腱反射 | 上肢筋緊張、下肢筋緊張、上肢腱反射、下肢腱反射 | 0〜3点 |
| 感覚 | 上肢触覚、下肢触覚、上肢位置覚、下肢位置覚 | 0〜3点 |
| 関節可動域 | 上肢、下肢 | 0〜3点 |
| 疼痛 | 疼痛 | 0〜3点 |
| 体幹機能 | 腹筋力、垂直性 | 0〜3点 |
| 視空間認知 | 視空間認知 | 0〜3点 |
| 言語機能 | 言語機能 | 0〜3点 |
| 非麻痺側機能 | 大腿四頭筋力、握力 | 0〜3点 |
運動機能は25点、その他は51点で、合計76点です。
一部の項目には、同じ点数の中で状態を区別する細分類があります。細分類がある項目は、数字だけでなく分類記号も記録してください。合計点だけでは残せない障害の特徴を、経過比較や情報共有に活かせます。細分類の具体的な記号・定義は、実際に参照している採点基準で確認してください。
運動項目だけを実施した場合は、「SIAS運動項目合計:○/25点」と明記し、全項目の合計(76点満点)と区別して記録します。
麻痺側運動機能の5項目では何をみる?
下の図は、麻痺側運動機能5項目の課題をまとめたものです。
上肢近位はKnee-Mouth Test、手指はFinger-Function Test、下肢はHip-Flexion Test、Knee-Extension Test、Foot-Pat Testで評価します。[2]
| 項目 | 課題の概要 | 臨床で併記したい観察 |
|---|---|---|
| 上肢近位 | 麻痺側の手を反対側の膝から口へ運ぶ | 到達の可否、体幹の代償、疼痛 |
| 手指 | 手指の屈伸・分離した運動を確認 | 一括運動、指ごとの差、動作のぎこちなさ |
| 股関節屈曲 | 座位で股関節を屈曲する | 足部の挙上、骨盤・体幹の代償 |
| 膝関節伸展 | 座位で膝関節を伸展する | 伸展の範囲、反復の様子 |
| 足部運動 | 座位で踵を接地させ、足関節の背屈を反復する | 背屈、反復、他の部位の代償 |
SIASは所定課題の遂行や動作のぎこちなさなどを含めて評価するため、「SIASが3点だからMMT(徒手筋力検査)も3」とは判断できません。[2]
また、課題ができない理由が運動麻痺とは限りません。肩痛、可動域制限、指示理解の難しさ、注意の問題なども観察します。これらを確認しても独自に点数を補正せず、正式基準に沿った得点と、結果に影響した条件を分けて記録します。
運動以外のSIAS項目はどう解釈する?
下の図は、運動機能以外のSIAS項目をまとめたものです。
筋緊張・腱反射:高い点数を「痙縮が強い」と読まない
SIASでは、筋緊張や腱反射(腱をたたいたときに起こる反射)も、正常に近い状態ほど高得点になります。得点の方向をMAS(Modified Ashworth Scale)などと混同しないようにしましょう。低緊張や反射低下も評価に含まれるため、低得点をすべて痙縮と解釈することもできません。[2]
治療標的となる筋や、動作を妨げる抵抗を検討するときは、必要に応じて筋別の評価、他動運動時の反応、実際の動作を追加します。
感覚:回答の不一致と感覚低下を分けて考える
触覚と位置覚(関節がどの位置・方向にあるかを感じ取る感覚)は別項目です。触れられたことが分かっても、関節の動く方向が分からない場合があります。[2]
臨床では、視覚で確認しながらなら手を置けるか、足元を見ないと位置が安定しないかなども観察します。回答が不安定な場合は、失語、注意障害、疲労、検査説明の理解などの影響も確認します。
関節可動域・疼痛:動かない原因を整理する
SIASの関節可動域項目は、すべての関節や運動方向を網羅する評価ではありません。上肢では肩関節の他動外転、下肢では膝関節伸展位での足関節他動背屈を評価します。[2]更衣や立位などの動作分析では、必要に応じて他の関節・運動方向も追加して確認します。
疼痛項目では、脳卒中に関連する疼痛を評価します。[2]脳卒中と関連しない既往疾患などによる疼痛は区別し、採点基準に沿って扱います。臨床記録では、疼痛の部位、安静時・運動時の違い、睡眠や活動への影響も併記します。
体幹機能:座れることと生活動作が安定することを分ける
体幹機能は腹筋力と垂直性(座位で体をまっすぐに保てるか)で評価します。[2]
食事中の姿勢、更衣で両手を使ったときの安定性、移乗時の重心移動は、別途動作場面で確認します。ただし、垂直性の得点だけで、姿勢が傾く原因や、いわゆるプッシャー現象の有無・程度を判断することはできません。座位・立位での傾斜、非麻痺側上下肢で押す行動、姿勢を修正した際の反応などを別途観察します。
視空間認知・言語:追加評価の入口にする
SIASの視空間認知・言語項目は、詳細な高次脳機能検査や失語症検査の代わりにはなりません。
見落としや会話の難しさがある場合は、机上検査に加え、食事、更衣、移動、道具使用などの場面を観察します。失語が疑われる場合はSTと情報を共有し、指示理解の問題が他のSIAS項目にも影響していないか確認します。
非麻痺側機能:「健側だから問題ない」を避ける
非麻痺側の大腿四頭筋力と握力も評価します。[2]
非麻痺側の機能低下は、立ち上がりや移乗、片手で行う生活動作の負担を考える手がかりになります。得点に加えて、筋力測定値や既往歴も記録すると有用です。
運動以外の項目は、単に点数を埋めるためのものではありません。感覚・可動域・体幹・認知などの低下は、それぞれ異なる経路で動作を妨げます。どの項目の低下がどの生活場面に表れているかを結びつけることで、作業活動への介入が具体的になります。
SIASの評価の流れと採点のばらつきを減らす工夫
SIASを経過比較に使うには、評価の手順と条件をそろえることが前提です。全体の流れは次のように整理できます。
- 採点基準の版と、細分類・合計点の扱いを確認する
- 覚醒、疼痛、疲労、指示理解など、当日の状態を確認する
- 所定の姿勢・課題・教示で各項目を実施し、得点を記録する
- 声かけ・支持・介助の内容や、結果に影響した条件を併記する
- 項目ごとの結果を、ADL場面の動作観察と照らし合わせる
- 医師・PT・OT・ST・看護師など多職種へ共有する
短時間で実施できる評価でも、課題や採点基準を統一しなければ比較は難しくなります。施設内では、次の条件を共有しましょう。
- 採点基準の版と、細分類・合計点の扱いを統一している
- 所定の姿勢、課題、反復回数、教示を確認している
- 声かけ、支持、介助を行った場合は内容を記録している
- 疼痛、疲労、覚醒、指示理解など結果に影響する条件を残している
- 前回と異なる条件で実施した場合は、その違いを明記している
安全上実施できない項目は無理に検査せず、その項目の正式基準に定められた扱いを確認します。「実施できない場合はすべて0点」「すべて欠測」といった一律の処理は避け、理由を記録します。
SIASは合計点だけで判断してよい?
SIASの合計点は経過を整理する指標になりますが、同じ合計点でも障害の内訳は異なります。
たとえば、上肢運動が改善する一方で肩痛や可動域制限が悪化していると、合計点では変化が小さく見えることがあります。合計点とともに、項目ごとの変化を確認してください。
また、SIASが高得点でも、巧緻動作、複雑な認知課題、実生活での持続性などに問題が残る場合があります。満点は、評価された課題で機能が保たれていることを示すもので、すべての生活機能が回復したという意味ではありません。
FIM・BI・Brunnstrom stageとどう使い分ける?
下の図は、SIASとFIM・BI・Brunnstrom stageの役割の違いをまとめたものです。
以下は臨床で評価を組み合わせるための整理です。
| 評価 | 主に分かること | SIASとの組み合わせ方 |
|---|---|---|
| SIAS | 脳卒中による多面的な機能障害 | 動作困難の背景を検討する |
| FIM | ADLの自立度・介助量 | 機能変化が介助量に反映されたか確認する |
| BI | 基本的ADLの自立度 | 生活機能の経過と併せて読む |
| Brunnstrom stage | 共同運動や分離運動に着目した運動回復段階 | 運動回復の特徴を補足する |
SIASとBrunnstrom stageの点数を、機械的に換算することはできません。また、ADLの改善は麻痺の回復だけでなく、代償方法の習得や環境調整でも生じます。
上肢が動くのに更衣が難しいのはなぜ?OTの臨床例
以下は解釈の流れを示す架空の例です。
麻痺側上肢の課題は可能になってきたものの、袖を通す際に手が衣服に引っかかり、見守りや介助が続いているとします。
この場合、上肢運動項目だけでなく、触覚・位置覚、肩の可動域と疼痛、体幹機能、視空間認知の結果を確認します。そのうえで、更衣動作中に何が起きているかを観察します。
- 手の位置が分からず、衣服の中で止まっているのか
- 肩痛や可動域制限で袖へ手を運べないのか
- 衣服の片側を見落としているのか
- 両手を使うと座位が不安定になるのか
- 手順や指示理解に問題があるのか
SIASで得た結果は、こうした仮説を立てる手がかりです。動作の原因を得点だけで断定せず、実際の観察で確かめ、衣服の選択、手順の工夫、視覚的手がかり、姿勢や支持の調整などを検討します。
SIAS:全22項目実施、合計○/76点。前回と比べ上肢近位運動は改善したが、上肢位置覚の低下が残存。更衣では麻痺側上肢の位置を視覚で確認すると袖通しが進む一方、視線を外すと衣服への引っかかりに気づきにくい。座位で実施し、後半に疲労を認めた。次回は評価条件をそろえて再確認し、更衣中の視覚的確認と衣服の配置を調整する。
実際の記録では、各項目の得点も残してください。「得点」「動作観察」「解釈」「次の介入」を分けると、チームで共有しやすくなります。
SIASの信頼性・妥当性は?
道免の1995年の研究では、脳卒中患者20例を対象とした検者間信頼性の検討で、麻痺側運動機能のweighted κは0.854以上と報告されています。[3]ただし、項目によって一致度は異なるため、この数値をSIAS全項目に当てはめることはできません。体幹、高次脳機能、感覚項目などの信頼性・妥当性は、園田の研究で別に検討されています。[4]
2000年の研究では、年齢、SIAS合計、入院時FIMを用いた退院時FIM予測の有用性が示されています。[5] これは対象集団での予測モデルの結果であり、SIAS単独の点数から個々の患者の退院先や歩行自立を断定できるという意味ではありません。
報告された信頼性は、各研究の対象者・検者・評価条件のもとで得られた値です。施設内でも手順と採点基準を共有し、評価条件をそろえることで、経過比較の精度を高められます。得点が変化した場合は、機能の変化に加えて、検者や当日の状態の影響も確認します。予測研究の結果は対象集団での傾向として参考にし、個別の判断は動作観察と合わせて行います。
SIASに関するよくある質問
SIASは何点満点ですか?
全22項目で76点満点です。麻痺側運動機能5項目のみなら25点満点です。
SIASの読み方は?
「サイアス」と読みます。Stroke Impairment Assessment Setの略で、日本語では脳卒中機能障害評価法と呼ばれます。
SIASの点数は高いほど良いのですか?
原則として、高い点数ほどその項目で評価する機能が保たれていることを示します。ただし満点でも、評価課題に含まれない巧緻動作や生活場面での問題が残ることがあります。
運動項目だけ使ってもよいですか?
目的に応じて一部項目を経過観察に使うことはあります。ただし、実施した項目と分母を明記し、全SIASの評価と区別します。運動以外の障害も別途確認しましょう。
SIASはMMTの代わりになりますか?
なりません。SIASの運動項目は所定課題の遂行や動作のぎこちなさを含めて評価するため、筋力の段階とは意味が異なります。
SIASで歩行自立を判断できますか?
SIASだけで判断せず、実際の歩行、バランス、注意、疲労、補助具、生活環境などを確認します。
点数が変わらなければ改善していないのですか?
段階式評価のため、同じ点数内で動作が変わることがあります。反復の様子や代償、実際のADL変化も併記します。
SIASとFIMはどちらを使えばよいですか?
目的が異なるため、必要に応じて組み合わせて使います。SIASで機能障害の内訳を、FIMで生活上の自立度・介助量を確認し、両者を照らし合わせて読みます。
採点表はこの記事だけで代用できますか?
本記事は評価の概要と解釈の解説です。全項目の詳細な得点境界や細分類は掲載していないため、実施には正式な採点基準を参照してください。
- 9領域・22項目、76点満点
- 高得点=機能が保たれている
- 運動点数はMMTと別物
- 合計点と項目ごとの変化を併せて確認する
- 評価条件をそろえて記録
- FIM・BI・動作観察と組み合わせる
まとめ
評価で終わらせず、「生活動作のどこで困っているか」「何が影響しているか」「次に何を確かめるか」まで整理すると、評価を介入につなげやすくなります。次の評価では、得点とともに結果に影響した条件と動作観察を記録してみてください。
- SIASは、脳卒中の機能障害を9領域・22項目(76点満点)で整理する評価法
- 運動点数をMMTとして読まず、筋緊張・腱反射の得点の向きにも注意する
- 合計点と、どの項目が変化したかを併せて確認する
- 細分類がある項目は分類記号も記録する
- FIM・BIや実際のADL観察と組み合わせて解釈する
SIASの項目別結果を実際の生活動作と照らし合わせ、多職種で動作困難の背景と介入方針を共有しましょう。臨床でSIASを活かす鍵は、点数と生活動作をつなげて読むことです。
- 慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室:SIAS 脳卒中機能障害評価法
- Chino N, et al. Stroke Impairment Assessment Set (SIAS): A new evaluation instrument for stroke patients. リハ医学. 1994;31:119–125.
- 道免和久.脳卒中片麻痺患者の機能評価法Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)の信頼性および妥当性の検討(1)―麻痺側運動機能,筋緊張,腱反射,健側機能.リハ医学. 1995;32:113–122.
- 園田茂.脳卒中片麻痺患者の機能評価法Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)の信頼性および妥当性の検討(2)―体幹,高次脳機能,感覚項目,帰結予測.リハ医学. 1995;32:123–132.
- Tsuji T, et al. The stroke impairment assessment set: its internal consistency and predictive validity. Arch Phys Med Rehabil. 2000;81:863–868.
※本記事は参考情報であり、診断や正式な採点基準の代替ではありません。確認日:2026年10月13日
投稿者プロフィール
- 作業療法士。千葉県の回復期病院と福岡県の一般病院で、脳卒中・脊髄損傷・骨折・肩関節周囲炎などのリハビリに携わり、実施件数は約1.5万件。現在も病院勤務を続けながら、福岡で訪問型の自費リハビリ「Home Reha 福岡」を運営しています。福岡県作業療法士学会での発表、「作業療法・福岡」への論文掲載あり。
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