FIM「理解・表出」の採点、自信を持って答えられますか?現場OTが徹底解説
FIMの理解・表出は、会話の印象だけで採点すると評価者間で差が出やすい項目です。大切なのは「扱える内容の複雑さ」と「やり取りを成立させるために必要な援助」を分けて確認することです。
本記事では作業療法士が、1〜7点の基準、病棟での具体例、記録と退院支援へのつなげ方を解説します。日常会話ができれば7点?失語症なら理解と表出は同じ点数?筆談や文字盤は何点?と迷ったときの確認にお役立てください。
本文は基準を学ぶための解説で、公式マニュアルの代替ではありません。採点は、施設が採用する日本語版マニュアルと講習会の解釈を確認してください。具体例は説明用の架空事例で、点数は記載した条件での目安です。
FIM(Functional Independence Measure:機能的自立度評価法)の理解・表出とは?何を評価する?
FIMは、日常生活で「実際にしていること」と、そのために必要な介助量を1〜7点で評価するADL(日常生活活動)評価です。理解・表出は認知項目のうち「コミュニケーション」に当たり、次の2つを別々に採点します。[1]
| 項目 | 評価すること | 観察する場面 |
|---|---|---|
| 理解 | 相手の指示や会話の内容を受け取れるか | 退院説明、食事・排泄の声かけ、リハビリ中の会話 |
| 表出 | 自分の要求や考えを相手に伝えられるか | 痛みの訴え、介助の依頼、退院後の希望の説明 |
理解・表出を評価すると、次のようなことが見えてきます。
- 病棟スタッフの説明や指示が、本人にどの程度届いているか
- 痛み・排泄・不安などの訴えを、本人から発信できるか
- 退院先の検討や家族との話し合いに、本人がどこまで参加できるか
- どの伝達手段・援助があれば、やり取りが成立しやすいか
一方で、理解・表出の困難を見落とすと、次のような問題が起こりやすくなります。
- 「うなずいたから伝わった」と判断し、説明内容が実際には共有されていない
- 痛みや排泄の希望が伝わらず、本人の負担や転倒リスクにつながる
- 家族やスタッフの推測が、本人の意向として記録される
理解は「話しかけると返事があるか」、表出は「声が出るか」だけでは判断できません。返事があっても内容を理解していない場合があり、流暢に話しても必要な情報が伝わらない場合があります。
相手の説明は理解できても、自分の考えを言葉にすることが難しい人では、両者の点数が異なります。診断名や片方の印象からもう一方を推測せず、それぞれのやり取りを観察することが採点の出発点です。[1][2]
採点の最初の分岐は?「複雑な内容」と「基本的な内容」の違い
FIM理解・表出では、まず「どのレベルの内容を扱えているか」を区別します。6・7点を考えるときは複雑・抽象的な内容、5点以下では基本的な日常の内容のやり取りを確認します。[1][2]
| 内容のレベル | 具体例 | 関わる点数 |
|---|---|---|
| 複雑・抽象的な内容 | 自宅退院と施設退院それぞれの利点・困ること/家族の支援体制や家計の話/ニュースの背景、対人関係、冗談 | 6・7点の判断 |
| 基本的な日常の内容 | 食事・水分・排泄・清潔・睡眠のやり取り/「足が痛い」「トイレに行きたい」「休みたい」などの要求/日常生活に直結した簡単な質問や指示 | 1〜5点の判断 |
「おはようございます」「ご飯は食べましたか」といった会話が成立しても、それだけでは7点の根拠になりません。
「退院の話なら必ず複雑」とは限りません。「明日退院します」という情報と、複数の退院先を比較する説明では難しさが違います。話題の名前より、実際に扱った内容の複雑さを確認しましょう。
採点は、次の流れで整理すると迷いにくくなります。
- 評価期間内の情報を集める:訓練室だけでなく、病棟・夕方・家族との面談など代表的な生活場面を確認
- 複雑・抽象的な内容を扱えるか確認:促しなしで成立すれば6・7点を検討(補助具・余分な時間などの有無で区別)
- 基本的な内容での成立度を確認:複雑な内容に援助が必要なら、基本的なやり取りのうち本人が成立させている割合と、必要な援助の内容・頻度で1〜5点を検討
- 個別規定・施設の採用基準を照合:単語のみの表出、筆談・文字盤、補聴器、日内変動などの扱いを確認
- 根拠と有効な支援を記録し、多職種へ共有:看護師・PT・OT・ST、医師、医療ソーシャルワーカー、家族と伝達方法をそろえる
理解・表出の点数の全体像は、次の早見表のとおりです。各点数の詳しい条件と具体例は、このあとの表と事例で確認してください。
FIM理解は何点?1〜7点の採点基準と具体例
以下は公式文言の転載ではなく、参考資料をもとにFIM理解の評価の要点を整理した表です。[1][2]
| 点数 | 理解の目安 | 採点で確認すること |
|---|---|---|
| 7点:完全自立 | 複雑・抽象的な指示や会話を理解できる | 特別な援助や余分な時間を必要としない |
| 6点:修正自立 | 複雑・抽象的な指示や会話を理解できるが、軽度の困難を伴う | 促しは不要。視覚・聴覚の補助具などや、余分な時間を要することがある |
| 5点:監視・準備 (促し10%未満) | 日常生活に必要な基本的な指示・会話を、90%以上の機会で理解できる | 促し(ゆっくり話す、繰り返す、強調する、間を置く、視覚・ジェスチャーの手がかり)が必要なのは10%未満。複雑な内容には援助を要する |
| 4点:最小介助 | 基本的な指示・会話の75〜90%を理解できる | 一部で言葉の選択や短文化などを要する |
| 3点:中等度介助 | 基本的な指示・会話の50〜74%を理解できる | 強調語を用いた短い句などの援助が多くなる |
| 2点:最大介助 | 基本的な指示・会話の25〜49%を理解できる | 簡単な質問や文は理解することがあるが、半分を超える機会で促しを要する |
| 1点:全介助 | 基本的な指示・会話の理解が25%未満、または簡単な質問や表現も理解しない | 促しても適切・一貫した応答がないか。反応の有無だけでなく、内容との対応を確認する |
※5点は「ほぼできる」だけでなく、基本的な内容の理解の割合と、促し10%未満という条件の両方を確認します。5点の割合は、国内の公開資料[1]では「90%以上」、米国2012年版マニュアル[2]では「90%超」と表記されています。4点と5点の境界は、採用する正式マニュアルに従ってください。
理解7点の例:退院説明を自分で理解できる
自宅で必要な介助や家族の都合について説明すると、その内容を踏まえて質問できる。通常の会話速度で理解し、説明の簡略化や繰り返しを必要としない。「うなずいた」だけではなく、説明内容に沿った応答があることを確認します。
理解6点の例:補聴器を使えば複雑な説明も理解できる
補聴器を装着した状態では、家族との退院調整の会話を理解できる。スタッフが繰り返したり、簡単な言葉へ置き換えたりする必要はない。ただし、補聴器を使っていても日常的に人による促しが必要なら、装着しているという理由だけで6点にはしません。
理解5点の例:日常の声かけは分かるが、複雑な説明は難しい
評価期間を通じて、食事・排泄・睡眠についての質問は90%以上の機会で理解でき、繰り返しなどの促しが必要な場面は10%未満。一方、退院後の支援方法を比較する説明は、スタッフが整理し直す必要がある。
理解4点の例:一部のやり取りで短く言い直す必要がある
日常生活に関するやり取りの約8割は、追加の促しなしで理解できる。残りの約2割は言い換えや繰り返しの後に理解できる。「食事の前に手を洗いましょう」が伝わらず、「手を洗います」と短くすると理解できる場面がある。「短文を使ったから4点」と決めるのではなく、援助が必要な範囲と頻度を確認します。
理解3点の例:強調した短い句でないと伝わりにくい
評価期間内の病棟・訓練場面を通じて、基本的なやり取りのうち追加の促しなしで理解できるのは半分を少し超える程度。それ以外は「痛い?」「トイレ?」のように要点を強調した短い句に言い直すと理解できる。看護記録でも、通常の文で話しかけると取り違えが多いことが共有されている。
理解2点の例:簡単な質問でも、半分を超える場面で手がかりが必要
評価期間内の病棟・訓練場面を通じて、基本的なやり取りの約3割は追加の促しなしで理解できる。その他の場面では、繰り返しや、患部を直接指す、ジェスチャーを添えるなどの手がかりを加えてから理解できる。「足は痛いですか?」程度の簡単な質問は理解できることがあるが、半分を超える機会で促しが必要な状態が、時間帯や担当者を変えても続いている。
理解1点の例:うなずくが、回答に一貫性がない
食事やトイレについて質問すると、どの質問にも「はい」と答える。内容を確認しても反応が一致せず、手がかりを加えても基本的なやり取りがほとんど成立しない。うなずきの回数を、理解の割合として数えないことが大切です。
※具体例の割合は、評価期間内の複数の生活場面と多職種の情報を踏まえた、説明用のおおよその目安です。数回の観察やテストから算出した値で点数を確定するという意味ではありません。
FIM表出は何点?1〜7点の採点基準と具体例
FIM表出では、発話の量よりも、必要な内容が相手に伝わるかを確認します。以下も参考資料をもとに要点を整理した表です。[1][2]
| 点数 | 表出の目安 | 採点で確認すること |
|---|---|---|
| 7点:完全自立 | 複雑・抽象的な考えを、はっきりと流暢に伝えられる | 特別な援助や余分な時間を必要としない |
| 6点:修正自立 | 複雑・抽象的な考えをほとんどの場面で伝えられる、またはわずかな困難を伴う | 促しは不要。会話を補助する装置や方法を要する場合もある |
| 5点:監視・準備 (促し10%未満) | 基本的な要求や考えを、90%以上表出できる | 相手が理解するための促し(頻繁な繰り返しなど)が必要なのは10%未満 |
| 4点:最小介助 | 基本的な要求や考えの75〜90%を表出できる | 一部で聞き直しなどの援助を要する |
| 3点:中等度介助 | 基本的な要求や考えの50〜74%を表出できる | 意図を伝えるための援助が増える |
| 2点:最大介助 | 基本的な要求や考えの25〜49%を表出できる | 単語のみ、ジェスチャーのみを用いる場合もある。半分を超える機会で促しを要する |
| 1点:全介助 | 基本的な要求や考えの表出が25%未満、または介助しても基本的に必要なことを適切・一貫して表現しない | 相手が推測しているだけではないか確認する |
※理解と同様に、割合だけでなく援助内容とマニュアルの個別規定を合わせて判定します。5点の割合は、国内の公開資料[1]では「90%以上」、米国2012年版マニュアル[2]では「90%超」と表記されています。4点と5点の境界は、採用する正式マニュアルに従ってください。
表出7点の例:退院後の希望と理由を説明できる
「自宅に帰りたいですが、妻も仕事をしているので、昼間の介助が心配です。利用できるサービスを相談したいです」と、希望・理由・相談事項を自分で伝えられる。通常の時間で明確に伝えられ、促しも不要な状態です。
表出6点の例:時間はかかるが、自分で説明できる
言葉を探す時間はあるものの、待てば退院後の希望や理由を説明できる。スタッフが言葉を補ったり、選択肢を提示したりする必要はない。単に「ゆっくり話す人」か、表出の困難によって通常以上の時間が必要かを区別します。
表出5点の例:基本的な要求は伝えられるが、複雑な説明は難しい
評価期間を通じて、「右膝が痛いです」「トイレに連れて行ってください」などの基本的な要求は90%以上の機会で自分から伝えられ、聞き直しなどの促しが必要なのは10%未満。一方、退院後の生活への不安を理由とともに説明することは難しい。
表出4点の例:日常の要求の一部で聞き直しが必要
基本的な要求の約8割は、追加の促しなしで相手に伝わる。残りの約2割は発話が不明瞭で、スタッフが「もう一度お願いします」と聞き直した後に伝わる。構音障害(発話に必要な運動の制御が障害され、発音の明瞭さなどに問題が生じる状態)の診断名だけで決めず、実際の伝わり方と人による援助を確認します。
表出3点の例:要求の一部は伝わるが、絞り込みの援助が多い
評価期間内の病棟・訓練場面を通じて、基本的な要求のうち追加の促しなしで伝わるのは半分を少し超える程度。それ以外は、スタッフが聞き直したり「AとBのどちらですか?」と選択肢を示したりした後に伝わる。複数の職種が、同じような援助を要すると記録している。
表出2点の例:「痛い」「トイレ」など単語だけで伝える
「痛い」と言えるが、痛む場所や求めている援助を自分から説明できない。半分を超える場面で、スタッフが「膝ですか?」「姿勢を変えたいですか?」と質問し、意図を絞り込んでいる。2点の目安には、単語のみ・ジェスチャーのみを用いる場合も含まれており、米国の2012年版マニュアルにも単語のみの表出を2点とする事例があります。[1][2]「慣れたスタッフなら分かるから5点」と安易に判断しないようにしましょう。
表出1点の例:援助しても必要なことが一貫して伝わらない
発声やジェスチャーはあるが、質問の仕方や選択肢を工夫しても応答が一貫せず、痛み・排泄などの基本的な要求を本人から伝えられる場面がほとんどない。要求の把握は、表情や時間帯からのスタッフの推測に頼っている。推測で対応できた場面を、本人の表出として数えないように注意します。
※具体例の割合は、評価期間内の複数の生活場面と多職種の情報を踏まえた、説明用のおおよその目安です。数回の観察やテストから算出した値で点数を確定するという意味ではありません。
失語症・筆談・難聴はどう採点する?迷いやすい7つの場面
① 失語症があるから、理解と表出を同じ点数にする?
同じにする必要はありません。失語症(脳の損傷により、聞く・話す・読む・書くといった言語機能が障害された状態)では、理解と表出の困難の程度が異なることがあります。生活や退院の説明は理解できるが、表出は単語に限られる場合、理解の方が高得点になる可能性があります。国内FAQでも、感覚性失語の表出は従来どおり理解・表出・問題解決の自立度で評価すると示されています。[3]
② 構音障害があると、表出は必ず低得点?
構音障害の有無だけでは決まりません。複雑な内容が軽度の困難を伴っても自力で伝わる場合と、基本的な要求でも繰り返しや聞き直しが必要な場合では、必要な援助が異なります。
③ 筆談・文字盤を使えば、補助具なので6点?
一律に6点としないことが重要です。国内のFIM講習会FAQでは、発症前の伝達手段、使用状況、誰が何のために使っているかといった条件ごとに回答が示されています。[3]
| 発症前の伝達手段 | 使用状況(誰が・何のために) | FAQでの回答(要約) |
|---|---|---|
| 発症前から手話などの非音声言語を主な伝達手段としていた方 | 本人が、手話やジェスチャーが分かる相手とやり取りする | 7点(手話による理解も7点) |
| 発症前から手話などの非音声言語を主な伝達手段としていた方 | 環境が整った状態で、本人が介助者に分かるよう筆談でスムーズに表出する | 表出6点 |
| FAQの当該回答では、発症前の伝達手段の条件は明示されていない | 介助者が、患者に「理解」させるために筆談する | 理解2点 |
| もともと筆談の人ではない方(急性的な変化で筆談を使用)/もともと音声言語を使用していた方 | 本人が、急性的な変化により筆談・文字盤で表出する/本人が手話で表出する | 2点(文字盤使用も2点。手話で複雑な課題を表出できても7点ではなく2点)。表出の道具としてのメモ・筆談を2点とする回答もある |
| (伝達手段の別は示されていない) | 本人が人工喉頭を使用して表出する | 人工喉頭は補助具とみなし6点。実際の表出は、構音障害などと同様に伝わる程度で評価する |
※上表は、国内FIM講習会FAQ[3]に示された個別の事例と回答を、条件を省略せずに要約したものです(2013〜2022年の回答を含む)。伝達手段の種類だけで一律に点数を決める早見表ではありません。事例の条件が異なる場合は、採用マニュアルと講習会の解釈を確認してください。人工喉頭も、使用していることだけで無条件に6点となるわけではなく、実際の伝わり方を評価します。
一方、米国マニュアルには書字などの非音声表出を含めた定義があり、国内FAQとそのまま同じ扱いにはできません。[2]使用手段、発症前の伝達方法、誰がどの援助をしているかを記録し、施設の採用基準で確認しましょう。
筆談や文字盤の表出が規定上2点になっても、それは伝達の価値が低いという意味ではありません。文字盤を使えば疼痛部位や家族への要望を伝えられるなら、その手段は生活を支える大切な資源です。点数とは別に「何を、どの手段で伝えられるか」を記録しておくと、病棟・在宅での対応がそろいやすくなります。
④ 大きな声で話せば理解できる人は6点?
補聴器を自立して使える場合と、スタッフがその都度声量や表現を調整する場合は分けて考えます。補聴器を使用して、人的な促しなしに複雑・抽象的な内容まで理解できる場合は6点を検討します。一方、国内FAQでは、「大きめの声」「大声」による対応は状況によって1〜5点で変わり得るため、ケースバイケースで採点するよう示されています。[3]「難聴がある=6点」「補聴器を使っている=6点」「大声なら理解できる=6点」とは固定できません。
⑤ 会話は理解しているが、動作ができない場合は理解を下げる?
「立ってください」という内容が分かっていても、筋力低下や疼痛で立てないことがあります。その場合、動作の失敗だけを理解の失敗に置き換えないようにします。本人が「立つのですね。でも膝が痛くてできません」と答えられれば、指示内容は理解している可能性があります。実行できない理由を確認し、運動項目や問題解決などと区別して記録します。
⑥ 訓練室ではできるが、病棟や夕方は難しい場合は?
訓練中の最も良い場面だけで採点しません。国内FAQでは、覚醒レベルなどにより介助量に日内変動がある場合、最低点を採用する原則が示されています。[3]覚醒・疲労・時間帯によって援助量が変わる場合は、評価期間内の病棟情報も確認します。ただし、評価対象期間外の一時的な状態を無条件に混ぜないよう、採用マニュアルの評価期間に従ってください。
⑦ 方言や母国語の違いがある場合は?
国内FAQでは、方言やなまりによるコミュニケーションの困難はそのまま評価するとされています。また、日本語が母国語でない方は入院前に暮らしていたコミュニティでの伝達手段で評価し、通訳が常に付き添う場合は5点という考え方が示されています。[3]本人の本来の伝達手段を確認してから採点しましょう。
割合はどう判断する?「10問テスト」で決めない観察のポイント
理解・表出の割合は、単語数、正しく発音できた音の割合、失語症検査の正答率と同じものではありません。また、基本的な質問を10回して8回正答したから、必ず4点になるという評価でもありません。評価期間内の代表的な生活場面の観察と、看護師・PT・OT・STの情報を合わせて判断します。
割合を考えるときは、「援助なしで成立した場面」と「援助後に成立した場面」を分けて記録することが大切です。
| 区分 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 援助なしで成立した場面 | 通常の話し方・聞き方のまま、追加の促しなしでやり取りが成立した | 「トイレに行きますか?」に、そのまま適切に答えた |
| 援助後に成立した場面 | 繰り返し、短文化、強調、聞き直し、選択肢提示、ジェスチャーなどを加えた後に成立した | 「トイレ?」と短く言い直した後に、適切に答えた |
援助後に成立した場面は、本人が援助なしで成立させた場面とは分けて扱い、必要だった援助の種類と頻度として記録します。「何度か言い直したら伝わったから問題なし」とまとめると、実際の援助量が記録から抜け落ちてしまいます。
病棟では、次のような情報を集めると判断根拠を整理できます。
| 記録すること | 例 |
|---|---|
| 扱った内容 | 食事、排泄、疼痛、退院後の生活 |
| 援助なしで成立したやり取り | 痛む部位と介助希望を自分で説明できた |
| 援助後に成立したやり取りと、必要だった援助 | 繰り返し、短文化、聞き直し、選択肢提示の後に伝わった |
| 相手の推測・補完 | スタッフが質問を重ねて要求を特定した |
| 条件による違い | 夕方、集団場面、慣れない相手では援助が増える |
この表は観察を整理するための補助であり、新しい採点ルールではありません。採点前には、次の点を確認しておくと評価者間の差を減らしやすくなります。
- 挨拶や定型的な会話だけで、7点と判断していないか
- 理解と表出を、診断名や片方の印象からまとめて採点していないか
- うなずき・「はい」の回数を、理解の割合として数えていないか
- 援助後に成立した場面を、援助なしで成立した場面として数えていないか
- 家族や慣れたスタッフの推測を、本人の表出として数えていないか
- 筆談・文字盤・補聴器の扱いを、発症前の伝達手段や事例の条件と合わせて確認したか
- 訓練室の良い場面だけでなく、病棟・時間帯による変動を確認したか
- 点数の根拠と、有効だった援助方法を記録したか
記録はどう書く?点数+根拠+有効な支援の記録例
「理解4点、表出3点」だけでは、次の担当者が対応方法を判断しにくくなります。点数・根拠・有効な支援をセットで残しましょう。
理解の記録例
表出の記録例
点数と生活上の強みを分けた記録例
このように、点数が低くても、活用できる伝達手段や本人が伝えられる内容を具体的に残します。
評価をリハビリ・退院支援にどうつなげる?
FIMの点数を上げることだけを目標にすると、実生活で必要な支援が見えにくくなります。以下は採点基準ではなく、観察から検討する支援例です。
| 観察された困難 | 検討する支援 |
|---|---|
| 一度に複数の説明があると分かりにくい | 一度に一つ伝え、本人の応答で確認する |
| 痛みや排泄希望を伝えにくい | 伝達手段を整え、スタッフ間で確認方法を共有する |
| 慣れた人には伝わるが、初対面では難しい | 家族の解釈に依存していないか確認し、具体的な伝達方法を共有する |
| 病棟では成立しても、集団では難しい | 家族会議や退院後の場面で必要な援助を追加評価する |
例えば「表出を3点から4点へ」だけでなく、「トイレの希望を、慣れていないスタッフにも伝えられる」という生活上の目標を立てると、介入の目的が明確になります。
FIM理解・表出の点数だけでは、失語症のタイプや言語機能の詳細、仕事で必要な会話能力までは判断できません。職種ごとに次のような役割分担を意識すると、評価が支援につながりやすくなります。
- ST:言語機能・構音の詳細な評価、伝達手段の選定と練習
- OT:生活場面でのやり取りの観察、文字盤やコールの配置など環境調整、家族への伝え方の提案
- PT:運動指示の理解と動作の実行を区別した評価、動作練習時の伝え方の統一
- 看護師:時間帯・覚醒による変動、排泄・疼痛の訴えの記録と共有
理解・表出の評価は、単に順位をつけるためのものではありません。どの内容なら、どの手段で、どれだけの援助があればやり取りが成立するかを把握することで、本人が自分の希望を生活に反映させやすくなります。代償手段を「自立ではない」と切り捨てず、生活を支える手段として活かす視点も大切です。
FIM理解・表出のよくある質問
まとめ
FIM理解・表出の採点で迷ったときは、「会話ができる・できない」で終わらせず、どの内容なら、どの手段で、どれだけの援助があればやり取りできるかを具体的に観察してみてください。その記録が、病棟での対応の統一と退院支援の第一歩になります。
- 理解と表出は別々に採点する
- 6・7点は、複雑・抽象的な内容まで扱えるかを確認する
- 5点以下は、基本的な内容の成立割合と、促し・援助の内容と頻度を確認する
- 援助なしで成立した場面と、援助後に成立した場面を分けて記録する
- 単語のみの表出、筆談・文字盤・補聴器などは、FAQの事例条件と施設の採用基準を確認する
FIMの理解・表出は、点数だけでなく「どの内容を、どの手段で、どの程度の援助があれば伝え合えるか」という具体的な伝達状況を併記して記録しましょう。言語機能の詳しい評価や伝達手段の検討が必要な場合は、STをはじめとする多職種と連携しながら、本人が伝えられる場面を広げていくことが大切です。
- 加賀脳卒中地域連携協議会「FIM」
https://kagastroke.com/パスで使用中のスケール/fim/ - CMS「IRF-PAI Training Manual, Effective 10/01/2012」Section III:Comprehension・Expression(III-47〜50)、事例(D-12)
https://www.tbindsc.org/StaticFiles/Documents/IRFPAI-manual-2012.pdf
※FIM基準の参照に使用した歴史的資料で、現在の米国制度運用を説明する資料ではありません。 - リハビリテーション機能評価研究会「FIMに関するFAQ:認知項目―コミュニケーション」
https://fim.sakura.ne.jp/FAQ/FAQ-5ninchi.html
本記事は参考情報であり、公式マニュアル・講習会での学習や、個別の臨床判断の代替ではありません。
投稿者プロフィール
- 作業療法士。千葉県の回復期病院と福岡県の一般病院で、脳卒中・脊髄損傷・骨折・肩関節周囲炎などのリハビリに携わり、実施件数は約1.5万件。現在も病院勤務を続けながら、福岡で訪問型の自費リハビリ「Home Reha 福岡」を運営しています。福岡県作業療法士学会での発表、「作業療法・福岡」への論文掲載あり。
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