【作業療法士が解説】新版K式発達検査2020とは?3つの評価領域・DQ・結果の見方

「新版K式発達検査を勧められたけれど、何がわかるの?」「結果のDQはどう読めばいいの?」という疑問は、保護者だけでなく支援職からもよく聞かれます。この記事では、新版K式発達検査2020の3領域、発達年齢(DA)と発達指数(DQ)、偏差DQ、結果の見方と注意点を、作業療法士の視点で整理します。K式のDQはいくつなら遅れ? 何歳から受けられる? 2001版と何が違う?――こうした疑問にもお答えします。

執筆作業療法士 Takahiro|本記事は公式資料・書誌情報・研究論文をもとに作成しています。正式な検査項目や採点基準は掲載していません。

1.新版K式発達検査とは?京都で生まれた日本の個別式発達検査

新版K式発達検査の概要を説明する図解。検査者と1対1で行う個別式の発達検査で、3つの領域から発達の水準とばらつきを捉えることを示している

新版K式発達検査は、対象者の発達の状態を、遊びに近い課題を通して調べる日本の発達検査です。

専門的には、検査者と受検者が1対1で行う個別式(こべつしき)の検査で、「姿勢・運動」「認知・適応」「言語・社会」の3領域から発達の水準や領域ごとのばらつきを捉えます。名前の「K」はKyoto(京都)に由来し、現在は京都国際社会福祉センターが発行しています。

1980年の公刊から2020版までの経緯

前身は、1950年頃から京都市児童院(現 京都市児童福祉センター)で使われていた3種類の院内検査です。ビネー式知能検査やゲゼルの発達診断などから課題が採用されており、これらを統合・標準化したものが公刊されました[1]。

年出来事
1950年頃〜京都市児童院で3種類の院内検査(乳児用・幼児用・京都ビネー個別知能検査)が使用される
1980年3検査を統合・標準化し「新版K式発達検査」として京都国際社会福祉センターから公刊
1983年新版K式発達検査 増補版
2002年新版K式発達検査2001 発行
2020年再標準化を経て、新版K式発達検査2020(実施手引書・解説書は2020年12月刊)

出典:参考文献[1][2][3]

検査でわかること・検査だけではわからないこと

検査でわかること(目安)検査だけではわからないこと
標準化された条件下での発達の水準(発達年齢・発達指数)ASD・ADHD・知的発達症などの診断そのもの
3領域の間のばらつき(得意・苦手の傾向)家庭・園・学校での実際の生活のようす(適応行動)
課題への取り組み方、つまずき方、対人的なやりとり感覚の過敏さ・鈍さ、情緒面、家庭環境などの全体像
経過を追う際の比較材料(同じ版・同じ条件で実施した場合)将来の発達の見通し(1回の結果からは確定できません)
⚠ 検査結果は「その日・その場面」の姿です

体調、眠気、緊張、慣れない場所などは結果に影響します。発達年齢(DA)はお子さんの能力や行動のすべてを表すものではありません。診断は、医師が問診・行動観察・複数の検査・生活の様子などを総合して行います。

2.新版K式発達検査2020の基本情報|対象年齢・所要時間・発行元

項目内容
正式名称新版K式発達検査2020(Kyoto Scale of Psychological Development 2020)
発行元京都国際社会福祉センター(社会福祉法人 京都国際社会福祉協力会)
評価方法個別式・対面。検査者が用具を用いて課題を提示し、反応を観察して各項目の通過/不通過を判定
評価領域姿勢・運動(P-M)、認知・適応(C-A)、言語・社会(L-S)の3領域と全領域
主な指標発達年齢(DA)、発達指数(DQ)。生活年齢と発達年齢の両方が14歳以上の場合は、偏差DQによって発達指数を算出できます
適用年齢0歳〜成人とされています。ただし、年齢や発達水準によって実施できる項目や評価可能な領域が異なるため、実際の適用範囲は正式な手引書に従って判断します
所要時間年齢や発達の状態、実施する課題の範囲によって異なります。実施機関の案内で確認してください
検査用紙2020版は5枚(2001版は第1葉〜第6葉)。2001版の用紙は2020版では使用できません
主な用途発達相談、乳幼児健診後の評価、療育・支援計画、就学相談、療育手帳の判定、経過観察など
購入検査を実施する機関のみ(個人・業者経由は不可)

※表はスマートフォンでは横にスクロールできます

出典:参考文献[1][4][5]

OTポイント|「所要時間」は一律ではありません

K式は、年齢だけで実施する課題が一律に決まる検査ではなく、その子の通過・不通過の境目を確かめながら進めていく検査です。そのため、同じ年齢でも所要時間は変わります。保護者に説明するときは「時間に余裕をもって来てください」と伝えるのが安全です。

3.新版K式発達検査の3つの評価領域|P-M・C-A・L-Sとは?

新版K式発達検査の3つの評価領域(姿勢・運動P-M、認知・適応C-A、言語・社会L-S)と、それぞれが主に見る力をまとめた図解

新版K式発達検査では、発達を次の3つの側面から捉えます。上の図で全体像をつかんでから、各領域を見ていきましょう。

姿勢・運動

P-M:Postural-Motor

首すわり・座る・立つ・歩くなど、体全体を使う運動(粗大運動)の発達

認知・適応

C-A:Cognitive-Adaptive

見て理解する力、物の操作、形や数の理解、課題への適応など

言語・社会

L-S:Language-Social

ことばの理解と表出、言語を介した概念理解、人とのやりとりなど

① 姿勢・運動領域(P-M)

姿勢の保持や移動など、粗大運動(そだいうんどう:体幹や手足を大きく使う運動)の発達を見る領域です。乳児期は発達の変化が運動面に大きく表れるため、この領域の情報が特に重要になります。

年齢が上がるにつれて、認知・適応領域と言語・社会領域の評価が中心となります。各領域の実施範囲は、正式な手引書に従います。

② 認知・適応領域(C-A)

目で見た情報を理解し、手で物を扱いながら課題を解決する力を見る領域です。物の操作、形の弁別、模倣、構成(組み立てる)、描画などに関わる視覚認知(見て理解する力)や目と手の協調が含まれます。

手先の器用さ(微細運動)が課題の成否に関わる場面もあるため、運動面の困難がある子では「わかっているのに手が思うように動かない」可能性も考えて読む必要があります。

③ 言語・社会領域(L-S)

ことばの理解と表出、言語を介した概念理解、検査者とのやりとりなど、言語機能や対人的な側面を含む領域です。ことばで答える課題が多くなるため、聴覚・構音(発音)の問題や、初対面の大人への緊張の影響を受けやすい点に注意が必要です。

なお、認知・適応領域と言語・社会領域は、まったく別々の能力を測るものではありません。注意、記憶、概念の理解といった共通する認知機能が、両方の領域の課題にかかわっていると考えられます。領域の違いは「主にどのような形で力を発揮する課題か(見て操作するのか、ことばを介するのか)」の違いとして捉えると理解しやすくなります。

領域主に見る力生活場面の例結果に影響しやすい要因
姿勢・運動(P-M)姿勢保持、移動、バランスなどの粗大運動座って食べる、歩く、階段、公園遊び筋緊張の異常、運動障害、体調、場所への不安
認知・適応(C-A)視覚認知、物の操作、構成、目と手の協調型はめ・積み木遊び、スプーン操作、着替えの手順微細運動の困難、視覚障害、注意の持続
言語・社会(L-S)ことばの理解・表出、言語を介した概念理解、対人的なやりとり指示を聞いて動く、友だちとのやりとり、集団活動聴覚・構音の問題、緊張、場面緘黙、母語の違い

※この表は各領域の性質を説明するためのもので、正式な検査項目ではありません

4.K式の発達年齢(DA)と発達指数(DQ)の見方

① 発達年齢(DA)とは?

発達年齢(DA:Developmental Age)とは、検査結果から推定される発達水準を年齢で表した指標です。

新版K式発達検査2020では、標準化資料に基づき、各項目の50%通過年齢が求められています[5]。個人の発達年齢は、実際の項目通過状況をもとに、正式な手引書に従って算出します。

発達年齢は、対象者の能力や行動のすべてがその年齢と同じであることを意味しません。

⚠ 発達年齢と生活年齢を混同しないでください

生活年齢(CA)は実際の年齢、発達年齢(DA)は検査で測れる範囲の課題の通過状況から推定した水準です。「発達年齢3歳」は「3歳児と同じように考え、行動する」という意味ではありません。生活経験や興味、得意なことには、その子自身の年齢相応の部分が多く含まれます。

② 発達指数(DQ)とは?

発達指数(DQ:Developmental Quotient)は、発達年齢が生活年齢に対してどのくらいの割合かを、100を基準に表したものです。発達年齢を生活年齢で割って求めるこの方法を比率DQと呼びます。

比率DQの基本式

DQ = 発達年齢(DA)÷ 生活年齢(CA)× 100

計算例(学習用)
生活年齢(CA)48か月、発達年齢(DA)36か月の場合
36 ÷ 48 × 100 = 75

※この例は式の意味を理解するための学習用です。実際の新版K式発達検査2020では、正式な手引書に定められた手順で発達年齢・発達指数を算出します。この計算例は正式な検査の得点換算や結果の解釈を代替するものではありません。

DQ100は「生活年齢に見合った水準」、DQが100より低いほど「生活年齢に比べて検査上の発達水準がゆっくり」であることを示します。ただし、DQはあくまで検査場面での通過状況を数値化したものです。

③ 偏差DQとは?

新版K式発達検査2020では、生活年齢と発達年齢の両方が14歳以上の場合に、偏差DQによって発達指数を算出できるようになりました[5]。偏差DQは、同年齢集団の得点分布に基づく指標であり、発達年齢を生活年齢で割って求める比率DQとは算出方法が異なります。

比率DQは、発達が年齢とともに伸び続ける子どもの時期には意味をとらえやすい一方、発達の伸びがゆるやかになる年齢以降では実態を反映しにくくなると考えられています。偏差DQの具体的な算出方法は、正式な手引書・解説書で確認が必要です。

OTポイント|「DQ」と書かれていても算出方法を確認

報告書に「DQ」とだけ書かれている場合、比率DQか偏差DQかで意味合いが変わることがあります。年長児や成人の結果を読むときは、どちらの方法で算出されたかを検査者に確認しておくと、ほかの記録との比較で誤解を防げます。

④ DQはいくつから発達の遅れと判断する?

DQ70未満を発達の遅れの指標として扱う研究もありますが[8]、これは新版K式発達検査における一律の診断基準ではありません。

DQの数値だけで発達障害や知的発達症を診断することはできず、日常生活での適応機能、発達歴、行動観察などを含めた総合的な評価が必要です。

ここでいう適応機能とは、身の回りのこと、コミュニケーション、社会生活などを年齢に応じて行う力のことです。

⚠ 数値だけで判断しないために
  • DQは測定誤差や当日のコンディションの影響を受けます。数点の差にこだわりすぎないことが大切です。
  • 家庭・園・学校での生活の様子(適応行動)もあわせて確認します。
  • 療育手帳の判定基準などは自治体によって異なるため、個別に確認が必要です。

5.新版K式発達検査の実施方法と流れ

ここでは、一般的な発達評価の流れとしてご紹介します。正式な実施順序や課題の内容は、検査の信頼性を守るため掲載しません。

  1. 事前の情報収集生育歴、既往歴、主訴(困りごと)、家庭・園・学校での様子を保護者や関係機関から聞き取ります。視覚・聴覚、服薬、運動障害の有無も確認します。
  2. 検査環境の調整静かで気が散りにくい部屋、体に合った机と椅子、保護者の同席の有無などを、手引書に沿って整えます。
  3. 検査の実施手引書に沿って、玩具や道具を使った課題を提示します。受検者の体調や集中状態に配慮し、正式な手引書で認められる範囲で対応します。標準化された実施条件から逸脱した場合は、その内容を記録し、結果の解釈に反映させます。反応とあわせて、取り組み方、表情、やりとりの様子も記録します。
  4. 採点・結果の算出各項目の通過/不通過をもとに、手引書の手順で領域別・全領域の発達年齢と発達指数を算出します。
  5. 解釈とフィードバック・多職種へ共有数値と行動観察、生活情報を統合して解釈し、保護者にわかりやすく説明します。必要に応じて医師、公認心理師、保育士・教員、OT・PT・STなどと共有し、支援計画につなげます。
⚠ 事前の「練習」は避けてください

検査内容をあらかじめ練習すると、本来の発達の状態が正しく測れなくなります。京都国際社会福祉センターは、検査内容や用具をインターネット等で公開することを、一部であっても認めていません[4]。

6.K式発達検査の結果の見方|領域別DQの読み取り方

領域別DQの架空例(姿勢・運動95、認知・適応85、言語・社会65)を並べ、領域間の差の読み取り方を説明した図解

※P-M95、C-A85、L-S65は説明用の架空の数値です。実際の患者データや標準値ではありません。

ここでは、上の図の架空の数値を例に、読み取りの考え方を説明します。

領域間の違いを見る考え方

この例では、姿勢・運動(95)に比べて言語・社会(65)が低く、領域間に差があるように見えます。このようなときは次の順で考えます。

  • 差の大きさ:領域間のDQ差は、グラフの見た目や数値の差だけで統計学的に有意とは判断できません。差の意味づけは、正式な手引書・解説書の考え方に沿って検査者が行います。
  • 差の理由の仮説:ことばの理解が難しいのか、表出(話すこと)が難しいのか、初対面の大人とのやりとりに緊張したのか、聴こえの問題はないか――複数の可能性を並べます。
  • 生活場面との照合:家庭や園でも同じ傾向があるかを確認します。検査場面だけの傾向か、生活全体の傾向かで支援の方向性は変わります。

検査場面の行動観察の重要性

同じ「不通過」でも、課題の意味がわからなかったのか、わかっていたが手が動かなかったのか、途中で注意がそれたのかで意味はまったく異なります。報告書の所見欄には、こうした行動観察が記載されていることが多く、数値と同じくらい重要な情報です。

OTポイント|数値の「低さ」より「差の理由」を見る

領域差は「苦手探し」のためではなく、支援の入口を見つけるための手がかりです。たとえば言語・社会が相対的に低い子でも、目で見てわかる手がかりには強いことがあります。その強みを生活の支援にどう使うかまで考えると、結果が実際の支援につながります。

7.作業療法士が新版K式発達検査を臨床で活用する際のポイント

作業療法士は、検査結果を「数値」で終わらせず、食事・更衣・遊び・集団活動といった生活行為につなげる役割を担います。

① DQだけでなく課題への取り組み方を見る

取りかかりまでの時間、手の使い方、失敗したときの反応、見本への注目のしかた、姿勢の崩れなどは、生活場面のつまずきを理解する手がかりになります。

OTポイント

観察の目的は「できた・できなかった」の記録だけではありません。どの段階でつまずくか(見る・理解する・手を動かす・続ける)を分けると、支援すべき段階が具体的になります。それが、遊びや身辺動作での声かけや環境調整に直結します。

② 運動機能と認知機能を分けて考える

認知・適応領域の課題には手の操作を伴うものが含まれるため、脳性麻痺などの運動障害や、発達性協調運動症(DCD:協調運動の困難)の傾向がある子では、理解していても通過できない場合があります。同様に、次のような要因も結果に影響します。

影響する要因結果への影響の例読み取りの工夫
運動障害・筋緊張の問題操作を伴う課題や姿勢・運動領域が低く出やすく、認知面の水準が過小評価される可能性がある姿勢保持や机・椅子の条件を記録し、理解面の反応と分けて記述
言語障害・聴覚の問題ことばで答える課題が低く出やすく、理解面の水準が過小評価される可能性がある指さしや身ぶりでの理解の様子を所見に残す
注意の問題課題の途中離脱、見落としによる不通過注意がそれたタイミングや状況を記録
緊張・場面への不安対人的な課題や発語が少なくなる家庭での様子と照合し、検査場面特有の姿か確認

③ 検査結果を具体的な支援目標につなげる

検査結果は、生活行為の目標に「翻訳」してはじめて支援に生きます。

以下は、検査結果と生活場面での評価を組み合わせて考える支援例です。実際の介入方法は、本人の特性や生活環境、本人・家族の希望に応じて個別に検討します。

生活行為関連しやすい領域支援目標への翻訳例
食事P-M(座位保持)、C-A(道具操作)足が床につく椅子で座位を安定させ、スプーンですくう動作を練習する
更衣C-A(手順・操作)、L-S(指示理解)写真カードで手順を示し、ズボンをはく工程から一つずつ自立をめざす
遊びC-A(構成・模倣)、P-M(全身運動)好きな遊びの中に、積む・はめる・まねるなどの要素を取り入れる
集団活動L-S(理解・やりとり)ことばの指示に視覚的な手がかりを添え、活動の見通しを持てるようにする
⚠ 実施方法を変えた場合は「標準化された結果」と区別する

運動障害のある子に合わせて提示方法や回答方法を変えることは、支援のための評価としては意味があります。ただし、手引書と異なる条件で得た結果は、標準化された条件下の発達年齢・発達指数とは同じ意味を持ちません。報告書には変更した内容を明記し、数値を他の結果と単純に比較しないようにします。

8.新版K式発達検査と遠城寺式乳幼児分析的発達検査の違いは?

新版K式発達検査(3領域)と遠城寺式乳幼児分析的発達検査(6領域)の評価領域や評価方法の違いを比較した図解

遠城寺式乳幼児分析的発達検査は、乳幼児の発達を6領域から把握し、各領域の発達の特徴や偏りを捉える検査です。比較的簡便に実施でき、発達相談や支援方針の検討に活用されます。

6領域は、移動運動・手の運動・基本的習慣・対人関係・発語・言語理解です[10]。

比較項目新版K式発達検査2020遠城寺式乳幼児分析的発達検査
主な目的発達の水準と領域間のばらつきを、標準化された課題で評価する乳幼児の発達を6領域から把握し、各領域の特徴や偏りを捉える
評価領域3領域(姿勢・運動/認知・適応/言語・社会)+全領域6領域(移動運動・手の運動・基本的習慣・対人関係・発語・言語理解)
適用年齢0歳〜成人(実際の適用範囲は正式な手引書に従う)乳幼児期(適用年齢の上限は販売資料によって表記が異なるため、使用する版の正式な手引書で確認)
評価方法検査者が用具で課題を提示し、反応を観察して判定検査項目に沿った観察や保護者からの聞き取りをもとに判定(詳細は手引書で確認)
結果の表し方領域別・全領域の発達年齢と発達指数領域ごとの発達の状況をグラフで表す
発行元京都国際社会福祉センター慶應義塾大学出版会(九州大学小児科改訂新装版)

※表はスマートフォンでは横にスクロールできます

⚠ 2つの検査の結果は単純に換算できません

項目の内容、標準化の時期と対象、評価方法、領域の分け方が異なるため、「K式のDQ◯◯=遠城寺式の◯歳」のような換算はできません。経過を追うときは、原則として同じ検査で比較します。

9.新版K式発達検査2020と2001の違い|何が変わった?

新版K式発達検査2020は、新版K式発達検査2001の改訂版(再標準化)と公式に位置づけられています[4]。再標準化とは、現在の対象年齢層の人々を対象に改めてデータを集め、各項目の基準(何歳ごろ通過するか)を見直す作業です。

公式資料・論文で確認できた主な変更点は次のとおりです。

項目確認できた内容
標準化データ全国から募集した協力者3,243人の結果を分析[5]
検査項目の配置計339項目を50%通過年齢に基づいて5枚の検査用紙に配置[5](2001版は第1葉〜第6葉[4])
偏差DQの導入生活年齢と発達年齢の両方が14歳以上の場合に、偏差DQによって発達指数を算出できるよう変更[5]
成人向け項目成人向け項目を充実させる研究成果が2020版の改訂につながったと報告[6]
検査用紙・用具2001版の用紙は2020版では使用不可。2001版の用具は補充追加用具セットの追加で2020版として使用可能[4]

ここに記載のない変更点は、公開資料で確認できなかったため掲載していません。詳細は正式な実施手引書・解説書[2][3]で確認してください。

2001版と2020版の結果を縦断的に比べるときの注意

再標準化では、いくつかの検査項目の50%通過年齢が変化したことが報告されています[5]。そのため、以前2001版で受けた結果と2020版の結果を並べたとき、数値の変化がすべて本人の発達の変化によるものとは限りません。自閉スペクトラム症の幼児を対象に、両版のDQを比較した研究も報告されています[7]。

⚠ 版が変わったら「どの版の結果か」を必ず記録

公式には2020版への移行期間は定められておらず、現在も2001版を使う機関があります[4]。2001版と2020版の数値を直接並べて変化を判断せず、報告書や紹介状ではどの版で実施したかを確認・記載したうえで、慎重に経過を解釈しましょう。

10.新版K式発達検査のよくある質問(FAQ)

何歳から受けられますか?

新版K式発達検査2020は0歳から成人までが対象とされています。ただし、年齢や発達水準によって実施できる項目や評価可能な領域が異なり、実際の適用範囲は正式な手引書に従って判断されます。何歳から実施するかは実施機関(医療機関、児童相談所、療育機関など)の方針や目的によっても異なるため、各機関に確認してください。

作業療法士でも実施できますか?

確認できた公式の公開資料では、実施者を特定の国家資格に限定する記述は見当たりませんでした。一方で、検査の購入は実施機関単位に限られ、発行元は講習会(初級講習会は登録制)を開催しています[4]。実施者の要件は正式な手引書や所属機関の方針で確認し、講習会などで手順と解釈を十分に習得したうえで行うことが前提です。

検査を受ければ発達障害かどうかわかりますか?

いいえ。新版K式発達検査は発達の水準やばらつきを評価する検査で、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)などを単独で診断するものではありません。DQの数値だけで診断することもできません。診断は、医師が問診、行動観察、ほかの検査、生活の様子などを総合して行います。

DQとIQは同じものですか?

同じではありません。DQ(発達指数)は発達検査、IQ(知能指数)は知能検査の結果を表す指標です。計算の考え方が似ている場合でも、検査の内容や標準化の方法が異なるため、互いに置き換えることはできません。新版K式(2001版)とWISC-Ⅳを比較した科研費の研究実績報告でも、両者は異なる背景を持つ検査であり、縦断的な評価には慎重さが必要と考察されています[9]。

結果が低かった場合、再検査した方がよいですか?

当日の体調不良や強い緊張があった場合は、検査者に相談すると再検査を検討してもらえることがあります。ただし、短期間に同じ検査を繰り返すと課題に慣れてしまい、結果の意味が変わる可能性があります。再検査の時期は実施機関と相談して決めてください。

検査結果は成長によって変わりますか?

変わることがあります。発達は一定の速さで進むとは限らず、支援や環境、年齢によってDQが上がったり下がったりすることがあります。1回の結果で将来を決めつけず、経過の中で見ていくことが大切です。なお、2001版から2020版に変わった場合などは、数値の変化が検査の版の違いによる可能性もあります。

検査の前に家で練習しておいた方がよいですか?

練習はおすすめできません。検査内容に慣れてしまうと、本来の発達の状態が正しく測れず、必要な支援が見えにくくなります。普段どおりの体調で受けることがいちばんの準備です。

当日機嫌が悪かったり、途中で集中が切れたりしたらどうなりますか?

検査者は、受検者の体調や集中状態に配慮し、正式な手引書で認められる範囲で対応します。その日の様子は所見として記録され、解釈の際に考慮されます。気になることがあれば、結果説明のときに「普段の様子と違った点」を伝えてください。

振り返りポイント
  • 3領域:姿勢・運動/認知・適応/言語・社会
  • 比率DQ=DA÷CA×100(学習用の基本式)
  • 生活年齢と発達年齢の両方が14歳以上なら偏差DQ
  • DQとIQは別物
  • DQだけで診断はできない
  • 2001版と2020版の数値は直接比較しない

11.まとめ|新版K式発達検査は「生活」とつなげて読む

検査結果を受け取ったら、数値だけを見て一喜一憂するのではなく、「どの場面で・どんな手助けがあればできるか」を支援者と一緒に考えてみてください。報告書の所見欄や、検査中のお子さんの様子にこそ、明日からの関わりのヒントが詰まっています。

  • 新版K式発達検査2020は、姿勢・運動(P-M)、認知・適応(C-A)、言語・社会(L-S)の3領域から発達を捉える個別式の検査です。
  • 比率DQは発達年齢を生活年齢で割って求める指標です。新版K式発達検査2020では、生活年齢と発達年齢の両方が14歳以上の場合に、同年齢集団の得点分布に基づく偏差DQで発達指数を算出できるようになりました。DQとIQは同じではありません。
  • 数値は「その日・その場面」の姿であり、DQだけで診断はできません。適応機能、発達歴、行動観察とあわせて総合的に読むことが大切です。
  • 2001版と2020版、K式と遠城寺式の結果は、単純に比較・換算できません。

発達の気がかりは「年齢のせい」「性格だから」と決めつけず、医師や公認心理師、作業療法士などの専門職に相談してください。新版K式発達検査の結果は、お子さんに合った支援を考えるための大切な材料になります。

参考文献・公式資料
  1. 大谷多加志(2023).新版K式発達検査2020.総合リハビリテーション,51(2),179-184.医学書院.https://doi.org/10.11477/mf.1552202749
  2. 新版K式発達検査研究会(編)(2020).新版K式発達検査2020実施手引書.京都国際社会福祉センター.https://ci.nii.ac.jp/ncid/BC12778173
  3. 新版K式発達検査研究会(編)(2020).新版K式発達検査2020解説書(理論と解釈).京都国際社会福祉センター.https://ci.nii.ac.jp/ncid/BC12778435
  4. 京都国際社会福祉センター.新版K式発達検査2020.https://www.kiswec.com/inspection_01//新版K式発達検査について ご利用上の注意.https://www.kiswec.com/kshiki_01/
  5. 郷間英世(2022).医療機関の発達外来における新版K式発達検査の利用を中心に.発達障害研究,43(4),352-364.https://doi.org/10.60260/jasdd.43.4_352
  6. 清水里美(研究代表者).認知発達検査における一般妥当性のある反応を妨げる要因-生涯発達の観点からの検討-(科学研究費助成事業 基盤研究(C),課題番号17K04481,2017〜2022年度)研究成果報告(※査読論文ではなく、科研費データベース上の研究成果報告).https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04481/
  7. 田中駿・中市悠・家森百合子・岩見美香・清水里美・郷間英世(2022).自閉症スペクトラム幼児の新版K式発達検査2001と新版K式発達検査2020のDQの比較.発達・療育研究(京都国際社会福祉センター紀要),37,3-8.(書誌情報は科研費データベース[課題番号17K04481]の研究成果一覧で確認)
  8. 橋本圭司・盛一享徳・九島令子・豊島勝昭・木本裕香・石井のぞみ・廣瀬悦子・七條了宣・和田友香・水野克己・伊藤善也・長和俊・山口健史・河野由美(2024).低出生体重児における日本語版ASQ®-3の妥当性.総合リハビリテーション,52(11),1223-1230.https://doi.org/10.11477/mf.1552203267
  9. 近藤静香(研究代表者).発達障害児における認知発達―発達指数と知能指数の連続性に関する検討―(科学研究費助成事業 奨励研究,課題番号16H00699,2016年度)研究実績報告.https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-16H00699(※査読論文ではなく、科研費データベース上の研究実績報告)
  10. 遠城寺宗徳(2009).遠城寺式 乳幼児分析的発達検査法 解説書(九州大学小児科改訂新装版).慶應義塾大学出版会.ISBN 978-4-7664-1621-3.https://www.keio-up.co.jp/book/b10163408.html

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医師の診断や専門職による個別の評価の代わりになるものではありません。

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