【作業療法士が解説】FIM「移乗」3項目の採点基準と具体例|ベッド・トイレ・浴槽の違い

FIM(機能的自立度評価法)の移乗は、患者がベッド・椅子・車椅子・トイレ・浴槽などの間を移る際に、どの程度の介助を必要とするかを評価する項目です。

移乗には次の3項目があります。

  1. ベッド・椅子・車椅子の移乗
  2. トイレの移乗
  3. 浴槽・シャワーの移乗

3項目とも基本的な採点基準は共通していますが、評価する動作の範囲や補助具の扱いには違いがあります。

この記事では、各項目の評価範囲、1〜7点の採点基準、臨床で迷いやすい具体例を解説します。


FIM「移乗」の共通した採点基準

まずは3項目に共通する採点方法を確認しましょう。

点数自立度判定基準
7点完全自立介助者・特別な補助具を必要とせず、安全に移乗できる
6点修正自立補助具の使用、通常以上の時間、安全面への配慮などが必要だが、人的介助は不要
5点監視・準備見守り、声かけ、環境準備などが必要で、動作中の身体介助は不要
4点最小介助身体介助が必要だが、本人が75%以上の動作を行う
3点中等度介助本人が50%以上75%未満の動作を行う
2点最大介助本人が25%以上50%未満の動作を行う
1点全介助本人の動作が25%未満、または2人介助などが必要

採点で重要な3つのポイント

① 補助具を使用して自立している場合は6点

手すりや移乗用補助具を使用していても、人的介助なしで移乗できれば修正自立となります。ただし、通常の椅子や車椅子を使用しているという理由だけで6点になるわけではありません。

② 準備・見守りは5点、動作中の身体介助は4点以下

車椅子の位置調整やブレーキ操作を介助者が行う場合は、準備として5点に該当します。

一方、移乗中に身体を支えたり、持ち上げたりする必要があれば、身体介助として4点以下で判断します。

③ 身体介助の程度は動作全体で判断する

「お尻を支えたから4点」「立ち上がりを介助したから3点」と機械的に決めるのではなく、本人が移乗動作全体のどの程度を行っているかで判断します。


① ベッド・椅子・車椅子の移乗

評価の範囲

ベッド・椅子・車椅子間の乗り移りを評価します。

評価には、次のような動作が含まれます。

  • ベッドからの起き上がり
  • ベッドから椅子・車椅子への移乗
  • 椅子・車椅子からベッドへの移乗
  • 移乗に必要な立ち上がり、方向転換、着座

歩行が主な移動手段の場合には、立ち上がりと着座の動作も評価に含まれます。

ただし、ベッドからトイレまで歩くといった移動距離そのものは、移乗ではなく「移動」の項目で評価します。

ベッドからの起き上がりも評価対象

ここは臨床で見落とされやすいポイントです。

例えば、起き上がりには全介助が必要でも、端座位になった後は自力で車椅子に移れる場合があります。

この場合、移乗部分だけを見て7点とは判断しません。起き上がりも採点に含まれます。

ただし、主動作である乗り移りと、副動作である起き上がりでは評価上の比重が異なるため、それぞれの介助状況を踏まえて判断します。

採点例

状況点数
補助具・介助者なしで安全に移乗できる7点
手すりやスライディングボードを自分で使用して移乗する6点
車椅子の位置調整やブレーキ操作を介助者が行う5点
移乗中に軽く身体を支える程度の介助が必要4点
立ち上がり時に身体を引き上げるなど、中等度の介助が必要3点
立ち上がり・方向転換などの大部分でしっかりとした身体介助が必要2点
全介助、または2人介助が必要1点

※4〜2点は典型例であり、最終的には本人の動作割合で判断します。

よくある疑問:車椅子のブレーキをかけてもらったら何点?

原則として5点です。

車椅子のブレーキをかけてもらう、フットサポートを動かしてもらうなど、移乗前の準備のみを介助者が行う場合は5点に該当します。

ただし、準備に加えて実際の移乗動作中に身体介助が必要なら、4点以下で評価します。


② トイレの移乗

評価の範囲

トイレ移乗では、便器への着座と、便器からの立ち上がりを中心とした移乗動作を評価します。

評価対象となる動作

  • 便器に座る
  • 便器から立ち上がる
  • 車椅子と便器間の乗り移り
  • 移乗に必要な方向転換・身体の位置調整

別項目で評価する動作

  • トイレまで歩くこと:移動
  • ズボンや下着の上げ下げ:トイレ動作
  • 排泄後の陰部・臀部の清拭:トイレ動作
  • 排尿・排便の管理:排尿・排便コントロール

トイレ動作との違い

項目評価する内容
トイレ移乗便器への着座、便器からの立ち上がり
トイレ動作衣服の上げ下げ、排泄前後の清拭など
排尿・排便コントロール排泄の管理、失敗や介助の状況

例えば、便器への移乗は自立していても、ズボンを上げる際に介助が必要な場合があります。

この場合、トイレ移乗とトイレ動作は別々に採点します。

ポータブルトイレを使用していたら6点?

ポータブルトイレの使用だけでは減点されません。

  • ポータブルトイレを使用し、補助具や人的介助なしで安全に移乗できる:7点
  • 付属の手すりなどを利用して自立する:6点
  • 移乗時の見守りが必要:5点
  • 身体介助が必要:介助量に応じて4点以下

また、ポータブルトイレを介助者が設置する行為は、トイレ移乗ではなく排尿管理などの評価と区別して考えます。

日中と夜間で介助量が違う場合

FIMは、実際に行っているADLを評価します。

例えば、日中は自立していても、夜間のトイレ移乗には身体介助を要する場合、その介助状況も考慮して採点します。

一方、夜間はオムツを使用しており、トイレへの移乗自体を行っていない場合には、夜間に移乗していないことだけを理由に1点とするわけではありません。


③ 浴槽・シャワーの移乗

評価の範囲

浴槽・シャワー移乗では、浴槽やシャワー設備への出入りに必要な移乗動作を評価します。

具体的には、使用している設備に応じて以下の動作が対象となります。

  • 浴槽の縁をまたぐ
  • 浴槽内へ身体を移す
  • 浴槽から出る
  • シャワーチェアへ座る
  • シャワーチェアから立ち上がる

※浴室内を歩いて移動することや、身体を洗う動作そのものとは区別します。

シャワー浴のみの場合は?

普段からシャワー浴のみを行っている場合には、実際に使用しているシャワー設備への移乗を評価します。

浴槽に入っていないという理由だけで、直ちに1点になるわけではありません。

浴槽とシャワーを両方使用している場合は、実際の使用頻度や介助状況を踏まえ、採点基準に従って判断します。

採点例

状況点数の目安
補助具なしで安全に浴槽・シャワー移乗ができる7点
手すりやバスボードなどを自分で使用して移乗する6点
移乗前の準備や見守りが必要5点
移乗動作の75%以上を自分で行い、軽い身体介助が必要4点
移乗動作の50〜74%を自分で行う3点
移乗動作の25〜49%を自分で行う2点
ほぼ全介助、または2人介助が必要1点

片脚だけ介助したら4点?

必ずしも4点とは限りません。

浴槽の縁をまたぐ動作で片脚だけを介助したとしても、その介助の強さや動作全体に占める割合によって点数は変わります。

例えば、片脚を軽く誘導するだけの場合と、体幹を強く支持しながら片脚を持ち上げる場合では、必要な介助量が異なります。

脚を何本介助したかではなく、浴槽・シャワー移乗全体の介助量から判断することが重要です。

機械浴・ストレッチャー浴は何点?

機械浴だから必ず1点というわけではありません。

使用する機器や本人が実施できる動作、介助者の関与によって評価は異なります。

例えば、FIM講習会の質疑応答では、機械浴を利用していても条件によって3点となるケースが示されています。

そのため、機械浴を一律1点とするのではなく、実際の移乗方法と介助量を確認する必要があります。


FIM「移乗」でよくある採点ミス

① 補助具を使えば、すべて6点と判断する

補助具を使っていても、介助者による準備や見守りが必要なら5点以下になる場合があります。

② 手を添えたら必ず4点と判断する

身体に軽く触れる程度の介助であれば4点の典型例ですが、実際に身体を支える量が増えれば3点以下となることがあります。

③ 起き上がりの介助を見落とす

ベッド・椅子・車椅子の移乗には、起き上がりも評価範囲に含まれます。

④ ポータブルトイレ使用を自動的に6点とする

ポータブルトイレを使っているだけでは減点されません。

⑤ 浴槽移乗を脚の介助本数で採点する

片脚・両脚という区別だけでなく、移乗全体に必要な介助量を評価します。

⑥ 「できるADL」で採点してしまう

FIMは原則として、実際の生活場面で行っているADLを評価します。

訓練室では自立できても、病棟では見守りや介助を受けている場合には、実際の状況に基づいて判断します。


まとめ|FIM移乗を正確に採点するために

FIM移乗では、次の3つが重要です。

  1. 評価する動作の範囲を正しく理解する
  2. 準備・見守りと身体介助を区別する
  3. 身体介助が必要な場合は、動作全体に占める介助量で判断する

「準備は5点、身体介助は4点以下」という基本を理解したうえで、ベッド・トイレ・浴槽それぞれの特徴を把握しておくと、採点の迷いが減ります。

特に新人セラピストは、単に点数を覚えるだけでなく、なぜその点数になるのかを説明できることを意識して評価しましょう。

参考資料

※本記事はFIMの基本的な採点方法と講習会FAQをもとに解説したものです。特殊な場面や境界事例については、正式な採点マニュアルや講習会の解説を参照してください。

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投稿者プロフィール

homereha
作業療法士。千葉県の回復期病院と福岡県の一般病院で、脳卒中・脊髄損傷・骨折・肩関節周囲炎などのリハビリに携わり、実施件数は約1.5万件。現在も病院勤務を続けながら、福岡で訪問型の自費リハビリ「Home Reha 福岡」を運営しています。福岡県作業療法士学会での発表、「作業療法・福岡」への論文掲載あり。

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