ボルグスケールと修正ボルグスケールの違いとは?点数の見方・使い分けを解説

ボルグスケール(RPE:Rating of Perceived Exertion)は、運動・作業中に本人が感じる「きつさ」を数値化する主観的評価尺度です。作業療法・理学療法・心臓リハビリテーション・呼吸リハビリテーションなど、幅広い臨床現場で活用されています。

本記事では、6〜20で評価する「Borg RPE Scale(原版)」と、0〜10を基本として息切れ・疲労感などの症状強度を評価する「Borg CR10 Scale(修正ボルグスケール)」について、違いや臨床での使い方をわかりやすく解説します。

1. ボルグスケールとは?開発の背景

ボルグスケールは、スウェーデンの生理学者 Gunnar Borg(グンナー・ボルグ)博士が1960年代に開発した、主観的運動強度(RPE: Rating of Perceived Exertion)を測定するための自己評価スケールです。

原版のBorg RPE Scaleは、運動中の心拍数との関連を意識して6〜20の範囲に設定されています。若年〜中年の健常者では「RPE×10」が運動中の心拍数のおおよその目安になることがあります。ただし、この関係には個人差があり、年齢・運動習慣・疾患・薬剤・環境などの影響を受けるため、RPEから心拍数を正確に推定できるわけではありません。心拍計を使用できない場面での運動強度のモニタリング指標として補助的に活用することが多いです。

💡 ボルグスケールが重要な理由
心拍計・血圧計などの機器がなくても、患者・利用者自身が感じる「きつさ」を定量化できるため、在宅リハビリや訪問リハビリでの運動負荷管理に特に有用です。

ボルグスケールが使われる主な場面

  • 心臓リハビリテーション(心疾患・心不全患者の運動負荷調整)
  • 呼吸器リハビリ(COPD・肺疾患患者の息切れ評価)
  • 在宅・訪問リハビリでの運動処方
  • 脳卒中・整形外科疾患の回復期リハビリ
  • がんリハビリ・緩和ケアにおける疲労マネジメント
  • 産業保健・作業関連疾患の評価

2. ボルグスケール(6〜20点スケール)原版 RPE

スケールの構成と特徴

原版ボルグスケールは 6〜20の数値尺度で構成されており、運動中の心拍数との対応を意識した設計となっています。「6」は安静時心拍数(約60拍/分)、「20」は最大心拍数(約200拍/分)を念頭に置いた設定ですが、実際の心拍数との対応には個人差があります。

スコア 言語表現(日本語) 言語表現(英語) 強度の目安
6 全く楽 No exertion at all 安静時
7 きわめて楽 Extremely light 極めて低強度
8 (7と9の中間)
9 非常に楽 Very light 軽い散歩レベル
10 (9と11の中間)
11 Light 低強度運動
12 (11と13の中間)
13 ややきつい Somewhat hard 中等度の運動でみられることが多い
14 (13と15の中間)
15 きつい Hard (heavy) 比較的高い運動強度
16 (15と17の中間)
17 非常にきつい Very hard 非常に高い運動強度
18 (17と19の中間)
19 きわめてきつい Extremely hard 最大強度に近い
20 最大 Maximal exertion 最大運動強度

心拍数との対応関係(目安)

原版スケールでは、運動中のRPEを10倍した値が心拍数のおおよその目安になることがあります(例:RPE 13で約130拍/分)。ただし、個人差・年齢・疾患・薬剤などの影響を受けるため、心拍数を正確に推定できるものではありません

🏥 リハビリでの運動強度の目安
低〜中等度の有酸素運動では、Borg RPE Scaleの 11〜13(楽〜ややきつい) 程度が目安として用いられることがあります。ただし、適切な運動強度は疾患・体力・運動目的・薬剤などによって異なります。特に心疾患患者では、RPEだけでなく心拍数・血圧・自覚症状なども含め、主治医の指示やリスク分類に基づいて個別に設定することが重要です。

3. 修正ボルグスケール(0〜10点スケール)Modified Borg

開発の経緯

Borg CR10 Scale(修正ボルグスケール)は、ボルグ博士が1982年に開発したカテゴリー比尺度(CR: Category Ratio)です。息切れ・疲労感・局所筋疲労など、症状の強さ(強度)を評価するために設計されており、呼吸器疾患のリハビリをはじめ、疼痛・倦怠感の評価にも広く用いられています。

0〜10点というシンプルな数値範囲と「0:全くない」から「10:最大」という表現は、原版より直感的に理解しやすい場合があります。ただし、認知機能が低下している場合は主観的尺度の理解・再現性が低下することがあるため、使用前に理解度を確認することが大切です。

スコア 言語表現(日本語) 言語表現(英語) 息切れ・疲労の程度
0 全くない Nothing at all 自覚症状なし
0.5 非常に弱い(かろうじて感じる) Very, very slight わずかに感じる
1 非常に弱い Very slight 極めて軽度
2 弱い Slight (weak) 軽度
3 中程度 Moderate 中等度
4 やや強い Somewhat severe 中等度〜強め
5 強い Severe (heavy) 強い
6 (5と7の中間)
7 非常に強い Very severe 非常に強い
8 (7と9の中間)
9 非常に強い Very, very severe きわめて強い
10 非常に強い(最大) Maximal 最大

修正ボルグスケールの特徴

  • 息切れ・疲労感・局所筋疲労など、症状の強度をモニタリングするカテゴリー比尺度として、呼吸器疾患(COPD・喘息・心不全など)のリハビリで広く使用される
  • 呼吸リハビリテーションでは息切れや下肢疲労をCR10でモニタリングしながら運動強度を調整する。目標値は患者の病態や運動処方によって異なるため、SpO₂・心拍数・血圧・自覚症状などと合わせて総合的に評価する
  • 疼痛・倦怠感・筋肉疲労など、さまざまな症状の強度評価に応用可能
  • 0.5の刻みがあるため、軽微な変化も捉えやすい

4. ボルグスケール vs 修正ボルグスケール:使い分け

比較項目 ボルグスケール(原版) 修正ボルグスケール
スコア範囲 6〜20点(15段階) 0〜10点(11段階+0.5)
主な評価対象 全身的な運動強度・疲労感 呼吸困難感・息切れ・疼痛・倦怠感
主な使用場面 有酸素運動、心臓リハビリ、体力測定 呼吸器リハビリ、COPDリハビリ、在宅酸素療法中の評価
心拍数との対応 RPE×10が目安になることがあるが個人差が大きい 心拍換算には不向き
数値の直感性 6から始まるため、使用前の説明が必要 0を基準とするため、比較的直感的に理解しやすい
認知機能低下例 使用前に理解度を確認して使用 同様に理解度を確認して使用
疼痛評価への応用 △(本来の目的外) ○(疼痛・倦怠感にも対応)
信頼性・妥当性 確立(広くエビデンスあり) 確立(特に呼吸器領域)
💡 使い分けの原則
全身運動強度の管理 → 原版ボルグスケール(RPE 6〜20)
息切れ・呼吸困難・倦怠感の評価 → 修正ボルグスケール(0〜10)
在宅・訪問リハビリでも、評価したい症状や患者の理解度に応じてスケールを選択します。

5. 臨床での正しい使い方・手順

評価前の説明(インストラクション)

ボルグスケールの信頼性は、患者への説明の質に大きく依存します。初回使用前に必ず以下の説明を行ってください。

  1. スケールを提示し、数値の意味を説明する
    「このカードの数字を使って、今感じている運動のきつさや症状の強さを教えてください。どの感覚を評価するかは、測定前にお伝えします。6(または0)が最も楽な状態、20(または10)が想像できる最もきつい状態です。」
  2. 何を評価するかを明示する(スケールによって異なる)
    Borg RPE Scale使用時:「運動全体としてどのくらいきついかを数字で教えてください。」
    CR10(息切れ評価)使用時:「今の息苦しさ・息切れはどの程度ですか?」
    CR10(下肢疲労評価)使用時:「脚の疲れはどの程度ですか?」
  3. 正直に答えることを促す
    「正解・不正解はありません。ほかの人と比べず、今ご自身が感じている程度を教えてください。」
  4. 練習してもらう
    安静時や軽い動作でスコアを報告してもらい、スケールの使い方を確認します。
  5. 活動中・活動後に評価する
    運動・動作の最後の1〜2分間、または運動直後に報告を求めます。

記録のポイント

  • 評価時点(活動前・中・後)を必ず記録する
  • 使用スケールの種類(原版 or 修正)を明記する
  • 同一患者には同じスケールを継続使用する(比較のため)
  • スコアとともに活動内容・時間・距離も記録する
  • バイタルサイン(SpO₂、心拍数、血圧)と合わせて記録するとより有用

6. 作業療法士(OT)としての活用ポイント

ADL・IADL場面での活用

作業療法士は運動療法だけでなく、日常生活動作(ADL)・手段的ADL(IADL)における疲労管理にボルグスケールを活用できます。

  • 入浴・更衣・調理などの活動中のRPEを評価し、エネルギーマネジメントを支援
  • 心不全・COPD患者のADL自立度向上に向けた活動強度の段階的アップ
  • がん患者の倦怠感マネジメントにおける活動量の調整指標として活用
  • 訪問リハビリでの自主トレーニング指導(「RPE 11〜13程度になるよう運動量を調整してください」など、目標強度の目安として活用)

患者教育・自己管理への活用

ボルグスケールは患者自身が運動強度を自己管理するためのツールとしても機能します。心臓リハビリや呼吸リハビリの退院後フォローにおいて、「目標RPEの範囲内で活動する」という自己管理行動を促進できます。

🏠 訪問リハビリでの活用例
在宅での自主トレーニング時に息切れのスコアをモニタリングしながら運動強度を調整するよう指導することで、心拍計がない環境でも症状に応じたセルフマネジメントを促すことができます。具体的な目標値は病態や運動処方に基づいて個別に設定します。

多職種連携での情報共有

ボルグスケールのスコアは数値化されているため、医師・看護師・理学療法士・言語聴覚士など他職種との情報共有に適しています。カンファレンスや申し送りで「ADL時のRPEが15〜17と高い」と報告することで、医療チーム全体で活動強度の見直しを検討できます。

7. 注意事項・限界

⚠️ 使用上の注意点
  • 主観的評価であるため、同じ運動負荷でも感じ方には個人差があります。また、同一人物でも体調・睡眠・心理状態・環境などによってスコアが変化することがあります
  • β遮断薬服用中の患者では心拍応答が抑制されるため、「RPE×10≒心拍数」という関係が成立しにくくなります。心拍数だけに依存せず、RPEや自覚症状などを併用して運動強度を評価します
  • 認知症・失語症など、理解度やコミュニケーション能力に制限がある場合は、説明方法や評価方法を対象者に合わせて工夫する必要があります
  • ボルグスケール単独でリスク管理を行うべきではなく、バイタルサイン・自覚症状・客観的所見と組み合わせて判断すること
  • 初回測定前の十分な説明がない場合、スコアの信頼性が著しく低下する
  • RPEやCR10のスコアだけで活動の継続・中止を判断せず、SpO₂・心拍数・血圧・自覚症状などと組み合わせて評価すること。具体的な中止基準は疾患・担当医の指示・施設基準に従う

活動を中止・再評価すべき主な所見

ボルグスケールのスコアにかかわらず、以下のような所見が出現した場合は活動を中断して状態を再評価し、必要に応じて医療職に報告してください。具体的な中止基準は疾患・医師の指示・施設基準に従います。

  • 胸痛・胸部圧迫感・狭心痛の出現または増悪
  • 著明な呼吸困難・チアノーゼ・SpO₂の著明な低下
  • 血圧の異常反応(著明な上昇または低下)
  • 意識状態の変化・強いめまい・失神前症状
  • 新たな不整脈の出現

8. まとめ

✅ ポイントまとめ

  • Borg RPE Scale(原版 6〜20)は全身的な運動強度の評価に用いられ、RPE×10が運動中の心拍数のおおよその目安になることがある(個人差あり)
  • Borg CR10 Scale(0〜10)は息切れ・疲労感・局所筋疲労など症状の強度評価に用いられ、数値の直感性が原版より高い場合がある
  • Borg RPEやBorg CR10は運動強度・息切れ・疲労などをモニタリングする指標の一つであり、目標値は対象者の疾患・体力・運動目的に応じて個別に設定する
  • 評価前の丁寧な説明(インストラクション)が信頼性の鍵
  • OTとしてはADL・IADL場面でのエネルギーマネジメントや患者教育に積極的に活用する
  • バイタルサインや客観的所見と組み合わせて使用し、ボルグスケール単独での判断は避ける

ボルグスケールは、患者自身が感じる「きつさ」を臨床で共有するためのシンプルで有用な尺度です。数値だけで判断せず、バイタルサインや自覚症状、活動内容と組み合わせて臨床判断に活用することが重要です。

  • Borg GA. Psychophysical bases of perceived exertion. Medicine & Science in Sports & Exercise. 1982;14(5):377-381.
  • Borg GA. Borg's Perceived Exertion and Pain Scales. Human Kinetics; 1998.
  • American College of Sports Medicine. ACSM's Guidelines for Exercise Testing and Prescription. 11th ed. Wolters Kluwer; 2021.
  • 日本心臓リハビリテーション学会. 心臓リハビリテーション標準プログラム(2020年改訂版).
  • 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 他. 呼吸リハビリテーションマニュアル(第2版). 2012.
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