【作業療法士が解説】肩関節外旋の可動域制限|外転0°・45°・90°で変わる制限因子
肩関節外旋の可動域制限は、外転0°・45°・90°のどの肢位で測定するかによって、関与しやすい組織が変わります。本記事では作業療法士の視点から、烏口上腕靱帯・関節包・肩甲下筋などの制限因子、自動と他動ROMの違い、肩甲骨代償の見方まで整理します。肩関節外旋制限をどのように評価し、制限因子の仮説を立てるか整理したい方は参考にしてください。
目次
肩関節外旋とは?制限が起こると何が起きるか
肩関節外旋とは、上腕骨が長軸を中心として外側へ回旋する運動を指します。整理すると、次のような目的を持った動きです。
- 頭の後ろに手を回す
- 洗髪する
- 更衣時に袖へ腕を通す
- 上方の物へ手を伸ばす
外旋可動域が制限されると、洗髪や更衣、上方への手伸ばしなどに影響し、肩甲骨や体幹による代償がみられることがあります。
外旋ROMは角度だけで評価しない
外旋制限がある場合は、肩甲骨や体幹による代償が生じていないかを確認します。ROMの数値だけでなく、「どこが動いてその角度になっているのか」を観察することが重要です。
評価で押さえたい4つの視点
①どの外転角度で外旋を測定したか ②自動ROMか他動ROMか ③肩甲骨代償が起きていないか ④疼痛で止まるのか、抵抗感で止まるのか。この4点を押さえることで、外旋制限の背景にある要因について仮説を立てやすくなります。
なぜ外転角度によって外旋制限の見え方が変わるのか
外旋ROMを評価するときに重要なのが、どの外転角度で外旋を測定したのかという点です。外転0°位・45°位・90°位では、外旋時に張力がかかりやすい関節包・靱帯・筋(肩を支える袋状の組織や帯状の組織、筋肉)が同じではないと考えられています。そのため「外旋30°だった」という情報だけでは、制限因子を十分に推測できません。
また、外転角度が大きくなるほど単純に外旋制限が強くなるとも限りません。臨床では、外転0°位ではかなり硬いが45°位にすると少し外旋が出るケースや、逆に45°位までは動くが90°位になると再び制限が強くなるケースもみられます。そのため、外転0°→45°→90°と角度を変えて比較することが重要になります。
なお、以下に示す組織は各肢位で制限因子となり得る代表例であり、ROM所見のみから特定の組織を断定することはできません。
外転0°位での外旋制限|前上方組織に注目
外転0°位は、上腕を体側につけた状態で外旋する肢位です。この肢位では、前上方を中心とした関節包・靱帯・筋の影響を受けやすいと考えられます。
- 烏口上腕靱帯(CHL:肩の前上方を補強する靱帯)
- 上関節上腕靱帯(SGHL)・中関節上腕靱帯(MGHL)
- 前方関節包
- ローテーターインターバル周囲(腱板の間にすき間状に存在する組織)
- 肩甲下筋
生体力学研究では、肩関節外旋に対する制動には複数の関節包・靱帯組織が関与し、烏口上腕靱帯や関節上腕靱帯、肩甲下筋などが影響することが報告されています。なかでも烏口上腕靱帯やローテーターインターバル周囲は、下垂位に近い肢位での外旋を考えるうえで重要とされています。
臨床でよくみられる変化
「外転45°にすると少し外旋できるのに、外転0°位ではかなり硬い」というケースがあります。これは、外転0°位で強く影響していた前上方組織の張力が、外転することで変化するためと考えられますが、個人差があり万人に当てはまる説明ではありません。
外転45°位での外旋制限|0°位からの変化をみる
外転45°位は、外転0°位と90°位の間に位置する肢位です。ただし、「制限因子も0°位と90°位の単純な中間になる」と考えるのは適切ではありません。
外転角度が変化すると、関節包・靱帯・筋の張力関係も変化します。そのため患者によっては、外転0°位では外旋制限が強いものの、45°位にすると外旋可動域が増えることがあります。
一方、外転角度の増加に伴って、前上方組織だけでなく、前下方の関節包・靱帯組織の影響も徐々に加わる可能性があります。
45°位では「変化」をみる
45°位は特定の組織を判断するための肢位というより、①0°位でみられた制限が軽減するか、②90°位へ近づくにつれて再び制限が強くなるか、というROMの変化を確認する肢位として活用すると分かりやすくなります。
外転90°位での外旋制限|前下方組織に注目
外転90°位では、主に前下方の関節包・靱帯組織への張力が強くなると考えられています。
- 下関節上腕靱帯(IGHL:肩の下方を補強する靱帯)、特に前方成分
- 前下方関節包
外転0°位や45°位では比較的外旋できるのに、90°位になると外旋が大きく制限される場合には、IGHLや前下方関節包、前下方組織の拘縮などの影響を考える材料になります。挙上位での上肢活動やスポーツ動作を評価する際にも重要な肢位です。
単一組織への断定を避ける
「90°位で硬い=IGHLが原因」と単一組織に断定することはできません。あくまで肢位によるROM変化から関与している組織を推測する、という使い方にとどめます。
外転0°・45°・90°位を比較する
外旋制限は、それぞれの肢位を単独で見るのではなく、外転角度を変えたときに外旋可動域がどう変化するのかを比較することが重要です。下の図は、外転0°・45°・90°位それぞれで注目しやすい制限因子の傾向を示したものです。
| 肢位 | 主に注目する組織・所見 | 臨床での見方 |
|---|---|---|
| 外転0°位 | CHL、SGHL、MGHL、ローテーターインターバル、前方関節包、肩甲下筋など | 前上方組織の影響を考える |
| 外転45°位 | 0°位からのROM変化 | 0°位での制限が軽減するかを見る |
| 外転90°位 | IGHL、前下方関節包など | 前下方組織の影響を考える |
外転0°位で最も制限が強い場合
0°位では外旋が強く制限されるが、45°位にすると外旋が増える場合は、烏口上腕靱帯、ローテーターインターバル、前上方関節包、肩甲下筋など前上方組織の影響を考えやすくなります。
外転45°位で外旋が増える場合
0°位より45°位で外旋可動域が増えることがあります。これは0°位で強く影響していた前上方組織の張力が変化した結果である可能性があり、「0°→45°で外旋が増えるか」という変化も制限因子を考えるうえで重要な情報になります。
外転90°位で再び制限が強くなる場合
45°位までは比較的外旋できても、90°位になると再び制限が強くなる場合は、下関節上腕靱帯や前下方関節包など前下方組織の影響を考えます。
肩甲下筋と外旋制限の関係
外旋制限を考えるとき、関節包だけでなく筋にも注目します。特に重要とされるのが肩甲下筋です。肩甲下筋は肩関節内旋筋であり、外旋すると伸張されます。生体力学研究でも、肩甲下筋への張力が増えると外旋に必要なトルクが増加することが報告されています。
長期間の内旋位保持や固定後、術後などでは、肩甲下筋を含む前方組織の柔軟性低下が関与する場合があります。また、疼痛が強い場合には防御性収縮によって外旋が制限されることもあります。特に外転0°位で外旋制限が強い場合には、肩甲下筋を含む前方組織の関与を考えながら評価します。
単純な因果関係にしない
「外旋制限=肩甲下筋短縮」と単純に判断するのは避け、関節包や靱帯、疼痛など他の要因と合わせて評価します。
外旋制限を後方関節包だけで説明しない
肩関節の可動域制限を考えるとき「関節包が硬い」という表現がよく使われます。ここで注意したいのが、後方関節包の硬さを外旋制限と直接結びつけないことです。後方関節包の硬さは、内旋や水平内転制限との関連で評価されることが多く、外旋制限では前方〜前下方組織の関与も考える必要があります。そのため「外旋制限だから後方関節包をストレッチする」と短絡的に考えるのではなく、どの外転角度で外旋が制限されるのかを確認する必要があります。
自動ROMと他動ROMを比較する
外旋制限を評価するとき、最初に確認したいのが自動ROMと他動ROMの差です。下の図は、両者を比較する際の見方を整理したものです。
自動ROMの低下が目立つ場合
自動外旋が制限されている一方、他動外旋が比較的保たれている場合には、外旋筋力低下、疼痛、腱板機能低下、神経学的要因、運動制御の問題などを考えます。特に棘下筋・小円筋など外旋筋の機能低下がないか確認します。
自動ROM・他動ROMともに低下
自動ROMだけでなく他動ROMまで低下している場合には、関節包、靱帯、筋、関節構造、疼痛による防御性収縮などによる可動域制限を考えます。さらに外転0°・45°・90°位のどこで制限が強くなるのかを比較することで、制限因子の仮説を立てていきます。
「痛くて止まる」のか「硬くて止まる」のか
他動運動では、最終域の感覚(エンドフィール)も重要です。痛みによって運動が止まる場合には、炎症、術後早期、外傷後、肩関節周囲組織へのストレス、不安や防御性収縮などを考えます。一方、明確な抵抗感によって止まる場合には、関節包や筋など受動組織による制限を考える材料になります。
end feelだけで断定しない
end feelだけで特定の組織を断定することはできません。疼痛の出現角度・ROM・肢位による変化を組み合わせて評価することが重要です。
肩甲骨の代償を見逃さない
外旋ROMを測定するときに重要なのが、肩甲骨の動きです。肩甲上腕関節の外旋が制限されている患者では、上腕骨が十分に外旋できない代わりに肩甲骨を動かして、見かけ上の外旋ROMを作っていることがあります。次のような肩甲帯・体幹の代償が生じていないか観察します。
- 肩甲骨の位置変化
- 肩甲帯全体の位置・運動変化
- 体幹回旋
- 肘の位置変化
例えば仰臥位で外旋を測定するとき、患者の肩甲骨が大きく動いている場合、測定された角度には肩甲胸郭運動による代償が含まれている可能性があります。肩甲骨を軽く固定することで、肩甲上腕関節由来の外旋可動性をより捉えやすくなります。例えば、肩甲骨自由下では外旋60°、軽く固定すると30°まで低下する場合、肩甲骨運動が測定値に大きく影響していた可能性があります。
ROM測定で見るべきこと
数字だけでなく「どこが動いてその角度になっているのか」を確認することが重要です。
外旋評価では肘関節角度も統一する
外転0°・45°・90°位で外旋を比較するときは、肘関節角度もできるだけ統一して評価することが重要です。臨床では肘関節を90°屈曲位として外旋を評価すると比較しやすくなります。肘関節角度や前腕位置が異なると、測定時の基準が変わり、肢位間・経時的なROM比較が難しくなります。
凍結肩では外旋制限に注目する
外旋制限が特徴的にみられる病態の一つが凍結肩(adhesive capsulitis)です。凍結肩では疼痛、自動ROM制限、他動ROM制限がみられ、特に他動外旋の低下は評価上重要な所見の一つとされています。
ただし「外旋が最も制限される」という古典的なcapsular pattern(関節包性の制限パターン)が、すべての患者で同じように認められるわけではありません。そのため外旋制限がある=凍結肩と単純に判断するのではなく、発症経過、疼痛の性質、他方向のROM、自動・他動ROM、必要に応じて画像所見や既往歴なども合わせて評価します。凍結肩では外転0°位での他動外旋制限が重要な評価所見の一つとされるため、0°位だけでなく45°・90°位へ肢位を変えた際のROM変化も確認すると、制限の特徴を把握しやすくなります。
外旋ROM制限を見るときの評価の流れ
評価の流れ
- 自動ROMと他動ROMを比較し、筋力・疼痛の問題か受動的な制限かを大まかに分ける
- 外転0°・45°・90°位で外旋を比較し、どの肢位で最も制限が強いかを確認する
- 肩甲骨代償を確認し、必要に応じて肩甲骨を軽く固定した状態でも外旋を確認する
- 疼痛で止まるのか、抵抗感で止まるのかを確認する
- これらを組み合わせて評価し、ADL(日常生活動作)への影響まで結びつける
①自動ROMと他動ROMを比較する
まず筋力・疼痛による問題なのか、受動的な可動域制限なのかを大まかに分けます。
②外転0°・45°・90°位で外旋を比較する
外転角度によって外旋時に張力がかかりやすい組織が異なるため「外旋○°」だけでは情報が不十分です。0°位で最も硬いのか、45°位にすると外旋が増えるのか、90°位で再び硬くなるのかを比較し、どの外転角度で測定したのかを明確にします。
③肩甲骨代償を確認する
肩甲骨が動けば見かけ上の外旋ROMは大きくなるため、必要に応じて肩甲骨を固定し、肩甲上腕関節そのものがどの程度動いているのかを確認します。
④疼痛で止まるのか、抵抗感で止まるのかを見る
同じ外旋30°でも、痛くて止まるのか硬くて止まるのかでは意味が異なります。ROMだけでなく疼痛・end feel・症状の出現角度を合わせて評価します。
⑤ADLと結びつける
最終的に重要なのは外旋が何度あるかだけではありません。洗髪できるか、後頭部へ手を伸ばせるか、袖に腕を通せるか、上衣を着脱できるか、高い位置に手を伸ばせるかなど、患者が実際に困っている動作と結びつけます。作業療法ではROM→動作→ADLまで評価することが重要です。
臨床ではこう考える
評価結果はROM値だけで記録せず、「どの肢位で」「自動か他動か」「疼痛や代償があったか」まで記録しておくと、経時的な変化を追いやすくなります。
振り返りポイント
評価前に確認しておきたいポイント
- 外転0°・45°・90°のどこで外旋を測定したか記録したか
- 自動ROMと他動ROMを分けて確認したか
- 肩甲骨代償の有無を確認したか
- 疼痛かend feelかを区別したか
- 肘関節角度など測定条件をそろえたか
- ADLへの影響まで確認したか
まとめ
肩関節外旋の可動域制限を評価するときは、「外旋○°」という数値だけで判断しないことが重要です。外転0°位では前上方組織、90°位では前下方組織の影響を考え、45°位では0°位からROMがどう変化するかを確認します。さらに、自動・他動ROM、肩甲骨代償、疼痛、end feelを組み合わせることで、制限因子についてより具体的な仮説を立てやすくなります。
「どの肢位で、どのように止まるのか」まで評価することが、肩関節外旋制限を考えるうえで重要です。
よくある質問
Q. 外旋制限は自然に改善することがありますか?
A. 原因や病期によって異なります。疼痛の軽減とともに改善する場合もあれば、関節包性の拘縮や術後・固定後などで制限が長く残る場合もあります。改善の有無だけでなく、疼痛や他動ROM、ADLへの影響を経時的に確認することが重要です。
Q. 外転0°位と90°位、どちらを先に評価すべきですか?
A. 順序自体に厳密な決まりはありませんが、疼痛が強い肢位を後に回すなど、患者の負担を考慮して順序を調整することが一般的です。
Q. 肩甲下筋のストレッチは外旋制限に有効ですか?
A. 肩甲下筋の短縮が疑われる場合は選択肢の一つになりますが、関節包や靱帯の関与も考えられるため、他の評価結果と合わせて判断します。
Q. 自動ROMだけ低下している場合、可動域練習は必要ですか?
A. 他動ROMが保たれている場合は、単純な関節拘縮以外の要因を考えます。疼痛、外旋筋力、腱板機能、神経学的要因、運動制御などを評価し、その結果に応じて介入を検討します。
Q. 凍結肩かどうかはROMだけで判断できますか?
A. ROMだけでは判断できません。発症経過や疼痛の性質、画像所見なども合わせて総合的に評価する必要があります。
Q. 肩甲骨を固定して評価するのは痛みが強い患者でも行えますか?
A. 疼痛が強い場合は無理に固定せず、患者の反応を見ながら実施の可否を判断します。
Q. 外旋制限があるとADLのどこに影響が出やすいですか?
A. 洗髪、更衣時の袖通し、高い位置への手伸ばしなどで困難が生じやすいとされています。
参考情報
本記事は肩関節外旋の生体力学に関する研究報告や臨床所見をもとに、作業療法士の視点で整理したものです。個々の病態や治療方針については、担当の医師・セラピストにご相談ください。本記事は参考情報であり、診断や治療の代替となるものではありません。
投稿者プロフィール
最新の投稿
お知らせ2026-09-17高次脳機能障害の復職支援|「復職できる」と「仕事を続けられる」は違う
お知らせ2026-09-16【セラピスト向け】肩関節屈曲のROM制限|制限因子と評価のポイント
お知らせ2026-09-16【作業療法士が解説】肩関節外旋の可動域制限|外転0°・45°・90°で変わる制限因子
お知らせ2026-09-15【作業療法士が解説】肩関節の可動域制限因子|屈曲・外転・内外旋を運動方向別に整理



