半側空間無視に患肢を使う理由とは?Limb Activation Therapy(患肢活性化療法)を作業療法士が徹底解説
「左側を見てください」と声をかけても、視線がすぐに右へ戻ってしまう――
半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect:USN)のリハビリでは、こうした場面に悩む療法士の方も多いのではないでしょうか。
近年、患側の上肢を動かすだけでUSNが軽減する可能性があることが報告されており、この介入はLimb Activation Therapy(LAT:患肢活性化療法)と呼ばれています。
本記事では、なぜ患肢を動かすだけでUSNが改善する可能性があるのか、そのメカニズムとエビデンス、重度麻痺例での工夫、他の介入方法との使い分けまで、作業療法士の視点から整理します。
- 1. Limb Activation Therapy(LAT)とは
- 2. なぜ患肢を動かすだけでUSNが改善する可能性があるのか
- 3. 重要なのは「動かしたこと」だけではない
- 4. 主な研究紹介
- 5. 臨床での活用方法
- 6. 効果を高めるポイント
- 7. エビデンスの位置づけ
- 8. 能動運動と他動運動、どちらが有効か
- 9. 患肢を動かせない重度麻痺ではどうする?
- 10. Limb Activation Therapyが効きやすい患者・効きにくい患者
- 11. Visual Scanning・Prism Adaptation・体幹回旋との比較
- 12. 介入は単独より組み合わせて考える
- 13. 臨床アルゴリズム:介入選択の流れ
- 14. まとめ
- 参考文献
1. Limb Activation Therapy(LAT)とは
Limb Activation Therapyとは、患側の上肢または下肢を用いて感覚運動入力を増加させ、無視側空間への注意を促す介入です。
例えば右半球損傷による左USNでは、左手を繰り返し開閉したり、左腕を前方へ伸ばしたりするだけでも、左空間への注意が向きやすくなることが報告されています。
臨床ポイント LATの本質は「運動そのもの」を目的とした訓練ではなく、左側空間に注意を向ける神経ネットワークを刺激することにあります。
運動が小さくても、左空間への注意を引き出す機会になり得ます。
2. なぜ患肢を動かすだけでUSNが改善する可能性があるのか
半側空間無視は、単純な視覚障害ではなく、右半球の注意ネットワーク(dorsal attention network・ventral attention networkを含む)の障害と考えられています。
責任病巣は下頭頂小葉(inferior parietal lobule)、側頭頭頂接合部(TPJ)、上側頭回、前頭眼野、島皮質、大脳基底核、白質線維など多岐にわたるとされ、右頭頂葉だけに限定される病態ではありません。
左手を動かすことで、右半球の運動関連領域や感覚運動ネットワークへの入力が増加し、固有感覚や身体位置情報が空間注意に関わるネットワークへ入力されることで、左空間への注意が再配分される可能性があると報告されています。
なお、USN患者では固有感覚の障害を伴うことも報告されており、感覚入力と注意ネットワークの関係については、まだ研究段階の部分も残されています。
3. 重要なのは「動かしたこと」だけではない

研究では、やや興味深い結果も報告されています。
単純に左手を使用したことよりも、左手が左空間に存在していること自体がUSN改善に強く影響する可能性が示されているのです。
つまり、運動だけでなく、身体が左空間に存在しているという身体位置情報(Body-centered representation)も重要な役割を果たしていると考えられています。
4. 主な研究紹介
Halligan ら(1991)
左手を使用する条件と、左手を左空間へ置くだけの条件を比較した研究です。
この研究の興味深い点は、「左手を動かしたから改善した」のではなく、「左手が左空間に存在していたこと」の方が改善に強く関与していた可能性を示した点にあります。
つまり、運動そのものというよりも、身体位置情報(body-centered representation)が空間注意の補正に関わっている可能性が示唆されました。
この結果は、Limb Activation Therapyが単なる運動療法にとどまらず、身体位置情報を利用した介入でもあることを示唆するものとして位置づけられています。
Robertson ら(1992)
左USN患者に対し、左空間内で左手の開閉・リーチ・運動を行わせたところ、通常の机上課題よりも左側の見落としが有意に減少したと報告されています。
ここで示された重要な点は、「左手を動かすこと」自体よりも「左空間(left hemispace)で動かすこと」が改善に寄与していたということです。同じ左手の運動であっても、身体の右側空間で行った場合には効果が小さいとされており、運動を行う空間的な位置がLATの効果を左右する可能性が示唆されています。
さらに、机上訓練だけでなく日常生活の合間にも左手運動を繰り返すよう指導することで、USNが改善したとする報告もあり、LATが特別なリハビリの場面に限らず、生活場面にも応用できる可能性が示されています。
Robertson ら(1994)
歩行中に左手指の開閉運動を行わせたところ、歩行中の頭部偏位や視線偏位が有意に減少したと報告されています。これは、動作課題を遂行しながらでも左空間への注意が改善し得ることを示唆しています。
5. 臨床での活用方法
Limb Activation Therapyには特別な道具は必要ありません。ADL場面の直前に組み込むことで、無理なく実施できます。
| 場面 | 実施内容 | その後の課題 |
|---|---|---|
| 食事前 | 左手を20回開閉する | 食事開始 |
| 更衣前 | 左手を前方へリーチする | 着衣開始 |
| 歩行前 | 左手開閉を30秒行う | 歩行開始 |
| ADL中(テレビ視聴前など) | 左手をテーブルに置き、軽く机を叩く | 視聴・活動の開始 |
このように、対象課題の直前に行うだけでも効果が期待できるとされています。
6. 効果を高めるポイント
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 能動運動を基本とすること | 能動運動が第一選択とされますが、他動運動でも改善が報告されており、優劣は明確に結論づけられていません |
| 左空間内で動かすこと | 体の中央より右側ではなく、左側空間で運動することが重要とされています |
| 課題直前に実施すること | 注意ネットワークを活性化した状態で課題へ移ることで効果が持続しやすいと考えられています |
| 評価に応じて他の介入と組み合わせること | 視覚探索訓練、プリズム適応療法、体幹回旋、頸部回旋などとの併用が検討されますが、常に単独より高い効果が得られるとは限りません |
7. エビデンスの位置づけ
LATについては、複数のRCTや小規模研究でUSN改善への一定の効果が報告されています。
一方で、視覚探索訓練やプリズム適応療法など他の介入と比べたエビデンスレベルの位置づけはガイドラインの版によって異なり、LAT単独を一律に高いグレードで推奨していると断定することはできません。
なお、「重度だから効果が出にくい」という単純な関係を示す明確なエビデンスは多くなく、むしろLATはボトムアップ型の介入であるため、自発的な探索やトップダウンの指示理解が難しい重度例でも有効な可能性があるとする指摘もあります。
効果は重症度そのものよりも、随意運動の有無や固有感覚の保たれ方といった個々の障害特性によって異なると考えるのが実情に近く、他の介入との併用を含めて個別に検討することが望ましいとされています。
注意点 LATは有望な介入ですが、すべての患者に一律に高い効果が得られるとは限りません。
「重度だから効きにくい」と単純に判断するのではなく、随意運動や固有感覚など個々の障害特性に応じて、他の介入と組み合わせながら個別に検討することが大切です。
8. 能動運動と他動運動、どちらが有効か

LATでは一般的に、患者自身が患肢を動かす能動運動が用いられます。
左手指の開閉や左上肢のリーチを行うことで、運動関連領域だけでなく、身体位置や空間注意に関わるネットワークへの入力が増えると考えられているためです。
そのため、患肢を動かせる患者では、まず左手指の開閉、左手でテーブルを叩く、左空間の物品へ手を伸ばす・押す・触れる、歩行中に左手指を動かすといった能動運動を選択します。
ただし、能動運動でなければ効果がないというわけではありません。
Frassinetti らは、検者が左上肢を他動的に外転・内転させながら抹消課題や線分二等分課題を行わせることで、USNが軽減する可能性を報告しています。
他動運動では運動指令は生じませんが、固有感覚・関節運動覚・触覚・患肢の位置情報・左空間内で身体が動いているという身体空間情報が脳へ送られるためと考えられています。
現時点では、能動運動と他動運動を十分な人数で直接比較し、優劣を明確に結論づけられるほどの研究は多くありません。
臨床では患者の状態に応じて次のように使い分けます。
| 患者の状態 | 選択する方法 |
|---|---|
| 患肢を自力で動かせる | 能動運動を優先する |
| わずかな随意運動がある | 自動介助運動を用いる |
| 随意運動がほとんどない | 他動運動、FES、ミラーセラピーを検討する |
| 指示理解が難しい | 単純な反復運動、感覚刺激、課題内での誘導を用いる |
| 痛みや亜脱臼がある | 上肢全体を無理に動かさず、手指・前腕・下肢も活用する |
9. 患肢を動かせない重度麻痺ではどうする?
「重度麻痺で左手を動かせない患者にはLATを行えないのではないか」と思われるかもしれません。しかし、随意運動がみられない場合でも、以下の方法で患肢を活性化できる可能性があります。
① 自動介助運動
わずかでも筋収縮が認められる場合は、療法士が運動を介助しながら、患者にも患肢を動かそうと努力してもらいます。
左上肢を左空間内に置き、肘伸展や前方リーチを補助しながら「手を開こうとしてください」などと指示し、運動企図を伴わせることがポイントです。
実際の運動が小さくても、運動を意図すること自体が運動関連領域への入力になる可能性があります。
② 他動運動
随意運動がまったくみられない場合は、視覚探索課題の前などに、左手指の開閉、左手関節の背屈・掌屈、左前腕の回内・回外、左上肢を安全な範囲で左空間へ動かすといった他動運動を行います。
注意点 脳卒中後の肩関節亜脱臼や疼痛がある患者では、上肢を強く引っ張ったり無理に挙上したりしないよう注意が必要です。肩に問題がある場合は、手指や前腕の運動、あるいは患側下肢の運動を利用する方法も検討します。
③ FES・電気刺激
FESは末梢神経や筋を電気的に刺激して患肢の運動を生じさせる方法です。
自力で手指を動かせない場合でも、FESにより手指伸展、手関節背屈、肘伸展、足関節背屈などの運動を誘発できることがあり、関節運動や筋収縮に伴う感覚入力を患肢から脳へ送ることができます。
ここで重要なのは、電気刺激だけを受動的に与えるのではなく、患者自身にも「手を開こうとする」といった運動企図を伴わせることです。
刺激のみを漫然と与えるよりも、刺激に合わせて患者が運動を意図する状態をつくる方が、注意ネットワークへの働きかけとしては望ましいと考えられています。
FESによる受動的な患肢活性化が車椅子操作や認知課題に好影響を示した小規模研究もありますが、研究規模が小さく、FES単独による効果はまだ確立していない点には留意が必要です。
プリズム適応とFESを組み合わせた研究では、単独実施より併用群で大きな改善が報告されていますが、単一研究の結果であり、すべての患者に同様の効果が得られるとは限りません。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 左手を左空間内のテーブルに置く |
| 2 | 手指伸筋や手関節背屈筋へ電気刺激を行う |
| 3 | 刺激に合わせて患者にも「手を開く」ように促す |
| 4 | 左手の運動を見てもらう |
| 5 | 直後に食事、探索、車椅子操作などの課題へ移る |
④ ミラーセラピー
正中付近に鏡を置き、非麻痺側上肢の鏡像があたかも麻痺側上肢であるかのように見える環境をつくります。
左上肢が動かせない患者では、右手を動かしてその鏡像を左手の運動として観察することで、患肢が動いているように見える視覚入力、患肢へ注意を向ける機会、身体イメージの再構成、運動企図と視覚フィードバックの一致が得られる可能性があります。
脳卒中後のUSNに対するミラーセラピーのRCTやシステマティックレビューでは、無視症状やADLの改善が報告されていますが、実際の患肢運動を直接引き起こすとは限らないため、厳密には従来型のLATと同一の介入ではなく、患肢への注意を高める補助介入として、他動運動やFES、視覚探索訓練などと組み合わせるのが現実的とされています。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 鏡の裏側に左上肢を置く |
| 2 | 右手を鏡の前に置く |
| 3 | 右手指をゆっくり開閉する |
| 4 | 左手が動いているつもりで鏡像を見る |
| 5 | 可能であれば左手にも運動を試みてもらう |
| 6 | 直後に左側への探索課題やADLを行う |
ミラーセラピーはLimb Activation Therapyそのものではなく、作用機序も異なる介入です。実際の患肢運動や感覚入力を直接引き起こすとは限らないため、厳密にはLATの代替とはいえません。ただし、「患肢へ注意を向ける」という共通点があるため、補助的な介入として他の方法と組み合わせて用いられることがあります。
重度麻痺例での考え方 「自力で動かせないからLimb Activationはできない」のではなく、他動運動・自動介助運動・FES・ミラーセラピーを用いて、患肢と左空間を結びつけることが重要と考えられます。重要なのは目に見える運動量そのものではなく、患肢へ注意を向け、感覚入力を入れ、左空間内に位置させ、その直後に実生活課題へつなげるという一連の流れです。
10. Limb Activation Therapyが効きやすい患者・効きにくい患者
LATはすべてのUSN患者に一様に有効というわけではなく、患者の状態によって効果の出やすさが異なると考えられています。臨床でLATを導入するかどうかを判断する際の目安として、効きやすい傾向・効きにくい傾向を整理します。
適応(能動運動を中心としたLATの効果が期待しやすい患者)
- 患側の手指や上肢にわずかでも随意運動がみられる
- 重度ではないUSN(中等度までの見落とし)
- motor neglect(患側を使おうとしない傾向)がみられる
- 固有感覚(proprioception)が比較的保たれている
- 単純な指示であれば理解・保持できる
能動LAT単独では効果が限定されやすいケース
- 患側上肢が完全弛緩性麻痺で随意運動がまったくみられない(ただし、FESや他動運動を用いた介入では改善が報告されており、能動運動を主体とした通常のLATが実施しにくいという意味です)
- 重度USNで、左側の存在そのものに気づきにくい
- 病態失認(半側身体失認を含む)が強い
- 固有感覚障害が強く、患肢からの感覚入力が乏しい
11. Visual Scanning・Prism Adaptation・体幹回旋との比較
USNのリハビリには、LAT以外にもVisual Scanning Training、Prism Adaptation、体幹回旋といった介入があります。いずれも左空間への注意改善を目指しますが、働きかける仕組みが異なります。
| 介入方法 | 主な考え方 | Bottom-up/Top-down | 患者の意識的努力 | 重度USNへの適応 | 重度麻痺への適応 |
|---|---|---|---|---|---|
| Visual Scanning | 意識的に左側を探索する | Top-down | 大きい | やや難しい | 可能 |
| Prism Adaptation | 視覚と運動のずれから空間座標を補正する | Bottom-up | 比較的小さい | 適応しやすい場合がある | 上肢運動が必要 |
| 体幹回旋 | 身体正中・体幹中心の空間座標へ働きかける | Bottom-up | 小さい~中等度 | 適応しやすい | 可能 |
| Limb Activation | 患肢の運動・感覚・位置情報から左空間を活性化する | Bottom-up | 小さい~中等度 | 適応しやすい場合がある | 工夫が必要 |
Visual Scanning Trainingは、患者自身が意識的に左側へ注意を向けるトップダウン型の介入であるのに対し、Prism Adaptation、体幹回旋、Limb Activationはいずれも、感覚入力や身体位置情報を介して注意ネットワークへ働きかけるボトムアップ型の介入に分類されます。
重度USNで意識的な努力を要する課題の理解や保持が難しい患者では、ボトムアップ型の介入から導入を検討しやすいとされています。
Visual Scanning Trainingとの違い
Visual Scanning Trainingは、左端への目印設置や左から右への順次探索、指差し確認など、患者が意識的に左側を探索するトップダウン型の介入です。課題へ応用しやすい一方、重度USNでは患者自身が左側の見落としを認識できなかったり指示を保持できなかったりするため、訓練が成立しにくい場合があります。これに対しLATは、「左を見てください」と繰り返し指示しなくても、患肢からの運動・感覚入力を利用して左空間への注意を促す点が異なります。実際には、患肢を動かす→左端を確認する→探索課題を行う、という組み合わせが有効とされています。
Prism Adaptationとの違い
Prism Adaptationは、視野を右側へ偏位させるプリズム眼鏡を装着して目標へ反復リーチし、装着時のずれの修正と、外した後の「後効果」を利用して空間認識を補正する介入です。LATが患肢の運動・感覚・身体位置情報を利用するのに対し、Prism Adaptationは視覚座標と運動座標のずれを利用する点が異なります。近年のメタ解析では効果の大きさや持続性にばらつきがあるとも報告されており、すべての患者に一貫して有効とは限りません。上肢のリーチが困難な患者では、療法士の介助や装置の調整が必要になります。
体幹回旋との違い
USNでは頭部や体幹が右側へ偏り、身体正中の認識そのものが右方向へずれていることがあります。体幹回旋では、体幹を無視側へ回旋させることで、身体正中の再調整、体幹中心座標への感覚入力、左空間の相対的な拡大、頭部・眼球の左方向への定位、左側へのリーチ範囲の拡大を促します。LATが主に患肢から左空間への注意を促すのに対し、体幹回旋は身体の中心軸そのものを左方向へ調整する介入と考えられています。上肢に重度麻痺があっても実施しやすい点がメリットですが、単に体幹を左へ向けるだけでは右側を見続けたり頭部を右へ回して代償したりすることがあるため、骨盤・体幹の回旋、左手を左空間に置く、頭部と視線の左方向への誘導、左側物品へのリーチなど、複数の入力を組み合わせることが重要です。
介入の選び方の目安
| 患者の特徴 | 選択しやすい介入 |
|---|---|
| 軽度で左側の見落としを自覚できる | Visual Scanning |
| 指示は理解できるが自発的に左を見ない | Limb Activation+Visual Scanning |
| 重度USNで言語指示が入りにくい | 体幹回旋+Limb Activation |
| 患肢を自力で動かせる | Limb Activation |
| 患肢に重度麻痺がある | 体幹回旋+他動運動・FES・ミラーセラピー |
| 反復リーチが可能 | Prism Adaptation |
| 身体正中が右へ偏っている | 体幹回旋 |
| 机上課題は改善するがADLに汎化しない | 実際の食事・更衣・移動場面での複合介入 |
12. 介入は単独より組み合わせて考える
USNには、視覚的無視、身体無視、運動性無視、自己中心性無視、物体中心性無視など複数の要素が含まれるとされ、1つの介入だけですべてを改善することは難しいと考えられています。臨床では、場面ごとに複数の介入を組み合わせることが現実的です。
| 場面 | 組み合わせ例 |
|---|---|
| 食事動作 | 体幹を左へ向ける→左手を左側のテーブルに置く→左手指を開閉する→左端の目印を確認する→皿の左側から探索する |
| 歩行練習 | 立位で体幹正中を調整する→左手を動かす、または左上肢へ感覚入力を行う→左側の目標物を確認する→左側の障害物に注意しながら歩く |
| 重度麻痺例 | 体幹を左へ回旋する→FESまたは他動運動で左手を動かす→左手の運動を視覚的に確認する→左空間の対象物を探索する→実際のADLへ移行する |
13. 臨床アルゴリズム:介入選択の流れ
ここまでの内容を踏まえ、患者を評価した上でどの介入から検討するかの大まかな流れを1枚にまとめました。あくまで一般的な目安であり、実際の適用は個々の評価結果に基づいて判断してください。

14. まとめ
Limb Activation Therapyは、患側上肢を用いて感覚運動入力を増加させ、左空間への注意を促すリハビリテーションです。ポイントを以下に整理します。
- 患肢を動かすことで、感覚運動ネットワークを介して左空間への注意が再配分される可能性がある
- 「左空間に手が存在すること」自体にも改善効果が報告されている
- 能動運動が基本だが、他動運動・FES・ミラーセラピーで重度麻痺例にも対応できる可能性がある
- 食事や更衣などADLの直前に実施すると効果が期待しやすい
- 患側の随意運動や固有感覚の保たれ具合によって、効果の出やすさには個人差がある
- Visual Scanning、Prism Adaptation、体幹回旋など他の介入との組み合わせも検討されるが、評価結果に応じた選択が重要である
なお、本記事で紹介した内容は臨床研究に基づく一般的な情報であり、個々の患者への適用は症状や全身状態を踏まえて医療専門職が判断すべき事項です。
参考文献
- Halligan PW, Manning L, Marshall JC. Hemispheric activation vs spatio-motor cueing in visual neglect: a case study. Neuropsychologia. 1991.
- Robertson IH, North N. Spatio-motor cueing in unilateral left neglect: the role of hemispace, hand and motor activation. Neuropsychologia. 1992.
- Robertson IH, North NT, Geggie C. Spatiomotor cueing in unilateral left neglect: three case studies of its therapeutic effects. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1992.
- Robertson IH, Tegnér R, Tham K, et al. Sustained attention training for unilateral neglect: theoretical and rehabilitation implications. J Clin Exp Neuropsychol. 1995(歩行中の患肢活性化に関連する報告を含む)
- Frassinetti F, Rossi M, Làdavas E. Passive limb movements in the treatment of hemi-neglect. Cortex. 2001.
- 脳卒中後の半側空間無視に対するミラーセラピーおよびプリズム適応療法に関するシステマティックレビュー・メタ解析各種
本記事は上記研究をはじめとする複数の文献を参考に、作業療法士が一般的な知見として整理したものです。個々の研究の対象者数や方法論には限界があるものも含まれるため、最新のガイドラインや原著論文もあわせてご確認ください。







