FIM歩行・車いすの採点方法を徹底解説【7段階の判断基準と迷いやすいポイント】

FIMの移動領域「歩行・車いす(Item 12)」は、リハビリ職が毎日のように評価する項目のひとつです。しかし「T字杖で歩けたら6点」「見守りが必要なら5点」という大まかなルールは知っていても、実際の場面で迷うことは少なくありません。

車いすが主な移動手段の患者はどう採点するのか。「軽く手を添えている」のは5点か4点か。50mという距離をどこで測るのか。この記事では、そういった現場の疑問に答える形でFIM歩行の採点基準を整理します。


歩行・車いすで「何を評価するか」を最初に確認する

FIMの歩行・車いす(Item 12)が評価するのは、屋内平地での移動能力です。屋外歩行・段差・傾斜路は含みません。また、階段はItem 13で完全に独立して採点するため、歩行の点数と連動させてはいけません。

採点で最初に確認すべきことは、その患者の主な移動手段が歩行か車いすかという点です。これによって採点の見方が変わります。歩行が主手段なら歩行能力で、車いすが主手段なら車いす自走能力で採点します。

確認項目内容
評価対象屋内平地での移動(歩行または車いす自走)
自立の基準距離50m以上
補助具の扱い杖・歩行器・車いすは補助具として6点評価
階段との関係Item 13で独立して別採点。連動しない
評価のタイミング評価期間中の典型的な状況で判断

7段階の採点基準

ここからは画像(採点ガイド図)と合わせて確認してください。各点数のイラストと照らし合わせると、判断の基準がより具体的につかめます。

7点:完全自立

補助具なしで屋内平地を50m以上、安全かつ適切な速度で歩行できる状態です。介助者の関与は一切不要。転倒リスクがなく、時間的な遅延もない状態が7点です。

病棟内を一人でスタスタと歩き回り、看護師が後ろについていく必要がまったくない患者さんがこれにあたります。

6点:修正自立(補助具使用または時間延長)

T字杖・四点杖・歩行器・松葉杖などの補助具を使用して、50m以上を自立歩行できる状態です。介助者は不要ですが、補助具があることで6点になります。通常より時間がかかる場合も6点です。

補助具の種類は問いません。T字杖でも四点杖でも歩行器でも、自立して歩けているなら同じ6点です。

車いすが主な移動手段の患者が、50m以上を自走できる場合も6点です。車いすを「補助具」として扱うためです。電動車いすを自己操作できる場合も同様に6点となります。

5点:監視・準備(見守り)

歩行は自力で行えますが、転倒リスクがあるため介助者が近くで見守る必要がある状態です。身体には触れません。声かけや歩行器のセットアップなど、準備だけを行うのも5点です。

T字杖で歩けるけれど少し不安定なので、看護師がすぐ後ろをついて歩いている——という場面が典型的な5点です。介助者が「転んだら捕まえる準備」をしているが、実際には触れていない状態です。

4点:最小介助(患者が75%以上を実施)

歩行の大部分は自力で行えますが、バランスを崩しやすい場面(方向転換・歩き始め・狭い廊下など)に介助者が軽く体幹を支える程度の介助が必要な状態です。介助量は全体の25%未満で、患者が3/4以上を自力でやっています。

直線歩行は自立しているが、方向転換のときだけ介助者が腰に軽く手を添える、というのが4点の典型例です。

3点:中等度介助(患者が50〜74%を実施)

体幹・下肢に相当の支持が必要で、介助者なしでは歩行が困難な状態です。患者は歩こうとして脚を動かしていますが、介助者が体幹を支えたり麻痺側の下肢を誘導したりしながら歩を進めています。介助量は25〜49%。

片麻痺の患者で、麻痺側の振り出しや体重移動に常時介助が必要な状態がこれにあたります。患者本人も頑張っているが、介助者も相当な力を使っているイメージです。

2点:最大介助(患者が25〜49%を実施)

患者は脚を少し動かす動作があるものの、体重支持・前進の大半を介助者が担っている状態です。介助量は50〜74%で、「歩行訓練」として行っているが介助者がほぼ支えている状態に近いです。

1点:全介助(歩行不可または参加25%未満)

歩行が不可能な状態、または試みても患者の参加が25%未満の状態です。車いすを全介助で移送している場合も1点です。ハーネスを用いた免荷歩行訓練のみ実施している場合も、病棟内での実用歩行としては1点と判断します。


車いす使用者の採点:「歩けない=1点」は誤り

FIM歩行・車いすの採点でよく起こる誤りが、「歩行ができない患者は全員1点」という判断です。これは正しくありません。

歩行が主手段でない患者は、車いす自走の能力で採点します。車いすも「補助具」として扱われるため、自分で50m以上自走できれば6点です。

車いす使用時の状況点数
手動車いすで50m以上を自立自走できる6点(修正自立)
電動車いすを自己操作で50m以上移動できる6点(修正自立)
自走はできるが転倒・衝突リスクがあり見守りが必要5点(監視)
一部自走できるが介助が必要な場面がある4〜3点(介助量で判断)
自走できず、全介助で移送している1点(全介助)

たとえば脊髄損傷で下肢が完全麻痺でも、自分で車いすを操作して病棟内を50m以上移動できるなら6点です。歩行能力と切り離して、移動手段としての自立度で判断することが重要です。


採点でよく迷うポイント

「軽く手を添えている」は5点か4点か

5点と4点の境界線は「身体に触れているかどうか」です。

  • 5点(監視):触れない。目で見るだけ・声かけのみ・後ろをついて歩くだけ
  • 4点(最小介助):実際に身体に触れて支える。ただし介助量は25%未満

「念のため軽く手を添えている」という状態は、触れているという時点で4点以下を検討します。グローブをしたままでも、手が触れていれば介助としてカウントします。「触れているが力は入れていない」という状態であっても、身体接触がある時点で5点にはなりません。

50mをどこで測るか

病棟によっては廊下が短く、50mを確保しにくい場合もあります。その場合は以下のように対応します。

  • 実際に廊下の長さを測って50m確保できる経路を把握しておく
  • 複数の往復でも構わないが、一連の歩行として安定して行えることが条件
  • 実測が難しい場合は、観察した歩行距離から推定して判断する

歩行と階段は絶対に連動させない

FIMの歩行(Item 12)と階段(Item 13)は、完全に独立した別項目です。歩行が7点でも階段が1点という組み合わせは十分にあります。

「歩行が6点だから階段も6点だろう」という判断は誤りです。それぞれ独立して確認・採点してください。評価票に両方を記入することも忘れずに。

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「典型的な状況」で採点する

FIMは「能力(できる)」ではなく「実際にしていること(している)」を評価します。評価期間中の典型的な状況を採点に反映させます。

たとえば、訓練室では自立歩行できるが病棟内では常に見守りが必要という患者の場合、病棟での実際の状況(5点)を採点に反映させます。理学療法士の訓練室での評価と、病棟での実際の生活状況が一致しないことはよくあるため、病棟スタッフとの情報共有が採点精度を高める上で重要です。


採点のチェックリスト

採点前に以下の順番で確認すると、判断がスムーズになります。

  1. 主な移動手段を確認:歩行か、車いすか
  2. 50m以上移動できているかを確認:実測または観察で判断
  3. 補助具の有無を確認:使用している場合は何を使っているか
  4. 介助者が触れているかを確認:触れていれば4点以下、触れていなければ5〜7点の範囲
  5. 介助量を割合で確認:触れている場合、何%を介助者が担っているか
  6. 階段と混同していないかを確認:Item 12とItem 13は独立して採点

FIM歩行・車いすは、採点の軸さえ押さえれば判断に迷いにくい項目です。「触れているか・補助具を使っているか・50m移動できているか」の3点を軸に確認するだけで、多くのケースは判断できます。迷ったときはこの記事のガイド図を参考にしてみてください。




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