【保存版】アンダーソンの中止基準における「積極的なリハビリ」とは?|ベッド上ROMはOK?
「SpO2が90%以下だけど、ROMならやっていい?」「アンダーソンの中止基準でいう"積極的なリハビリ"って何?」臨床でよく迷うポイントです。特に病棟リハや急性期の現場では、ベッド上ならOK・起立や歩行だけが危険という誤解が残りがちです。この記事では、中止基準の本質を「負荷量」という視点から整理し、ROM訓練を含む介入判断の考え方をOT・PT向けに解説します。
📋 この記事の目次
アンダーソンの中止基準とは?
リハビリテーション医療では、安全管理のために中止基準が広く用いられています。代表的なのが土肥・アンダーソン基準と、それを発展させた日本リハビリテーション医学会の中止基準です。
日本リハ医学会ガイドラインでは、以下のように「積極的なリハビリを実施しない状態」が定義されています。
| バイタル・症状 | 基準値 | 判断 |
|---|---|---|
| 安静時脈拍 | 40回/分以下 または 120回/分以上 | 積極的リハ中止 |
| 収縮期血圧 | 70mmHg以下 または 200mmHg以上 | 積極的リハ中止 |
| 体温 | 38℃以上 | 積極的リハ中止 |
| SpO2 | 90%以下 | 積極的リハ中止 |
| 安静時胸痛・著明な不整脈 | あり | 積極的リハ中止 |
⚠️ 注意:これらの数値は「今この状態で身体に負荷をかけるのは危険」というラインを示しています。「リハ全体を禁止する」基準ではありません。
「積極的なリハビリ」の本当の意味
ここが臨床で最も誤解されやすいポイントです。
よくある誤解
| 誤解 | 正しい考え方 |
|---|---|
| 積極的リハ=歩行訓練・離床 | 姿勢ではなく負荷量で判断する |
| ベッド上=安全 | ベッド上でも高負荷介入は注意が必要 |
| 起立=危険 | 低負荷な起立訓練は実施可能な場合がある |
🔵 定義:積極的なリハビリ=生体負荷を伴う治療介入
判断軸は以下の総合評価です。
- 循環負荷(心拍・血圧の変動)
- 呼吸負荷(SpO2低下・呼吸数増加)
- 疼痛誘発(VAS変化)
- 交感神経反応(発汗・顔色変化)
- 疲労蓄積(主観的疲労感・倦怠感)
ベッド上ROMは積極的リハに含まれる?
結論は「ケースによる」です。これが最も正確な答えです。内容・目的・負荷量によって判断が変わります。
積極的リハに含まれにくいもの(低負荷)
| 介入内容 | 負荷レベル | 中止基準下での実施 |
|---|---|---|
| 軽い他動ROM(関節保護目的) | 低 | 実施余地あり |
| ポジショニング | 低 | 実施余地あり |
| 軽い触覚・感覚入力 | 低 | 実施余地あり |
| 呼吸介助・排痰支援 | 低〜中 | 症状次第で慎重に |
積極的リハに含まれる可能性があるもの(高負荷)
| 介入内容 | 負荷レベル | 中止基準下での実施 |
|---|---|---|
| 疼痛を伴うROM・強いストレッチ | 高 | 原則中止 |
| 抵抗運動を伴うROM | 高 | 原則中止 |
| 長時間の反復運動 | 高 | 原則中止 |
| 呼吸苦を伴う介入全般 | 高 | 原則中止 |
⚠️ OT・PTへの注意点:「他動だから安全」という思い込みは危険です。他動ROMでも疼痛誘発・循環負荷が生じる介入は「積極的なリハビリ」に該当します。
なぜ「負荷量」で考えるべきなのか
リハビリ中止基準は絶対禁止の規則ではなく、リスク層別化のツールです。医学書院のリハ医学テキストでも、「数値だけで機械的に中止せず、経時変化や症状を総合判断することが重要」とされています。
具体例:SpO2 89%の場合
| 介入内容 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 歩行訓練・階段訓練 | 中止 | 循環・呼吸負荷が高く、SpO2がさらに低下するリスク |
| 起立反復訓練 | 中止 | 交感神経反応・体位変換負荷が大きい |
| ポジショニング調整 | 実施余地あり | 換気改善に寄与する可能性があり負荷低い |
| 呼吸介助・体位排痰 | 慎重に実施 | 状態改善目的で有益だが症状観察が必須 |
| 軽い他動ROM(四肢) | 慎重に実施 | 循環負荷が低ければ廃用予防として実施余地あり |
| 軽い感覚入力(触覚・温度覚) | 実施余地あり | 生体負荷がほとんどなく神経可塑性にアプローチ可能 |
エビデンスからみる低負荷介入の考え方
急性期・ICU領域では、早期リハにおいても負荷量を細かく調整しながら介入することが推奨されています。
🔵 Schweickert et al. (Lancet, 2009)
人工呼吸器管理中の患者においても、適切な管理下での早期離床がADL改善に有効であることを示した。重要なのは「介入するかしないか」ではなく、「どの強度なら安全か」を段階的に判断するアプローチです。
🔵 Needham DM et al. (Arch Phys Med Rehabil, 2008)
ICU患者への早期理学療法・作業療法の導入が筋力・ADLの改善をもたらすことを報告。低負荷介入から段階的に進める重要性が示されています。
この考え方は一般病棟においても同様に適用できます。「中止基準に引っかかったから何もしない」ではなく、「何なら安全にできるか」を考える姿勢が求められます。
臨床での判断チェックリスト
中止基準に近い状態で介入を検討する際、以下の3ステップで確認します。
① 安静時症状の確認
- 息切れ・呼吸困難感はあるか
- 動悸・胸痛の訴えはあるか
- めまい・気分不良はあるか
- バイタルは安定しているか
② 介入中の負荷変化を確認
- 脈拍が著明に増加していないか(+20〜30回/分以上で注意)
- 血圧が急変していないか
- SpO2がさらに低下していないか
- 顔色・発汗・表情に変化がないか
③ 休息後の回復を確認
介入を一時中断して休息させたとき、バイタルや症状が介入前の状態に戻るかを確認します。
- 回復する → 低負荷で継続を検討
- 回復しない → 介入を中止し、主治医・看護師に報告
⚠️ 回復しない場合の行動:リハを中止するだけでなく、必ずチームへの連絡・記録を行ってください。特にSpO2・脈拍・血圧の数値変化と時系列を記録しておくことが重要です。
まとめ
✅ アンダーソンの中止基準における「積極的なリハビリ」のポイント
- 「積極的なリハ」の定義は姿勢(ベッド上・起立など)ではなく負荷量
- ベッド上でも高負荷なら慎重に判断する
- 軽い他動ROM・ポジショニング・感覚入力は低負荷として実施余地がある
- 疼痛誘発・抵抗運動・反復運動は「積極的リハ」に該当しうる
- 判断の軸は「何なら安全にできるか」というリスク層別化の発想
- 介入後の回復の有無が継続判断の重要な指標
中止基準を「数値だけで機械的に適用するルール」として捉えるのではなく、患者の今の状態を動的に評価するツールとして活用することで、現場での判断精度は大きく上がります。
※本記事は一般的な臨床判断の参考情報です。個別症例への適用は、主治医および所属施設の基準に従って判断してください。
参考文献
- 日本リハビリテーション医学会:リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン
- 前田真治. Jpn J Rehabil Med. 2007
- Schweickert WD et al. Early physical and occupational therapy in mechanically ventilated, critically ill patients. Lancet. 2009
- Needham DM et al. Early physical medicine and rehabilitation for patients with acute respiratory failure. Arch Phys Med Rehabil. 2008
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