【保存版】腱板損傷のスペシャルテスト8選|感度・特異度と臨床での解釈

評価・アセスメント

肩関節痛の患者さんを評価するとき、「棘上筋が怪しそうだ」「肩甲下筋損傷の可能性は?」「この筋力低下は疼痛によるものか、腱板断裂によるものか」と判断に迷う場面は少なくありません。そこで用いられるのが腱板損傷のスペシャルテストです。腱板損傷のスペシャルテストにはどんな種類があるのか、感度・特異度はどう読み解けばよいのか、陽性・陰性をどう臨床解釈すればよいのか、順を追って整理します。

本記事は訪問型の自費リハビリを行う作業療法士(OT)が、臨床経験と文献データをもとに解説しています。

腱板損傷に対するスペシャルテストは、「陽性=腱板断裂」と単純に判断できるものではありません。重要なのは、どの腱を評価しているのか、何をもって陽性とするのか、その検査の感度・特異度はどの程度なのか、他の所見と組み合わせてどう解釈するのか、という流れです。この記事では、リハビリ専門職向けに、腱板を構成する棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の代表的なスペシャルテストについて、実施方法から感度・特異度、臨床での解釈まで解説します。

腱板(ローテーターカフ)とは?

腱板(rotator cuff)は、以下の4つの筋から構成されています。

主な作用
棘上筋肩関節外転、上腕骨頭の安定化
棘下筋肩関節外旋
小円筋肩関節外旋
肩甲下筋肩関節内旋

これらの筋は上腕骨頭を取り囲むように走行し、肩関節運動だけでなく、上腕骨頭を関節窩(かんせつか、肩甲骨のくぼみ)へ安定させる重要な役割を担っています。腱板損傷では、損傷した腱によって筋力低下や疼痛、運動障害のパターンが異なるため、腱板損傷のスペシャルテストを使って各腱の状態を評価します。

スペシャルテストで重要な「感度」と「特異度」

スペシャルテストを理解するうえで重要なのが、感度(sensitivity)と特異度(specificity)です。

感度

「実際に損傷がある人のうち、検査が陽性になる割合」です。感度が高い検査は、損傷を見逃しにくいという特徴があります。そのため、感度の高い検査が陰性であれば、疾患の可能性を下げる材料として利用できます。

特異度

「実際に損傷がない人のうち、検査が陰性になる割合」です。特異度が高い検査は、疾患がない人では陽性になりにくいため、特異度の高い検査が陽性であれば、疾患の可能性を高める材料になります。

⚠ 注意点

感度・特異度は対象患者、断裂サイズ、陽性判定の基準、画像診断の基準などによって変化します。数値だけで診断するのではなく、問診・疼痛部位・ROM・筋力・画像所見などと統合して判断することが重要です。

なお、「感度が高い検査は陰性なら除外、特異度が高い検査は陽性なら確定」という考え方はあくまで目安です。実際に検査結果によって疾患確率がどの程度変化するかを考える際には、陽性尤度比(LR+)・陰性尤度比(LR−)も参考になります。

棘上筋のスペシャルテスト

腱板損傷のスペシャルテストの中でも、棘上筋の評価にはJobe(Empty Can)test、Full Can test、Drop Arm testの3つがよく使われます。

① Jobe test(Empty Can test)

主な評価対象:棘上筋。腱板評価の中でも非常によく使用される検査です。

方法

  1. 肩関節を約90°挙上する
  2. 肩甲面上で実施する
  3. 上肢を内旋させ、母指を下方へ向ける
  4. 検者が上から抵抗を加える
  5. 患者にはその位置を保持してもらう

「缶の中身を空にする」ような肢位になることから、Empty Can testと呼ばれます。実施イメージは下の写真の通りです。

Jobe test(Empty Can test)の実施肢位

陽性所見:抵抗に対する筋力低下や疼痛を認めた場合を陽性所見として捉えます。ただし、腱板断裂の評価では特に筋力低下の有無が重要です。研究によって「疼痛」「筋力低下」「疼痛または筋力低下」など陽性基準が異なる点には注意が必要です。

感度・特異度:ROW cohort studyでは、Jobe testによる棘上筋断裂の検出について、感度88%・特異度62%と報告されています。つまり比較的感度が高く、棘上筋病変を拾い上げる検査として使いやすい一方、陽性だからといって棘上筋断裂と断定することはできません。

🔵 臨床での解釈

Jobe testで重要なのは、「痛くて力が入らない」のか「痛みは少ないのに力が入らない」のかを分けて考えることです。疼痛による筋出力低下と、腱板断裂による機能的な筋力低下では意味が異なります。

② Full Can test

主な評価対象:棘上筋。

方法

  1. 肩甲面上で肩関節を約90°挙上
  2. 母指を上方へ向ける
  3. 検者が下方向へ抵抗を加える
  4. 患者にその位置を保持してもらう

Empty Canとは異なり、母指を上へ向けるのが特徴です。実施イメージは下の写真の通りです。

Full Can testの実施肢位

陽性所見:疼痛または筋力低下などを認めた場合に陽性とします。

感度・特異度:ROW cohort studyでは、感度70%・特異度81%でした。Jobe test(感度88%・特異度62%)と比較すると、同研究ではJobe testの方が感度が高く、Full Can testの方が特異度が高い結果でした。

🔵 臨床での解釈

棘上筋を評価するときは、どちらか一つだけではなく、Jobe test+Full Can testとして確認すると、所見を整理しやすくなります。Empty Can肢位では内旋位となるため疼痛が誘発されるケースがあります。Full Can testも併用し、肢位の違いによって疼痛や筋出力がどう変化するかを比較することが有用です。

③ Drop Arm test

主な評価対象:棘上筋を中心とした腱板断裂。特に大きな腱板断裂を疑う際に有名な検査です。

方法

  1. 検者が患者の上肢を他動的に90°程度まで外転させる
  2. 検者が支持を徐々に離し、患者にゆっくり上肢を下ろしてもらう

実施イメージは下の写真の通りです。

Drop Arm testの実施肢位

陽性所見:上肢をゆっくり下ろすことができず、途中で保持できなくなり急に腕が落ちる場合を陽性とします。

感度・特異度:ROW cohort studyでは、感度24%・特異度96%でした。感度が低いため、Drop Arm陰性=腱板断裂なしとはいえません。一方で特異度は非常に高いため、Drop Arm陽性は腱板断裂を強く疑う所見となります。

🔵 臨床での解釈

Drop Arm testは、スクリーニングというよりも、陽性所見の意味が大きい検査として理解するとよいでしょう。

棘下筋・小円筋のスペシャルテスト

後上方腱板にあたる棘下筋・小円筋の評価には、External Rotation Lag SignとHornblower's Signが代表的です。

④ External Rotation Lag Sign(ERLS、外旋ラグサイン)

主な評価対象:棘下筋。

方法

  1. 肘関節を約90°屈曲
  2. 検者が肩関節を他動的に外旋させる
  3. 患者にその位置を保持してもらう
  4. 検者が手を離す

実施イメージは下の写真の通りです。

External Rotation Lag Sign(ERLS)の実施肢位

陽性所見:外旋位を保持できず、上肢が内旋方向へ戻る(lagする)場合を陽性とします。

感度・特異度:0°でのExternal Rotation Lag Signについて、ROW cohort studyでは感度10%・特異度98%でした。非常に特異度が高い検査です。

🔵 臨床での解釈

ERLSもDrop Arm testと同様、陰性だから棘下筋断裂を否定できる検査ではありません。一方、ERLS陽性であれば棘下筋断裂の可能性が高まると考えます。単なる外旋筋力低下だけでなく、外旋位そのものを保持できるかを見ることがポイントです。

⑤ Hornblower's Sign

主な評価対象:小円筋を中心とした後上方腱板。

方法

  1. 肩関節を約90°挙上
  2. 肘関節を90°屈曲
  3. 外旋位をとらせる、または外旋運動を行わせる

実施イメージは下の写真の通りです。

Hornblower's Signの実施肢位

陽性所見:肩関節挙上位で外旋位を保持できず、上肢が内旋方向へ崩れる場合などを陽性とします。

感度・特異度:ROW cohort studyでは、感度17%・特異度96%でした。

🔵 臨床での解釈

感度は低い一方で特異度が高いため、陽性の場合に後上方腱板、とくに小円筋を含む障害を疑う検査として利用できます。ERLSと組み合わせ、上腕下垂位付近での外旋保持と肩関節挙上位での外旋保持を比較することで、後方腱板の機能をより多面的に評価できます。

肩甲下筋のスペシャルテスト

肩甲下筋の評価には、Lift-off test、Belly Press test、Bear Hug testの3つが代表的です。

⑥ Lift-off test

主な評価対象:肩甲下筋。

方法

  1. 患者の手背を腰部に当てる
  2. 手を背中から離すよう指示する

実施イメージは下の写真の通りです。

Lift-off testの実施肢位

陽性所見:手を背中から離せない、左右差が大きい、明らかな筋力低下などを認めた場合に陽性です。

感度・特異度:ROW cohort studyでは、感度22%・特異度94%でした。陽性であれば肩甲下筋損傷を疑いやすい一方、陰性でも肩甲下筋損傷を否定できないタイプの検査です。

⚠ 注意点

Lift-off testでは肩関節の内旋可動域が必要です。肩関節拘縮、疼痛、内旋制限が強い患者では、そもそも検査肢位をとれないことがあります。その場合には、Belly Press testなど別の検査を検討します。

⑦ Belly Press test

主な評価対象:肩甲下筋。

方法

  1. 手掌を腹部に当てる
  2. 腹部を押してもらう
  3. 肘の位置や手関節の代償を観察する

実施イメージは下の写真の通りです。

Belly Press testの実施肢位

陽性所見:腹部を押した際に肩関節内旋を十分に保持できず、肘が後方へ移動する、肩関節外旋・伸展や肩甲帯前傾などの代償がみられる場合を陽性所見として捉えます。また、手関節屈曲による代償がみられることもあります。

感度・特異度:ROW cohort studyでは、感度28%・特異度87%でした。

🔵 臨床でのポイント

Belly Press testの利点は、Lift-off testの肢位をとりにくい患者にも使用しやすいことです。肩関節内旋制限があってLift-offが実施困難な場合、Belly Pressで確認するという使い分けができます。

⑧ Bear Hug test

主な評価対象:肩甲下筋。比較的新しい肩甲下筋評価として知られています。

方法

  1. 評価側の手掌を反対側の肩に置く
  2. 「自分を抱きしめる」ような姿勢をとる
  3. 検者が患者の手を肩から離す方向へ力を加える
  4. 患者には手を肩につけたまま保持してもらう

実施イメージは下の写真の通りです。

Bear Hug testの実施肢位

陽性所見:検者の力に抵抗できず、手が反対側の肩から離れてしまう場合などを陽性とします。

感度・特異度:ROW cohort studyでは、感度32%・特異度81%でした。

⚠ 注意点

肩甲下筋テストについては研究による数値の違いがあります。2021年のシステマティックレビュー・メタ解析では、Bear Hug、Belly Press、Internal Rotation Lag Sign、Lift-offのいずれも、統合特異度は90%を超える一方、統合感度は60%未満でした。つまり肩甲下筋損傷については、単一のスペシャルテストだけで判断するのは難しいと考える必要があります。

腱板スペシャルテストの感度・特異度まとめ

ROW cohort studyの結果をまとめると以下のようになります。

テスト主な対象感度特異度
Jobe / Empty Can棘上筋88%62%
Full Can棘上筋70%81%
Drop Arm棘上筋・腱板24%96%
ER Lag Sign 0°棘下筋10%98%
Hornblower's Sign後上方腱板17%96%
Lift-off肩甲下筋22%94%
Belly Press肩甲下筋28%87%
Bear Hug肩甲下筋32%81%

※数値はJainらのROW cohort studyによる値です。感度・特異度は研究対象、断裂サイズ、陽性基準などによって変化するため、絶対的な数値ではない点にご留意ください。

グループ別の感度・特異度を図でも整理すると、以下の通りです。

腱板損傷スペシャルテスト8種の感度・特異度一覧図

「陽性・陰性」だけでなく組み合わせて考える

腱板損傷のスペシャルテストで最も注意したいのが、「陽性=その筋が断裂している」と短絡的に考えてしまうことです。実際には、疼痛、関節可動域制限、筋力低下、神経障害、患者の理解力、代償運動などによって結果が変化します。さらにシステマティックレビューでも、単独の臨床テストによる腱板病変の診断精度には限界があることが指摘されています。

📋 スペシャルテストを解釈するときの考え方
  1. 問診
  2. 自動・他動ROM
  3. 筋力評価
  4. スペシャルテスト
  5. 複数の身体所見を統合
  6. 必要に応じて画像所見・医師の診断と照合

このように情報を段階的に統合して考えることが、腱板損傷のスペシャルテストを臨床で活かすうえで重要です。

臨床では「疼痛」と「筋力低下」を分けてみる

リハビリ職がスペシャルテストを行う際には、単純な陽性・陰性以上に、なぜ陽性になったのかを見ることが重要です。たとえばEmpty Can testで力が入らない場合でも、以下のようなパターンが考えられます。

パターン①:疼痛が強い+筋力低下

疼痛による筋出力抑制が影響している可能性があります。

パターン②:疼痛は少ない+著明な筋力低下

腱板断裂などによって、筋力を発揮できていない可能性をより考えます。

さらに、他動ROMは保たれているのに自動挙上できないといった所見が加われば、より慎重な評価が必要です。スペシャルテストは単なる「○か×か」ではなく、疼痛・筋力・可動域・代償運動を観察する評価場面として活用すると臨床的な情報量が増えます。

セラピストが押さえておきたい5つのポイント

🔵 ① 1つのテストだけで判断しない

スペシャルテスト単独で腱板断裂を確定・除外することは困難です。

🔵 ② 感度と特異度を理解する

感度が高い検査と特異度が高い検査では、陽性・陰性の意味が異なります。

🔵 ③ 疼痛と筋力低下を区別する

「痛くて力が出ない」のか「腱板機能が低下して力が出ない」のかを考えます。

🔵 ④ 代償動作を見る

肩甲骨挙上、体幹側屈、肘の位置、手関節運動などにも重要な情報があります。

🔵 ⑤ 問診・ROM・筋力・画像所見と統合する

スペシャルテストは診断そのものではなく、臨床推論を補助する情報の一つとして利用します。

よくある質問(FAQ)

感度と特異度は、結局どちらを重視すればよいですか?
見逃しを減らす目的では比較的感度の高い検査(Jobe testなど)を参考にし、疾患の可能性を高めたい場面では特異度の高い検査(Drop Arm test、ERLSなど)を参考にします。ただし、いずれも単独で確定・除外するものではありません。
腱板損傷のスペシャルテストが陰性なら、腱板断裂は否定できますか?
腱板損傷のスペシャルテストには感度が十分に高くないものも多く、単一テストの陰性所見だけで腱板断裂を否定することはできません。陰性所見は他の評価と合わせて総合的に判断する材料の一つと考えます。
Jobe testとFull Can testはどちらを優先すべきですか?
Empty CanとFull Canの両方を実施し、肢位による疼痛や筋出力の違いを比較することで所見を整理しやすくなります。
肩関節の可動域制限が強い患者にはどのテストが適していますか?
Lift-off testは内旋可動域を要するため実施が難しいことがあります。その場合はBelly Press testなど、より小さい可動域で実施できるテストが選択肢になります。
肩甲下筋のテストで最も精度が高いものはどれですか?
単独で腱板損傷を高精度に判定できるテストはありません。Bear Hug、Belly Press、Lift-offなどは、研究によって診断精度に幅があります。特に感度は十分に高くないため、単一テストの陰性だけで肩甲下筋損傷を否定せず、複数の所見を組み合わせて評価することが重要です。
スペシャルテスト陽性の場合、リハビリ職としてどう対応すればよいですか?
スペシャルテストの結果のみで介入方針を決めるのではなく、医師の診断や画像所見と合わせて多職種で情報を共有し、必要に応じて医師への相談・再評価につなげることが望まれます。
振り返りポイント
  • 感度と特異度の意味
  • 棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋、それぞれの代表的テスト
  • 陽性・陰性の解釈は検査ごとに異なる
  • 疼痛と筋力低下の区別
  • 単独のテストで断定しない姿勢
  • 問診・ROM・画像所見との統合

まとめ

腱板損傷では、損傷が疑われる腱に応じてスペシャルテストを使い分けます。棘上筋ではJobe(Empty Can)test、Full Can test、Drop Arm test、棘下筋・小円筋ではExternal Rotation Lag Sign、Hornblower's Sign、肩甲下筋ではLift-off test、Belly Press test、Bear Hug testなどが代表的です。

特に重要なのは、テストによって感度・特異度が大きく異なることです。たとえばDrop Arm testやExternal Rotation Lag Signは特異度が高いため、陽性であれば腱板断裂を疑う重要な所見となりますが、感度が低いため、陰性だけでは断裂を除外できません。一方、Jobe testは比較的感度が高く、棘上筋病変を拾い上げる際に利用しやすい検査です。

腱板損傷のスペシャルテストを「陽性・陰性」で終わらせず、どこが痛いのか、どの方向で力が入らないのか、どの肢位を保持できないのか、どのような代償が出るのかまで観察することで、評価はより臨床的なものになります。年齢のせいや一時的な痛みと決めつけず、疑わしい所見があれば医師や他職種と連携して評価を進めることが大切です。

参考文献
  1. Jain NB, et al. The Diagnostic Accuracy of Special Tests for Rotator Cuff Tear: The ROW Cohort Study. Am J Phys Med Rehabil. 2017;96(3):176-183.
  2. Gismervik SØ, et al. Physical examination tests of the shoulder: a systematic review and meta-analysis of diagnostic test performance. BMC Musculoskelet Disord. 2017.
  3. Lädermann A, et al. Diagnostic Accuracy of Clinical Tests for Subscapularis Tears: A Systematic Review and Meta-analysis. Orthop J Sports Med. 2021.

※本記事は医療従事者・リハビリテーション専門職向けの参考情報であり、診断の代替とはなりません。実際の診断には医師による診察やMRI・超音波検査などを含めた総合的な評価が必要です。

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