上腕外側が痛い原因は肩?腱板・滑液包と関連痛の仕組みをOTが解説

肩・上肢の痛み
上腕外側の痛みを訴えている男性のイラスト

「肩が悪いと言われたのに、なぜか痛いのは二の腕の外側」——そんな違和感を訴える患者さんは少なくありません。実は肩関節由来の痛みが、肩そのものではなく上腕外側に現れることがあり、その一つが「関連痛」です。この記事では、肩関節の問題がなぜ上腕外側の痛みとして現れるのか、そのメカニズムと、痛む場所だけで原因を決めつけない評価の考え方を、訪問型の自費リハビリを行う作業療法士が解説します。上腕外側の痛みはなぜ起こるのか、肩と上腕の痛みはどう見分けるのか、気になる方はぜひ参考にしてください。

🔍 肩由来を疑うヒント

  • 腕を挙げる途中で上腕外側が痛む
  • 抵抗をかけて腕を挙げる・ひねると痛む
  • 夜間に肩〜上腕にかけて痛む
  • 上腕を押しても、明確な痛みの発生源が分からない
  • 肩関節の動きによって上腕の痛み方が変化する

ただし、これらの特徴だけで腱板や滑液包の障害を確定することはできません。あくまで「肩関節も評価対象に含めるべきサイン」として捉えてください。

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この記事の執筆者:作業療法士として病院・訪問リハビリの現場で肩関節疾患を含む上肢の痛みに携わってきた経験をもとに、訪問型の自費リハビリ「Home Reha 福岡」の視点で解説しています。

上腕外側の痛みとは?関連痛の基本を知る

関連痛(かんれんつう/referred pain)とは、痛みの発生源とは異なる場所に痛みを感じる現象です。例えば、肩関節周囲の腱や滑液包などから生じた侵害受容入力が、上腕外側の痛みとして知覚されることがあります。

  • 肩関節周囲の組織(腱板・滑液包など)に問題が生じている
  • にもかかわらず、症状は二の腕(上腕)の外側に現れる
  • そのため本人も周囲も「肩ではなく腕の問題」と誤解しやすい

この現象を知らないまま評価を進めると、次のようなことが起こり得ます。

  • 痛みを訴える上腕外側の筋肉や皮膚だけに注目してしまう
  • 本来評価すべき肩関節や腱板の状態が見落とされる
  • 疼痛源の推定や適切な対応が遅れる可能性がある

📌 評価時に注意したいポイント

① 患者さんが「上腕外側が痛い」と訴える
② 痛む場所(上腕)だけを重点的に評価してしまうことがある
③ 疼痛源となり得る肩関節周囲組織の評価が後回しになりやすい
④ 疼痛源の推定や介入方針の決定が遅れる可能性がある

💡 評価で意識したい3つの視点

  • 痛みの「場所」と「原因組織」は別物として考える
  • 上腕だけでなく、肩関節・肩甲骨・頸椎まで含めて評価する
  • 一度の評価で決めつけず、経過を見ながら再評価する

上腕外側が痛くなる主な原因

上腕外側の痛みを認める場合、肩関節由来だけでなく、頸椎・神経由来の症状も含めて考える必要があります。代表的な原因として、次のようなものが挙げられます。

  • 腱板関連肩痛(腱板周囲の組織が関係すると考えられる肩の痛み。腱板症など)
  • 腱板断裂
  • 肩峰下・三角筋下滑液包の炎症・刺激
  • 石灰沈着性腱炎
  • 肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)
  • 頸椎症性神経根症
  • 頸椎椎間板ヘルニア

特に肩関節由来の痛みでは、障害部位そのものではなく、肩から上腕にかけて痛みを感じることがあります。

原因痛みの出やすい場面対応の方向性
腱板関連肩痛挙上・結帯・負荷動作問診・身体所見を中心に評価+段階的な運動療法
腱板断裂挙上時痛、筋力低下など医療機関で評価し、必要に応じて画像検査
肩峰下滑液包の炎症・刺激挙上時痛、Painful Arc、夜間痛など症状に応じた活動調整・運動療法
石灰沈着性腱炎安静時にも強い痛みが出ることがある医療機関での評価が優先
肩関節周囲炎(五十肩)可動域全体の制限を伴う時期に応じた運動療法
頸椎症性神経根症首を反らす・回すと悪化、しびれを伴う頸椎の評価を含めた鑑別が必要

なぜ肩が原因なのに上腕外側が痛むのか

肩関節周囲には、肩甲上神経・腋窩神経・外側胸筋神経など複数の神経から感覚枝が分布しています。棘上筋腱や肩峰下滑液包などの深部組織に炎症や機械的刺激が加わると、その侵害受容情報(組織への刺激や損傷に関連して生じる神経信号)は末梢神経を介して中枢神経系へ伝えられます。

しかし、脳がその信号の「発生源」を常に正確に特定できるとは限りません。これを説明する代表的な考え方の一つが「収束投射説(しゅうそくとうしゃせつ/convergence-projection theory)」です。異なる末梢組織からの感覚入力が、脊髄後角などで同じ、あるいは近接したニューロンへ収束することで、中枢神経系が痛みの発生源を正確に特定しにくくなり、実際の刺激部位とは異なる場所に痛みを感じることがあると考えられています。

🔄 関連痛が生じるまでの流れ

① 肩関節周囲組織に炎症・機械的刺激が生じる
② 侵害受容情報が発生する
③ 末梢神経を介して中枢神経系へ情報が送られる
④ 脊髄後角などで複数の感覚入力が近接して処理される
⑤ 痛みの発生源の局在が曖昧になる
⑥ 肩ではなく上腕外側に痛みとして感じられる

この一連の流れを図にすると、下のようになります。

肩関節由来の痛みが上腕外側の関連痛として現れるメカニズムの図解
肩関節周囲組織の炎症・刺激が、関連痛として上腕外側に現れるまでの流れ

実際、肩関節内へ局所麻酔を注射して痛みを完全に消失させた患者さんを調べた研究では、肩関節から生じる痛みは肩だけに限局せず、上腕部まで広がって分布することが報告されています。また、腱板断裂などの肩疾患でも、肩から上腕へ広がる疼痛パターンが報告されています。

🩺 臨床ではこう考える

「患者さんが痛いと指した場所=損傷している組織」とは限りません。上腕外側の訴えがあっても、まず肩関節周囲(腱板・滑液包)を評価対象から外さないことが重要です。

肩峰下滑液包は「ただのクッション」ではない

上腕外側痛を考えるうえで、もう一つ重要なのが肩峰下・三角筋下滑液包(けんぽうか・さんかくきんか かつえきほう:腱板と肩峰・三角筋の間にあり、肩の動きを滑らかにする袋状の組織)です。組織学的研究では、肩峰下滑液包に自由神経終末(じゆうしんけいしゅうまつ:痛みを感知するセンサーの一種)や、痛みの伝達に関係するSubstance P・CGRPを含む神経線維などが確認されています。

つまり、滑液包は単なるクッションではなく、痛みの発生に関与し得る組織です。腱板や上腕二頭筋腱などと比較して、滑液包に豊富な自由神経線維が認められたとの報告もあり(Ide et al. 1996; Soifer et al. 1996)、ここに炎症や機械的刺激が生じれば、肩周囲だけでなく上腕部に痛みを感じる可能性があります。

⚠️ 注意したいポイント

滑液包由来の痛みは、動かし方や姿勢の影響を受けやすい一方で、安静時にも痛みが続く場合や夜間痛が強い場合は、他の原因(石灰沈着性腱炎など)が隠れていることもあるため、自己判断せず評価を受けることをおすすめします。

「上腕外側が痛い=棘上筋」とは限らない

患者さんが上腕外側を指しているからといって、「上腕外側痛=棘上筋腱障害」と1対1で結びつけることはできません。肩疾患の疼痛分布を調べた研究では、腱板断裂などで上腕方向へ痛みが広がる傾向が報告されています。一方で、疼痛分布だけから原因となる肩疾患を正確に判別することは難しいことも示されています(Bayam et al. 2017)。

そのため、上腕外側痛を評価する際は、以下のような項目を個別に確認したうえで組み合わせて判断する必要があります。

個別に確認すべき評価項目

  • 自動・他動ROM(関節可動域):自分で動かせる範囲と、他者が動かした場合の範囲の違いを見る
  • Painful Arc(有痛弧:腕を挙げる途中の特定の角度でのみ痛みが強まる現象)の有無
  • 抵抗下外転・外旋テスト:力を入れた状態での痛みや筋力低下の有無
  • 腱板関連の徒手テスト
  • 頸椎の可動域・動作時の症状変化
  • 感覚・筋力・腱反射:しびれや脱力を伴う場合は神経の関与を疑う

🩺 頸椎の関与を疑うときの補助検査

しびれや筋力低下を伴う場合は、頸椎神経根症も鑑別対象になります。Spurling test(首を痛む側へ傾け、上から圧を加えて症状の再現を見るテスト)については、2025年のメタ解析で特異度0.92・感度0.53と報告されています。陽性所見は参考になりますが、陰性だからといって頸椎神経根症を単独で否定できる検査ではない点に注意が必要です。

このように、痛みの場所は臨床推論のヒントにはなりますが、それだけで原因組織を特定することはできません。ROM・有痛弧・抵抗下テスト・頸椎の評価・感覚神経学的所見を組み合わせて、総合的に判断することが重要です。

評価の流れ

🔄 上腕外側痛が疑われたときの評価の流れ

① 問診:痛みの出方・きっかけ・しびれの有無を確認
② 肩関節のROM・Painful Arc・抵抗下テストを確認
③ 頸椎の動きと神経学的所見(感覚・筋力・腱反射)を確認
④ 必要に応じて画像検査(エコー・MRI等)を検討
⑤ 医師・理学療法士・作業療法士など多職種で所見を共有し、方針を決定

自分は当てはまる?セルフチェック

✅ 上腕外側の痛みで気にしておきたいサイン

  • 腕を挙げていく途中の、ある角度だけで痛みが強くなる
  • 夜、痛む側を下にすると痛みで目が覚める
  • 力を入れて腕を外側に開く・ひねると痛みが強まる
  • 首を反らしたり回したりすると、腕の痛みやしびれが強くなる
  • 指先や前腕までしびれ・力の入りにくさを感じる
  • 安静にしていても痛みが続く、または徐々に強くなっている

複数当てはまる場合や、しびれ・脱力を伴う場合は、自己判断で様子を見続けず、早めに医療機関や専門職に相談することをおすすめします。

振り返りポイント

📝 この記事の振り返り

  • 痛い場所=原因組織とは限らない
  • 関連痛は肩から上腕へ広がることがある
  • 肩峰下滑液包も痛みの発生源になり得る
  • 痛みの場所だけで棘上筋と決めつけない
  • 頸椎の関与も忘れずに確認する
  • 評価は複数の項目を組み合わせて総合的に行う

まとめ

肩関節周囲に問題があるにもかかわらず、上腕外側に痛みを感じることは珍しくありません。腱板や肩峰下滑液包などから生じた侵害受容情報は中枢神経系で処理されるため、実際の疼痛源とは異なる場所に痛みを知覚する「関連痛」が生じることがあります。もし「肩じゃなくて、ここが痛い」と上腕外側を指すことがあっても、三角筋や上腕そのものだけを評価するのではなく、腱板・肩峰下滑液包・肩関節・頸椎まで含めて疼痛源を考えることが大切です。

特に覚えておきたいのは、「痛い場所」と「痛みの原因となっている場所」は必ずしも一致しないということです。年齢や使いすぎのせいと決めつけず、症状が続く場合や悪化する場合は、早めに医師やリハビリ専門職に相談してください。

よくある質問

Q. 上腕外側の痛みは自然に治りますか?

A. 原因や程度によって経過は異なります。軽い滑液包の炎症であれば安静や使い方の見直しで軽快することもありますが、腱板断裂や頸椎の問題が背景にある場合は、自然経過だけでは改善しにくいこともあります。長引く場合は評価を受けることをおすすめします。

Q. 湿布や市販の鎮痛薬で対応してもよいですか?

A. 一時的な症状緩和として選択肢になることがあります。ただし、痛みが続く場合は、肩への負荷や関節機能、腱板・頸椎など症状に関係する要因を評価する必要があります。自己対応を続けず、医療機関の受診を検討してください。

Q. 整形外科と整骨院、どちらに行けばよいですか?

A. 画像検査による原因の特定や、しびれ・脱力を伴う場合の神経学的評価が必要なケースでは、まず整形外科での評価が優先されます。

Q. 痛みが上腕だけで、肩自体は動かせる場合も注意が必要ですか?

A. はい。肩の動き自体に大きな制限がなくても、関連痛として上腕に症状が出ているケースはあります。動かせることと、組織に問題がないことは同じではありません。

Q. 上腕外側痛と五十肩は関係がありますか?

A. 肩関節周囲炎(五十肩)でも関連痛として上腕に症状が広がることがあります。ただし可動域制限の出方など特徴が異なるため、他の原因との鑑別が必要です。

Q. 補助的にストレッチや運動をしてもよいですか?

A. 原因によって適切な運動内容は異なり、時期を誤ると症状が悪化することもあります。自己流で進める前に、専門職の評価を受けたうえで内容を決めることをおすすめします。

Q. しびれがある場合は何を疑いますか?

A. しびれを伴う場合は、頸椎神経根症など神経の関与が疑われます。感覚・筋力・腱反射の評価を含めた鑑別が必要です。

Q. 夜だけ痛みが強くなるのはなぜですか?

A. 腱板関連肩痛や肩峰下滑液包の炎症では、夜間痛を認めることがあります。患側を下にした姿勢などで痛みが増悪する場合もありますが、夜間痛だけで原因組織を特定することはできません。

Q. 何度も繰り返し痛くなるのはなぜですか?

A. 肩への負荷や動作、可動域・筋力など症状に関係する要因が残っていると、同じ動作や負荷によって痛みを繰り返すことがあります。再発を繰り返す場合は、痛む場所だけでなく、肩の機能や日常生活での負荷まで含めて評価することが大切です。

Q. どのタイミングで受診すべきですか?

A. 安静時にも痛みが続く、しびれや脱力を伴う、日常生活に支障が出ている、といった場合は早めの受診をおすすめします。

参考文献

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  • Ide K, Shirai Y, Ito H, Ito H. Sensory Nerve Supply in the Human Subacromial Bursa. J Shoulder Elbow Surg. 1996;5(5):371-382.
  • Soifer TB, Levy HJ, Soifer FM, Kleinbart F, Vigorita V, Bryk E. Neurohistology of the Subacromial Space. Arthroscopy. 1996;12(2):182-186.
  • Bayam L, Arumilli R, Horsley I, Bayam F, Herrington L, Funk L. Testing Shoulder Pain Mapping. Pain Med. 2017;18(7):1382-1393.

本記事は参考情報であり、診断の代替にはなりません。症状がある場合は医療機関を受診してください。

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