アルツハイマー型認知症・MCIは「炎症」が原因だった?最新研究をわかりやすく解説
アルツハイマー型認知症・MCIは
「炎症」が原因だった?
最新研究をわかりやすく解説
鹿児島のある医師が、認知症の原因を「脳の炎症」と捉えて治療したところ、認知機能が回復した患者さんが現れたという研究結果が、国際的な医学誌に発表されました。
この記事では、その内容をできるだけわかりやすく解説します。
1そもそも認知症ってどういう病気?
認知症とは、脳の神経細胞が少しずつ壊れていき、記憶・判断・言語などの機能が低下していく病気です。最も多いのがアルツハイマー型認知症で、認知症全体の約6〜7割を占めています。
また、認知症の一歩手前の状態をMCI(軽度認知障害)といいます。MCIの段階では日常生活はまだ自立できているものの、記憶力などが同年代より低下している状態です。
パソコンにたとえると、アルツハイマー型認知症は「OSが少しずつ壊れていく状態」。これまでは「修理不可能」とされていましたが、今回の研究は「原因さえわかれば回復できるかもしれない」という可能性を示しています。
2これまでの「原因説」と今回の違い
▶ 従来の主流説「アミロイドβ仮説」
これまで医学界では、脳にアミロイドβ(タンパク質のかたまり)が溜まることが認知症の原因だと考えられてきました。製薬各社もこれを除去する薬の開発に巨額を投じてきました。
▶ 今回の研究「脳炎症仮説」
鹿児島市の霜出義輝(しもいでよしてる)医師は「アミロイドβが原因ではなく、脳の慢性的な炎症こそが認知症を引き起こしている」と主張しています。
炎症とは、体が細菌やウイルスなどの外敵から身を守るために起こす免疫反応です。皮膚が赤く腫れたり、傷が熱を持つのも炎症の一種。
この炎症が脳の中で慢性的に続くと、神経細胞が少しずつダメージを受け、認知機能が低下するというのが今回の考え方です。
3研究の内容
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 研究者 | 霜出義輝医師(鹿児島市・内科クリニック院長/免疫学者) |
| 対象患者 | アルツハイマー型認知症・MCI患者 77名 |
| 治療内容 | 漢方薬由来の薬剤「RO-8」を投与(平均約948日・約2年半) |
| 評価方法 | HDS-R(長谷川式認知症スケール)で認知機能を経過観察 |
| 結果 | 炎症を抑えることで、認知機能の改善が確認された |
| 掲載誌 | Current Traditional Medicine(査読付き国際医学ジャーナル、2025年7月号) |
RO-8は免疫細胞の一種「マクロファージ」に働きかけます。
炎症を起こす攻撃型(M1型)を、炎症を抑える修復型(M2型)へと切り替えることで、脳内の慢性炎症を鎮め、神経細胞へのダメージを減らすとされています。
この研究の背景には、2015年にイギリスの権威ある医学誌「The Lancet」に掲載された「脳炎症仮説」があります。今回の研究はその仮説を、実際の患者データで初めて臨床的に裏付けたと主張するものです。
また、この成果が国際的に注目され、2026年7月に米国ボストンで開催される神経疾患の国際学会(NDS-2026)への招待講演が決定しています。
4研究の流れ(ステップで理解)
5読むときに気をつけたいポイント
この研究は非常に興味深い内容ですが、「認知症が治せるようになった!」と単純に受け取るのは時期尚早です。以下の点を踏まえて、冷静に判断することが大切です。
- 比較対照がない:治療を受けなかったグループ(対照群)がないため、「薬のおかげで改善した」と断言するのが難しい
- 1つのクリニックのデータ:77名・単施設のみのデータで、別の医療機関での再現性がまだ確認されていない
- 掲載誌の規模:査読付きではあるが、LancetやNature Medicineなどトップジャーナルには及ばない
- 利益相反の可能性:RO-8は研究者自身が特許を持つ製品であり、商業的な利益と研究が絡んでいる
- 「世界初の臨床的証明」という表現:プレスリリース由来の強い主張であり、医学界のコンセンサスとは言えない段階
「脳の炎症が認知症に関わっている」という方向性は、世界の神経科学でも注目されている分野です。ただし、今回の研究だけで「治療法が確立された」とは言えません。今後の大規模な検証研究を待つ必要があります。
📋 この記事のまとめ
- 鹿児島の霜出医師が「アルツハイマー型認知症の原因は脳の炎症」と主張する研究を国際誌に発表した
- 炎症を抑える漢方由来薬(RO-8)を77名に投与し、認知機能の改善を確認したと報告
- 2025年7月号の国際誌に掲載され、米国ボストンの国際学会への招待講演も決定
- ただし単施設・対照群なし・研究者が特許保持者という点から、独立した検証がまだ必要
- 「脳炎症仮説」は研究の方向性として注目に値するが、現時点では確立した治療法とは言えない








