【OT監修】心不全のリハビリ完全ガイド|ステージ分類・NYHA分類・運動方法を図解で解説

心疾患リハビリ

心不全と診断されると、「運動しても大丈夫?」「安静にした方がいい?」と不安になる方は少なくありません。

しかし現在では、病状に合わせた適切な運動療法(心臓リハビリテーション)が、運動能力や生活の質(QOL)の改善だけでなく、再入院の予防にも役立つことが報告されています。

この記事では、心不全の重症度分類やリハビリの進め方を、作業療法士が図解を交えて分かりやすく解説します。

🩺 この記事は訪問型の自費リハビリ「Home Reha 福岡」の作業療法士が、臨床での関わりをもとに監修しています。

心不全とは?

心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身へ十分な血液を送り出せなくなった状態です。特定の病名ではなく、さまざまな心臓病の結果として起こる「状態」を指します。

結論

心不全は「動かない方が安全」ではなく、重症度に応じた運動を続ける方が、体力の維持や再入院予防につながることが分かっています。まずはご自身の状態(ステージ・NYHA分類)を知ることが第一歩です。

代表的な症状

もっとも多く見られる症状は息切れで、次いで疲れやすさ、むくみが続きます。

  • 息切れ(最も多い症状)
  • 疲れやすい
  • むくみ
  • 動悸
  • 運動耐容能の低下

心不全の主な原因

心不全は単独の病気ではなく、次のような心臓病の結果として起こることが多いとされています。

  • 高血圧
  • 心筋梗塞
  • 弁膜症
  • 心筋症
  • 不整脈

心不全になると何が起こる?

心臓のポンプ機能が低下すると、次のようなことが起こります。

  • 酸素が全身へ届きにくくなる
  • 筋肉が衰える
  • 体内に水分がたまりやすくなる(むくみ)
  • 少し動いただけで息切れするようになる

心臓のポンプ機能が低下すると、全身へ十分な血液が送れなくなります。その結果、筋力低下や息切れが起こりやすくなり、さらに体内に水分がたまることで「むくみ」や「肺うっ血」が生じます。

心不全の悪循環

  1. 心機能低下
  2. 息切れ増加
  3. 運動量低下
  4. 筋力低下
  5. さらに息切れ悪化
  6. さらに動けなくなる
だから運動が必要

この悪循環を断ち切るために行うのが心臓リハビリです。運動療法・筋力トレーニング・生活習慣の改善を組み合わせることで、心機能低下から始まる負のサイクルに歯止めをかけます。

心臓リハビリとは?

心臓リハビリとは、運動療法・栄養指導・服薬管理・生活指導・再発予防教育を組み合わせた包括的な治療プログラムです。

心臓リハビリの目的

  • 運動能力を改善する
  • 息切れを減らす
  • 再入院を防ぐ
  • 日常生活を送りやすくする
  • QOL(生活の質)を向上させる

心臓リハビリがもたらす流れ

  1. 心臓リハビリ
  2. 運動療法・栄養・生活指導
  3. 身体機能改善
  4. 運動耐容能向上
  5. 息切れ軽減
  6. 再入院予防
OTポイント

心臓リハビリは「運動する」こと自体が目的ではありません。上記の目的を達成するために「安全に運動できる身体をつくる」ことが本来のねらいです。

心不全リハビリはいつから始める?

心不全のリハビリは、症状が落ち着いた段階から少しずつ始められることが多く、時期によって内容が異なります。

  • 急性期:症状が不安定な時期で、医療者の管理下で座位保持や軽い離床から始めます。
  • 回復期:症状が安定してきた段階で、病棟内歩行や有酸素運動を少しずつ増やしていきます。
  • 退院後:日常生活に戻りながら、ウォーキングなどの運動を継続し、体重・症状のチェックを習慣化していく時期です。

心不全のステージ分類(A〜D)

心不全ステージ分類A〜D
ポイント

ステージ分類は「病気の進行度」を表すものです。一度進んだステージは、基本的にもとには戻りません。

ステージA

危険因子のみ

予防が目的

ステージB

心臓病あり・症状なし

発症予防が目的

ステージC

症状あり

リハビリ開始の中心

ステージD

難治性心不全

QOL維持が中心

NYHA分類(心機能分類)

NYHA分類(ニューヨーク心臓協会分類)とは、自覚症状の程度によって心機能をⅠ〜Ⅳの4段階に分ける評価法です。

NYHA分類ⅠからⅣ
NYHA分類の特徴

NYHA分類は、治療や運動療法によって症状が改善すると、Ⅲ→Ⅱ、Ⅱ→Ⅰのように良い方向へ変わることがあります。つまりNYHA分類は、治療効果を見る分類でもあります。

ステージ分類との違い

項目ステージ分類NYHA分類
見ているもの病気の進行度現在の自覚症状
変化のしやすさ基本的に不可逆(A→Dへ進行)治療により改善することもある
表記A〜DⅠ〜Ⅳ

NYHA分類別のリハビリ

NYHA Ⅰ

日常生活で症状がほとんど出ない段階です。1回20〜30分程度のウォーキングや軽い筋力トレーニングを、週3〜5回を目安に行います。過度な息切れが出ないペースを守ることが注意点です。

Borg 11〜13程度を目安に行います。

NYHA Ⅱ

強い活動で症状が出やすくなる段階です。有酸素運動を中心に、1回15〜20分・週3回程度から開始し、会話ができるペースを保つことが大切です。

会話できる程度の強さ(Borg 11〜13)を維持します。

NYHA Ⅲ

軽い活動でも症状が出やすい段階です。短時間の運動とADL(着替え・入浴などの動作)練習を中心に、休憩を挟みながら少しずつ行います。

NYHA Ⅳ

安静時にも症状が出る段階です。離床や関節可動域練習、呼吸練習が中心となり、医療者の管理下で慎重に進める必要があります。

CPX(心肺運動負荷試験)とは?

CPX(心肺運動負荷試験)とは、運動しながら呼気ガスを分析し、心臓と肺がどこまで運動に対応できるかを調べる検査です。

CPX心肺運動負荷試験

CPXで分かること

項目分かること
Peak VO₂
(最大体力)
体力の目安
AT
(息が上がり始めるポイント)
疲れ始める境目
VE/VCO₂ slope呼吸効率
RER十分頑張れたか
OTポイント

CPXは「どれくらい運動できるか」だけでなく、「なぜ息切れが起こるのか」まで明らかにできる検査とされています。

Borgスケール(自覚的運動強度)

Borgスケールとは、運動中の「きつさ」を6〜20の数字で自己申告する主観的な運動強度の指標です。

Borgスケール自覚的運動強度

Borgスケール 11〜13

= ややきつい = 隣の人と会話できる程度

このため、心不全患者さんでは「数字」ではなく「会話できる程度」を覚えておくと便利です。

評価の考え方

心不全リハビリの評価の流れ

  1. NYHA分類で現在の自覚症状を確認
  2. CPX(心肺運動負荷試験)で運動耐容能を客観的に測定
  3. Borgスケールで運動中の主観的なきつさを確認

この3つを組み合わせることで、「安全」かつ「効果的」な運動強度が決まります。

心不全患者におすすめの運動

この順番で始めましょう

  1. ウォーキング
  2. カーフレイズ
  3. 椅子スクワット
  4. エルゴメーター

画像を参考に、その日の体調に合わせて無理なく行いましょう。

どの運動も、必ずBorgスケール11〜13を超えない範囲で行い、体調に応じて医師・理学療法士・作業療法士に相談しながら進めることが大切です。

心不全で避けるべき運動

心不全で避けるべき運動
  • 全力疾走 → 血圧上昇
  • 高重量の筋力トレーニング → 息こらえ
  • 息こらえを伴う動作 → 血圧変動
  • 真夏・真冬の運動 → 血管の急な収縮・拡張
  • 長時間の運動 → 疲労蓄積

これらの運動は急激な血圧変動や心臓への負担を増やし、心不全の増悪につながる可能性があります。

運動を中止すべきサイン

  • 強い息切れ
  • 胸痛
  • 冷汗
  • めまい
  • 不整脈(脈の乱れ)
  • 急激な体重増加
  • むくみの悪化

これらのサインが出た場合は運動を中止し、症状が続く場合は速やかに医療機関に相談してください。

心不全患者が毎日チェックしたいこと

  • 体重
  • 息切れ
  • むくみ
  • 血圧
  • 脈拍
  • 昨日より息苦しくないか
  • 靴下の跡が残らないか
  • 夜間息苦しくないか

数日で体重が2kg以上増えた場合は、早めに医療機関へ相談してください。

心不全リハビリでよく使われる評価

評価何を見る検査か
6分間歩行試験歩ける距離を測定 → 運動耐容能評価
握力握る力を測定 → 全身筋力の目安
SPPBバランス・歩行・立ち上がりを測定 → 身体機能の総合評価
TUG立ち上がって歩く時間を測定 → 転倒リスク評価

まとめ

この記事で覚えてほしいこと
  • 重症度を知る
  • 無理をしない
  • 会話できる強さ
  • 毎日体重測定
  • 悪化サインを知る
  • 心不全でも、重症度に応じた適切な運動は重要です
  • ステージ分類(A〜D)とNYHA分類(Ⅰ〜Ⅳ)で見ているものが異なります
  • CPX・Borgスケールを活用することで、安全な運動強度を把握しやすくなります
  • 無理なく、継続することがもっとも大切です
OTからの補足

心不全のリハビリでは「運動量を増やすこと」がゴールではありません。症状のサインを見極めながら、その日の体調に合わせて運動量を調整する柔軟さも、長く続けるうえで重要な視点です。

心不全だからといって、必要以上に身体を動かさない生活を続けることは、筋力低下や体力低下につながる可能性があります。一方で、無理な運動も危険です。ご自身の状態を理解し、適切な運動を無理なく継続することが、長く元気に生活するための第一歩になります。

よくある質問

Q. 心不全でも毎日歩いていいですか?

A. 主治医から運動制限の指示がなければ、Borgスケール11〜13程度を目安に、無理のない範囲で毎日のウォーキングを続けることは推奨されています。

Q. 心不全でも筋トレをしていいですか?

A. 高重量・息こらえを伴う筋トレは避け、軽い負荷で呼吸を止めない筋力トレーニングであれば、状態に応じて行えるとされています。

Q. 階段は上っても大丈夫ですか?

A. NYHA分類やその日の体調によって異なります。強い息切れが出る場合は手すりを使い、無理をしない範囲にとどめることが大切です。

Q. 運動中の心拍数はどこまで上げていいですか?

A. 目標心拍数は個人差が大きいため、CPXの結果などをもとに医療者が設定するのが一般的です。自己判断で高強度にしないことが重要です。

Q. 雨の日は運動しなくてもいいですか?

A. 屋外歩行が難しい日は、室内でのカーフレイズや座位での足踏みなど、代替運動に切り替えることが提案されています。

Q. 入浴しても大丈夫ですか?

A. 熱すぎるお湯や長時間の入浴は血圧変動の原因となるため、ぬるめのお湯で短めに済ませることが一般的には勧められています。

Q. 運動する時間帯はいつがいいですか?

A. 食後すぐや、気温の変化が大きい時間帯(真夏の日中・冬の早朝など)を避けた時間帯が選ばれることが多いです。

Q. 心不全でも旅行できますか?

A. 状態が安定していれば旅行が可能な場合もありますが、事前に主治医へ相談し、服薬や体調管理の計画を立てておくことが勧められています。

Q. 心不全でも仕事はできますか?

A. NYHA分類や仕事内容によって異なります。デスクワークは継続しやすい一方、重労働や長時間の立ち仕事は主治医との相談が必要とされています。

Q. 心不全でもストレッチはした方がいいですか?

A. 息を止めずに行う軽いストレッチであれば、関節の柔軟性維持や筋緊張の緩和に役立つとされています。反動をつけず、ゆっくり伸ばすことがポイントです。

参考:日本循環器学会/日本心不全学会 心不全診療ガイドライン、NYHA心機能分類、CPX(心肺運動負荷試験)関連文献、Borg CR10/RPEスケール

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的診断や治療方針の決定を代替するものではありません。実際の運動内容は、必ず主治医・担当のリハビリ専門職にご相談ください。

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