【作業療法士監修】高齢者の低栄養とは?原因・症状・改善方法とリハビリの関係をわかりやすく解説

栄養と摂食嚥下

「最近、食事の量が減ってきた」
「体重がじわじわ落ちてきた」
「リハビリを頑張っているのに、なかなか筋力がつかない」

こうしたお悩みの背景には、「低栄養」が隠れていることが少なくありません。低栄養は筋肉量や体力を低下させるだけでなく、転倒や寝たきり、入院期間の延長にもつながる可能性があります。

実際に、海外の大規模調査では入院患者の約5人に1人が低栄養であり、約3人に1人が低栄養リスクを抱えていることが報告されています。さらに、太っていても栄養が不足している「隠れ低栄養」状態の方もいます。

この記事では、作業療法士として在宅でのリハビリに携わってきた視点から、「低栄養とは何か」「なぜ高齢者で増えるのか」「リハビリとの関係」「食事だけで補いきれないときに役立つ栄養補助食品」について、「低栄養は治りますか?」「リハビリ中に何を飲めばいい?」といった疑問にもお答えしながら分かりやすく解説します。

— 作業療法士(訪問型の自費リハビリ「Home Reha 福岡」運営)
こんな方におすすめの記事です
  • ご家族や自分自身の食事量・体重の減少が気になっている
  • リハビリや運動をしているのに筋力や体力がなかなか改善しない
  • 飲み込みにくさ(嚥下障害)があり食事だけで十分な栄養が摂れているか不安
  • 栄養補助食品を検討しているが、どれを選べばよいか分からない

低栄養とは?

低栄養とは、活動に必要なエネルギーだけでなく、たんぱく質・ビタミン・ミネラルなど、身体をつくる栄養素が全体的に不足している状態です。「痩せている=低栄養」というイメージを持たれがちですが、実際には体重が減っていなくても栄養が不足しているケースがあります。

🔵 低栄養になると起こりやすいこと
  • 筋肉量・筋力の低下(サルコペニア)
  • 体力・持久力の低下
  • 免疫力の低下、感染症にかかりやすくなる
  • 傷や褥瘡(床ずれ)が治りにくくなる
  • 気力の低下、活動量の減少

まずは下の図をご覧ください。低栄養は放置すると、筋力低下→活動量低下→さらなる食欲低下という悪循環に陥りやすく、最終的には寝たきりにつながることもあります。

低栄養から寝たきりまでの流れ
低栄養(エネルギー・たんぱく質不足)
筋肉量・筋力の低下(サルコペニア)
活動量・食欲のさらなる低下
転倒・骨折・寝たきりのリスク増加

筋肉をつくる材料であるたんぱく質やエネルギーが不足した状態では、運動やリハビリだけを頑張っても筋力は十分に改善しにくいという点が、低栄養の見落とされやすいポイントです。

低栄養かどうかをチェックする方法

「自分や家族が低栄養なのかどうか分からない」という方のために、自宅でもある程度セルフチェックできる代表的な指標をご紹介します。あくまで目安であり、正式な診断は医療機関で行われるものですが、気になるサインに早めに気づくきっかけとして活用してください。

低栄養のセルフチェック項目
  • BMI(体格指数)がやせ気味の範囲(目安:70歳未満はBMI20未満、70歳以上はBMI22未満)
  • 半年間で体重が5%以上減少した
  • MNA-SF(高齢者の栄養状態を調べる質問票)でリスクありと判定される
  • 以前と比べて食事量が明らかに減った
  • ふくらはぎの一番太い部分の周囲径が細くなった(筋肉量低下の目安)

これらの項目に複数当てはまる場合は、低栄養やそのリスクがある可能性があります。医療機関では、こうしたセルフチェックよりも詳しい基準を用いて評価が行われます。

🔵 病院ではどう診断される?(GLIM基準)

病院では「GLIM基準」という国際的な診断基準を参考に、体重減少や筋肉量の減少、食事摂取量の低下、炎症の有無などを総合的に評価して低栄養を診断することがあります。一般の方が詳しく知る必要はありませんが、「体重や筋肉量だけでなく、複数の要素を組み合わせて総合的に判断されるもの」と知っておくと安心です。なお、これらはあくまで医療機関での評価方法であり、一般の方が自分で診断するものではありません。

入院患者の約5人に1人が低栄養

2025年に発表されたオーストラリアの大規模調査では、入院患者の栄養状態について次のような結果が報告されました。

入院患者の栄養状態
21.2%低栄養
37.4%低栄養リスク
39.5%過栄養
4.8%低栄養と過栄養を
同時に有する状態

つまり、約5人に1人が低栄養、約3人に1人が低栄養リスクを抱えているということです。低栄養は決して珍しい状態ではなく、医療現場では日常的にみられる問題であり、高齢になるほど頻度はさらに高くなると報告されています。さらに注目すべきは、4.8%が「体重や体格は大きいのに栄養が不足している」サルコペニア肥満と呼ばれる状態にあったという点です。

🟠 「痩せている=低栄養」だけではありません

体重があっても筋肉量が少なく、たんぱく質などの栄養が不足している高齢者は少なくありません。リハビリの現場では、こうした見た目では気づきにくい「隠れ低栄養」に気付くことも重要だと考えています。

高齢者が低栄養になる原因

高齢者が低栄養になる原因は一つとは限らず、複数の要因が重なっていることが多くあります。検索や相談で特に多いと感じる原因から順にご紹介します。

高齢者が低栄養になる原因
原因理由
食欲低下加齢による味覚・嗅覚の変化や、活動量の減少により空腹を感じにくくなるため
嚥下障害飲み込みにくさから食事量そのものが減りやすいため
歯や口腔内の問題噛む力の低下により、食べられる食品の種類が制限されやすいため
独居・孤食一人での食事は品数が減り、簡単な食事で済ませがちになるため
認知症食事をとったこと自体を忘れる、食欲の変化に気づきにくいなどの影響があるため
病気・服薬の影響疾患や薬の副作用により食欲不振・吸収低下が起こることがあるため

これらのうち、食欲低下や嚥下障害はとくに多くみられる原因とされています。原因によって対応方法も変わるため、思い当たる項目がある場合は早めに医師や管理栄養士へ相談することをおすすめします。

低栄養で起こる身体への影響

低栄養は、身体のさまざまな部分に影響を及ぼします。以下の図のように、複数の症状が連鎖して起こることも少なくありません。

低栄養で身体に起こる影響
影響内容
サルコペニア筋肉量・筋力が低下し、身体を支える力そのものが弱くなる
転倒筋力低下やふらつきにより、つまずき・転倒のリスクが高まる
感染免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなる
ADL低下食事・更衣・移動など日常生活動作を行う力が低下する
骨折転倒に加え、骨の強度低下も重なり骨折リスクが上がる
リハビリ効果低下筋肉をつくる材料が不足し、運動しても効果が出にくくなる
エネルギー・たんぱく質不足
筋肉量低下(サルコペニア)→ 転倒・ADL低下・骨折
組織の修復力低下 → 褥瘡(床ずれ)・感染・入院期間延長

リハビリで栄養が重要な理由

🔵 結論

リハビリは筋肉に「刺激」を与える働きかけですが、筋肉をつくる材料であるエネルギーやたんぱく質が不足していると、せっかくの運動効果が十分に発揮されません。運動と栄養は、どちらか一方ではなく両方がそろって初めて、筋力や身体機能の改善につながります。

リハビリと栄養
リハビリ(運動)+十分な栄養 → 筋力向上
リハビリ(運動)+低栄養 → 効果が出にくい

訪問でのリハビリを行っていると、運動メニューだけを一生懸命続けているのに、なかなか筋力が向上しないという方に出会うことがあります。そうした場合、食事量や体重の推移を確認してみると、栄養面に課題があるケースが少なくありません。運動だけでは筋肉は作れず、栄養だけでも筋力は向上しないという点を、リハビリを行う上でのベースとして意識することが大切です。

栄養補助食品(ONS)が役立つ場面

低栄養を防ぐ・改善するための基本は、あくまで日々の食事です。ただし、次のような場合には、食事だけでは必要な栄養を補いきれないことがあります。

こんな場合は栄養補助食品の活用を検討
  • 食事量そのものが少ない
  • 朝食を抜いてしまうことが多い
  • リハビリや運動の後、疲れて食事が十分にとれない
  • 嚥下障害があり、食べられる形態が限られている

そこで役立つのが、栄養補助食品(ONS:Oral Nutritional Supplements、経口栄養補助食品)です。食事にプラスして手軽に栄養を補える点が特徴で、リハビリの効果を支える手段の一つとして活用されています。

おすすめ栄養補助食品の比較

順位商品特徴
🥇メイバランスMini(明治)1本125mlでエネルギー200kcal、たんぱく質を効率よく補給しやすい
🏆アイソカルゼリー(ネスレ日本)ゼリータイプで飲み込みやすく、嚥下障害がある方にも取り入れやすい
商品形状1本あたり容量飲みやすさの目安向いているタイプ
メイバランスMini液体(乳飲料タイプ)125ml◎(さっぱり飲みやすい)食事量が少ない方、少量で効率よく栄養を補いたい方
アイソカルゼリーゼリー66g前後◎(とろみがあり嚥下しやすい)嚥下障害がある方、むせやすい方
比較項目メイバランスMiniアイソカルゼリー
カロリー
たんぱく質量
飲みやすさ
味の種類
価格(コスパ)
嚥下障害への対応

◎○△の評価はあくまで一般的な傾向を目安化したものであり、体格・嚥下状態・好みによって最適な選択は異なります。迷った場合は、まず少量パックから試してみることをおすすめします。

🔵 作業療法士の結論

飲み込みに大きな問題がなく、少量で効率よくエネルギーとたんぱく質を補いたい場合はメイバランスMiniが選びやすい傾向にあります。一方、むせやすさや嚥下障害がある場合は、ゼリー状で飲み込みやすいアイソカルゼリーが十分な選択肢になります。どちらも一長一短があるため、体調や嚥下の状態に合わせて選ぶことが大切です。

この記事はこんな人におすすめです
  • 食が細くなってきた家族の栄養補給を手軽に始めたい方
  • むせこみやすく、飲み込みやすい栄養補助食品を探している方
  • リハビリの効果を高めるために栄養面も見直したい方

メイバランスMiniがおすすめな人

編集部イチオシ
🥇 総合1位

メイバランスMini(明治)

メイバランスMini(明治)
1本125ml/エネルギー200kcal/たんぱく質7.5g前後(製品により異なる)
価格帯の目安:24本セットで約3,500〜4,500円(サイズ・味により変動、最新価格はAmazonでご確認ください)
🟢 メリット

少量でしっかりとエネルギーとたんぱく質を補給できる設計になっており、食が細い方でも無理なく飲みきりやすいのが特徴です。フルーツ味・コーヒー味など味のバリエーションが豊富で、飽きずに続けやすい点も評価されています。また、6大栄養素をバランス良く補給できることも特徴です。

🔴 デメリット

液体タイプのため、嚥下機能が低下している方はむせるリスクがあります。また、乳製品ベースのため乳成分にアレルギーがある方は注意が必要です。

🔵 OTポイント

私が訪問先でよくご提案するのは、食事の量そのものを大きく増やすのが難しい方です。1本を朝食や間食に取り入れるだけで、無理なくエネルギーとたんぱく質を上乗せできます。

こんな方におすすめ

✓ 食事量が少ないが、飲み込みには問題がない方
✓ 少量で効率よく栄養を補いたい方
✓ 味のバリエーションを楽しみながら続けたい方

▶ Amazonで詳細を見る

アイソカルゼリーがおすすめな人

🏆 嚥下配慮タイプ

アイソカルゼリー(ネスレ日本)

アイソカルゼリー(ネスレ日本)
ゼリータイプ/1個あたり150〜200kcal前後(製品により異なる)
価格帯の目安:24個セットで約4,000〜5,500円(サイズ・味により変動、最新価格はAmazonでご確認ください)
🟢 メリット

とろみのあるゼリー状で、液体よりも飲み込みやすく設計されています。むせやすい方や嚥下障害がある方でも取り入れやすい点が大きな特徴です。少量(約66g)でも150〜200kcal前後を補給できるため、食事量が少ない方にも適しています。

🔴 デメリット

ゼリー状のため、液体タイプに比べてやや満足感が少なく感じる方もいます。また、常温で硬さが変化しやすいため保存方法に注意が必要です。

🔵 OTポイント

むせこみが増えてきた方や、嚥下機能の低下が疑われる方には、まずゼリータイプから試していただくことが多いです。ただし、実際の嚥下状態によって適した形態(とろみの程度)は異なるため、心配な場合は言語聴覚士や医師への相談を優先してください。

こんな方におすすめ

✓ むせやすい、嚥下障害がある方
✓ 液体よりゼリー状のものが食べやすい方
✓ 少量ずつでも栄養を確実に摂りたい方

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🟠 検討したが今回見送った選択肢

プロテインパウダータイプの製品も候補に挙がりますが、水や牛乳に溶かす手間があり、嚥下機能が低下している方には不向きな場合があるため、今回は見送りました。また、一部の高価格帯のリハビリ特化型ゼリーは効果の差が明確でない点と価格の高さから、今回は上記2商品を優先してご紹介しています。

リハビリ中に飲むベストタイミング

栄養補助食品は「いつ飲むか」によって、リハビリ効果への活かし方が変わってきます。

運動・リハビリ終了後
30〜60分以内を目安に摂取
たんぱく質を補給
筋タンパク合成が高まりやすいタイミング

厳密に分単位で管理する必要はありませんが、「運動をしたら、できるだけ間を空けずに栄養を補う」という意識を持つだけでも実践しやすくなります。

🥇 飲み込みに問題がなく、少量で効率よく栄養を補いたい → メイバランスMini
🏆 むせやすい・嚥下障害がある → アイソカルゼリー
💡 どちらか迷う → まずは少量パックや単品で試してから継続を検討

栄養だけでなく、姿勢や動作の見直しも大切です

低栄養の改善には栄養補助食品が役立ちますが、筋力や身体機能の回復には、栄養だけでなく、日常生活の中での姿勢や動作、活動量の見直しも欠かせません。原因は人によって異なるため、自己判断で栄養補助食品だけを取り入れるのではなく、専門職に相談しながら進めることをおすすめします。

私たち「Home Reha 福岡」は、福岡エリアで訪問型の自費リハビリを行っています。低栄養やリハビリの効果でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問

栄養補助食品は毎日飲んでもいいですか?
多くの製品は食事の補助として毎日の継続利用を想定して作られています。ただし、持病(腎臓病・糖尿病など)がある方は、医師や管理栄養士に相談してから取り入れることをおすすめします。
食事の代わりになりますか?
基本的には食事を「置き換える」のではなく「補う」ものとして活用します。食事量が極端に少ない場合を除き、通常の食事にプラスする形で取り入れるのが望ましいとされています。
糖尿病でも飲めますか?
製品によって糖質量が異なり、糖尿病の方向けに糖質を抑えた製品も販売されています。持病がある場合は、購入前に医師や管理栄養士に相談することをおすすめします。
いつ飲むのが効果的ですか?
食事だけで栄養が不足しがちな朝食時や、リハビリ・運動の後30〜60分以内が一つの目安とされています。生活リズムに合わせて無理なく続けられるタイミングを選ぶことが大切です。
飲み過ぎるとどうなりますか?
必要以上に摂取するとエネルギー過多につながる可能性があります。1日の摂取目安量を守り、食事全体のバランスの中で活用することが大切です。
低栄養は自然に治りますか?
原因によっては、食事内容の見直しや栄養補助食品の活用で改善するケースもあります。ただし、体重減少が急激な場合や、原因となる病気が隠れている場合もあるため、自己判断せず早めに医療機関へ相談することをおすすめします。
低栄養は病気ですか?
低栄養そのものは病名ではなく、栄養状態を表す言葉です。ただし、急激な体重減少、強い倦怠感、むくみ、食欲不振が続く場合は、背景に疾患が隠れていることがあるため、医師の診察を受けることをおすすめします。
振り返りポイント
  • 低栄養は見た目だけでは分からないこともある
  • 運動だけでなく栄養もセットで考える
  • 食事だけで不足する場合は栄養補助食品を活用
  • 嚥下状態に合わせて形態を選ぶ
  • 体重減少が急なときは早めに相談する

まとめ

  • 低栄養は高齢者に非常に多くみられる状態です
  • 入院患者の約5人に1人が低栄養、約3人に1人が低栄養リスクを抱えているとされています
  • リハビリの効果を十分に引き出すには「運動」と「栄養」の両方が必要です
  • 食事だけで不足する場合は、栄養補助食品を上手に活用することが選択肢になります
  • 嚥下機能や食事量に合わせて、メイバランスMiniやアイソカルゼリーなどを選ぶとよいでしょう

「食べる量が減ってきた」「リハビリを頑張っているのに変化が感じられない」と感じたときは、一人で抱え込まず、栄養面にも目を向けてみてください。食事や栄養補助食品の工夫と、無理のない範囲でのリハビリを続けることで、少しずつ体力や筋力を取り戻していくことができます。気になる変化があれば、早めにかかりつけ医や専門職に相談していただくことをおすすめします。

参考:日本静脈経腸栄養学会(JSPEN)関連資料、MNA-SF(簡易栄養状態評価表)、2025年発表のオーストラリアにおける入院患者を対象とした栄養状態調査(一般公開情報を基に要約)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的診断や治療方針を示すものではありません。症状や栄養状態について心配な点がある場合は、必ず医師・管理栄養士等の専門職にご相談ください。
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