【セラピスト向け】血液検査の見方とリハビリの留意点|Hb・CRP・BNPなど重要項目を徹底解説

リハビリ前に血液検査を確認していますか。Hb・CRP・Alb・eGFR・Na・K・BNPなどの数値には、感染・貧血・栄養状態・腎機能・心負荷といった全身状態の情報が詰まっており、その日の運動負荷を「上げてよい日」か「安静寄りにすべき日」かを判断する材料になります。本記事ではリハビリに直結する血液検査項目と、臨床での考え方・中止基準を整理します。

血液検査には数十項目ありますが、リハビリで毎回すべてを詳しく確認する必要はありません。まずは「運動の安全性に直結する項目」を優先して確認することが重要です。PT・OT・STが関わるあらゆるリハビリ場面で、血液データの見方とリスク管理の考え方は共通して役立ちます。

こんな方におすすめの記事です

  • 病棟・訪問リハで血液データを確認する習慣をこれから身につけたいPT・OT・ST
  • Hb低下、CRP上昇、Alb低値などの患者を担当しているリハビリ学生・若手セラピスト
  • 心不全(BNP高値)や腎機能低下(eGFR低値)のある利用者を担当する訪問リハスタッフ

この記事で分かること

  • リハビリ前に確認すべき血液検査
  • 数値の見方
  • 運動負荷の考え方
  • 中止・報告の目安
  • 臨床でよくあるケース

目次

  1. 血液検査を見る目的
  2. セラピストが最低限見るべき血液検査一覧
  3. 血液データ項目別ポイント
  4. 血液検査だけでは判断しない
  5. 臨床で実際によく見る組み合わせ
  6. セラピスト向けチェックリスト
  7. よくある質問(FAQ)
  8. まとめ

血液検査を見る目的

結論 セラピストが血液検査を確認する目的は、安全にリハビリを行うことです。運動してよい状態か、感染・貧血・脱水はないか、心不全は悪化していないか、栄養状態は十分かを事前に把握し、その日の負荷量を調整するために使います。これはリハビリの中止基準を判断するうえでの基本的なリスク管理の一つです。

まずは下の図をご覧ください。

血液検査とリハビリの全体マップ
血液検査とリハビリの全体マップ

上の図のように、血液検査の各項目はそれぞれ異なる臓器・システムの状態を映しており、それらを組み合わせて全身状態を把握することがリハビリの安全性につながります。

セラピストが最低限見るべき血液検査一覧

PT・OT・STを問わず、リハビリの現場で押さえておきたい血液検査の基本項目を一覧にまとめました。

項目見る理由
Hb酸素運搬能力
RBC・Ht貧血
WBC感染
CRP炎症
Alb栄養状態
Na脱水・意識障害
K不整脈
BUN・Cr・eGFR腎機能
AST・ALT肝機能
BNP・NT-proBNP心不全
血糖低血糖・高血糖

血液データ項目別ポイント

① Hb(ヘモグロビン)

酸素を運ぶタンパク質です。低下すると筋肉へ十分な酸素が届かなくなり、疲れやすさ・息切れ・頻脈・運動耐容能低下につながります。

Hbリハビリの目安
10以上通常通り
8〜10軽負荷
7〜8慎重に実施
7未満医師へ確認

※数値はあくまで目安です。急性期・慢性期、症状や基礎疾患によって判断は異なります。

OTポイント 慢性的な貧血の患者さんはHbが低くても日常生活を送れていることがあります。数字だけで一律に中止とせず、急性か慢性か、自覚症状(息切れ・動悸・顔色)を必ず併せて確認します。
OTポイント 消化管出血後でHbが一時的に低下していても、循環動態が安定し自覚症状が乏しければ、座位・立位から段階的に負荷を上げていくことがあります。

② RBC・Ht

Hbと合わせて確認します。急激な低下では出血・術後・消化管出血なども考えます。リハビリ中に顔色不良・頻脈・血圧低下があれば再評価が必要です。

  • 低い|貧血、出血、鉄欠乏などが疑われます
  • 高い|脱水による相対的上昇、多血症などが疑われます

まずは下の図をご覧ください。

貧血の仕組み
貧血の仕組み

上の図のように、RBC・Hb・Htの低下は貧血の状態を反映しており、酸素運搬能力の低下を通じて運動耐容能に影響します。

現場での考え方 術後の出血傾向がある患者さんでは、RBC・Htの急激な低下がないかをHb単独よりも先に確認することがあります。

③ WBC

感染の有無を推測する指標です(一方でCRPは炎症の強さを反映する指標であり、両者は役割が異なります)。感染が強い場合は運動負荷を下げます。

  • 高い|肺炎、尿路感染、創部感染などを疑います
  • 低い|感染リスクが高くなるため感染予防も重要です

まずは下の図をご覧ください。

白血球と感染の関係
白血球と感染の関係

上の図のように、WBCは感染や炎症の程度を反映するため、値が高い場合は運動負荷を下げる判断材料になります。

現場での考え方 術後早期でWBCがやや高値でも、創部の炎症所見がなく解熱していれば、ベッドサイドでの離床練習を進めることがあります。

④ CRP

炎症反応の指標です。CRPだけで運動中止にはなりません。重要なのは発熱・血圧低下・呼吸状態悪化など患者さんの状態との組み合わせです。

リハビリで確認したいこと 発熱、呼吸苦、バイタルサイン、倦怠感の有無を併せて確認します。

まずは下の図をご覧ください。

CRP上昇とリハビリ
CRP上昇とリハビリ

上の図のように、CRP上昇は炎症の指標であり、運動耐容能の低下と関連します。

臨床例 肺炎患者でCRPが高値でも、解熱しバイタルサインが安定していれば、座位練習や立位練習から開始することがあります。

⑤ Alb(アルブミン)

低栄養を評価する指標です。低いと筋力低下・浮腫・創傷治癒遅延・サルコペニアにつながります。

OTポイント Albが低い場合、運動だけでは改善しません。栄養介入との併用が重要になるため、栄養士や主治医との情報共有を意識します。

まずは下の図をご覧ください。

低栄養と筋肉減少の関係
低栄養と筋肉減少の関係

上の図のように、Albの低下は低栄養状態を反映し、筋肉量の減少を通じてADLの低下につながります。

OTポイント Albが低い患者さんに運動負荷だけを上げると、かえって筋肉の分解が進むことがあるため、栄養状態の改善と並行して進めます。

⑥ Na(ナトリウム)

異常があると意識障害・せん妄・転倒につながります。急激な異常は要注意です。

  • 高Na|脱水による意識障害に注意
  • 低Na|せん妄・転倒リスクが高まる(利尿薬、心不全、SIADHなどが原因)

まずは下の図をご覧ください。

Na異常と意識障害・転倒リスク
Na異常と意識障害・転倒リスク

上の図のように、Na異常は意識障害を介して転倒リスクへつながるため、リハビリ場面での見守りを強化します。

こんな患者さんは要注意 高齢者ではNa低値による軽い意識障害が転倒につながることがあります。普段よりぼんやりしている、反応が鈍いといった変化も見逃さないようにします。

⑦ K(カリウム)

非常に重要な項目です。高すぎても低すぎても不整脈リスクがあります。

まずは下の図をご覧ください。

K異常と不整脈リスク
K異常と不整脈リスク

上の図のように、K異常は不整脈リスクに直結するため、動悸や脈の異常を感じたら速やかに運動を中止します。

中止・報告の目安 リハビリ中に以下の症状が見られた場合は運動を中止し、速やかに報告します。
  • 不整脈を自覚する
  • 動悸
  • めまい
  • 失神
見逃したくないポイント CKD(慢性腎臓病)患者や透析患者ではK値が変動しやすいため、リハビリ前に必ずK値の確認を忘れないようにしましょう。特に透析前後で数値が大きく変わることがあります。

⑧ BUN・Cr・eGFR

腎機能を評価します。腎機能低下では疲労・浮腫・電解質異常を伴うことがあります。透析患者ではシャント・血圧・除水量も確認します。

まずは下の図をご覧ください。

腎臓とクレアチニン・eGFRの関係
腎臓とクレアチニン・eGFRの関係

上の図のように、Cr・eGFRは腎機能を反映する指標であり、数値の急激な変化がある場合は慎重な負荷設定が必要です。

臨床ではこう考える 慢性的な腎不全患者ではCrが高値でも安定してリハビリを行えることがあります。一方で急激なCr上昇や電解質異常を伴う場合は慎重な対応が必要です。

⑨ AST・ALT

肝障害を評価する指標です。AST・ALTは肝機能障害だけでなく、薬剤性肝障害やアルコール性肝障害でも上昇します。また、ASTは骨格筋障害でも上昇することがあるため、転倒後や過負荷な運動の後など、肝機能以外の要因も念頭に置くとセラピストらしい視点になります。高度上昇している場合は全身倦怠感が強く、運動耐容能が低下することがあるため、リハビリ中の疲労感の訴えには注意して耳を傾けます。

⑩ BNP・NT-proBNP

心不全の評価に重要な項目です。高値ほど心負荷が高い可能性があります。数字だけでなく浮腫・呼吸苦・SpO₂・胸部症状を合わせて判断します。

まずは下の図をご覧ください。

BNP上昇と心不全・運動耐容能低下
BNP上昇と心不全・運動耐容能低下

上の図のように、BNP高値は心負荷の増大を反映するため、リハビリでは負荷量を慎重に設定します。

新人が間違えやすいポイント BNPは慢性的に高値の患者も多く、数値だけで運動を中止するわけではありません。前回値から急激に上昇しているか、呼吸状態や浮腫が悪化していないかを合わせて確認します。

⑪ 血糖値

低血糖では冷汗・手指振戦・意識障害、高血糖では脱水や感染リスクの上昇が見られます。糖尿病患者では運動前後の血糖確認が必要になることがあります。

まずは下の図をご覧ください。

血糖異常とリハビリ時の注意点
血糖異常とリハビリ時の注意点

上の図のように、血糖値は低すぎても高すぎてもリハビリ実施の可否に関わるため、実施前後のチェックを習慣化します。

OTポイント HbA1cも合わせて確認すると、その日一時点の血糖値だけでなく直近1〜2か月の血糖コントロール状況が把握でき、運動処方の判断材料が増えます。
現場での考え方 インスリン使用中の患者さんでは、リハビリの時間帯が食前・食後どちらにあたるかによっても低血糖リスクが変わるため、実施タイミングにも注意します。

血液検査だけでは判断しない

記事全体で最も伝えたいこと 血液検査はあくまで「患者さんの状態を把握する材料の一つ」です。リハビリでは血液データだけでなく、以下を合わせて総合的に判断することが最も重要です。
  • バイタルサイン
  • 意識状態
  • 呼吸状態
  • 表情
  • 自覚症状
  • 疾患の経過
血液検査だけでリハビリの中止・継続を決めないでください。必ず主治医の指示も合わせて判断します。

例えば、慢性的な腎不全患者ではCrが高値でも安定してリハビリを行えることがあります。一方で、急激なCr上昇や電解質異常を伴う場合は慎重な対応が必要です。同様に、慢性貧血の患者はHbが低くても日常生活を送れていることがありますが、急激なHb低下では症状が強く出ることがあります。

臨床で実際によく見る組み合わせ

血液データ考えることリハビリ
Hb↓+CRP↑感染+貧血軽負荷
Alb↓+CRP↑低栄養・炎症栄養連携
Cr↑+K↑腎機能悪化慎重
BNP↑+浮腫心不全低負荷
Na↓+せん妄転倒リスク見守り強化

セラピスト向けチェックリスト

リハ前に確認したいポイント

  • Hb
  • WBC
  • CRP
  • Alb
  • Na
  • K
  • Cr・eGFR
  • BNP
  • 血糖
  • バイタルサイン
  • 意識状態
  • 呼吸状態

よくある質問(FAQ)

Hbが8 g/dLならリハビリは禁止ですか?

いいえ。Hbだけで一律に中止とはなりません。症状、急性・慢性の経過、出血の有無、循環動態などを総合的に評価し、必要に応じて医師と相談して負荷を調整します。

CRPが高いと運動してはいけませんか?

CRPは炎症の指標であり、高値だけを理由に運動を中止するわけではありません。発熱や全身状態、感染のコントロール状況をあわせて判断します。

どの血液データを最優先で確認すべきですか?

診療科や疾患によって異なりますが、多くの場面ではHb、CRP、WBC、Alb、Cr・eGFR、Na・Kを優先して確認すると、安全なリハビリにつながります。

血液検査の数値に異常がなければ運動負荷を上げても問題ありませんか?

数値だけで判断せず、当日のバイタルサインや自覚症状も必ず確認してください。数値が正常でも、体調不良や疲労が強い場合は負荷を控えることがあります。

参考:日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン、日本循環器学会 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン等。本記事は一般的な参考情報であり、個別の医学的判断・診断の代替となるものではありません。実際の対応は主治医の指示に従ってください。

振り返りポイント

  • 数字だけで中止・継続を決めない
  • 急性か慢性かを区別する
  • バイタル・症状と併せて総合判断する
  • 迷ったら医師へ確認する
  • 複数データの組み合わせで考える

まとめ

血液検査はリハビリの「可否」を決めるためだけのものではなく、患者さんの状態を把握し、安全かつ効果的な運動量を設定するための重要な情報源です。特にHb(貧血・酸素運搬能力)、WBC・CRP(感染・炎症)、Alb(栄養状態)、Na・K(電解質異常)、Cr・eGFR(腎機能)、BNP(心不全)、血糖(代謝状態)は、日々の臨床で確認する習慣をつけましょう。

数字だけを見るのではなく、バイタルサインや症状、疾患の経過と組み合わせて総合的に判断することが、安全なリハビリにつながります。日々の一つひとつの確認が、患者さんの安全と回復を支える力になります。

血液検査は「異常値を探す」ためではなく、「今日の患者さんに最適なリハビリを考えるため」の情報です。数字だけではなく患者さん全体を評価する視点を持つことが、安全で質の高いリハビリにつながります。

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