高齢者が熱中症になりやすい理由と対策【専門職が解説】
はじめに:猛暑にこそ注意すべき「高齢者の熱中症」
毎年のように猛暑日が続く日本の夏。特に高齢者においては、熱中症による救急搬送や死亡例が増加しており、予防が非常に重要です。
令和6年(2024年)の総務省消防庁の報告では、熱中症で搬送された人のうち約54%が65歳以上の高齢者でした。
つまり、2人に1人以上が高齢者なのです。
なぜ高齢者は熱中症にかかりやすいのか?そして、どんな対策が効果的なのか?
在宅介護・リハビリの視点も交えて、わかりやすく解説します。
高齢者が熱中症になりやすい理由とは?
✅ 1. 体温調節機能の低下
加齢に伴い、発汗や皮膚血流による熱放散機能が低下します。
その結果、体に熱がこもりやすくなり、体温上昇に気づきにくいのです。

年齢 | 発汗反応 | 体温調節能力 |
---|---|---|
若年者 | 適度に発汗し体温を維持 | 良好 |
高齢者 | 発汗量が減少 | 低下している |
✅ 2. のどの渇きに鈍感になる
高齢者は脱水症状が進行しても「のどが渇いた」と感じにくい傾向があります。
そのため、水分摂取のタイミングを逃しやすく、知らぬ間に脱水が進行していることも。

✅ 3. 冷房の使用を避けがち
「クーラーは体に悪い」「電気代がもったいない」といった理由で、高齢者が冷房を我慢してしまうケースも非常に多く見られます。

✅ 4. 基礎疾患・服薬の影響
- 糖尿病・高血圧・心疾患などの慢性疾患がある場合、体温調節に影響することがあります。
- 利尿剤・降圧剤などの薬によって、脱水が起きやすくなることも。
✅ 5. 一人暮らし・認知機能の低下
- 一人暮らしで助けを求めにくい
- エアコンの操作が難しい
- 状況判断が遅れる など
こういった社会的・認知的な背景も、熱中症リスクを高める要因となります。

家庭でできる!高齢者の熱中症対策5つのポイント
✅ 1. 室温と湿度の「見える化」
温湿度計を設置し、「エアコンをつけるかどうか」を数値で判断できるようにしましょう。
目安 | 状態 |
---|---|
室温 28℃以上 | 熱中症リスク高 |
湿度 60%以上 | 熱中症リスク上昇 |
室温26〜27℃ + 湿度50% | 快適で安全な状態 |
→ 数値で「暑さ」を判断することで、高齢者自身も冷房使用に納得しやすくなります。
✅ 2. 水分補給のルールを作る
「のどが渇く前に飲む」ことが重要。以下の方法がおすすめです。
- 毎食時+朝・夕の5回は**コップ1杯(150〜200ml)**の水分を摂る
- 冷たい麦茶、経口補水液なども有効
- トイレが近くなるのを嫌がる場合は、少量ずつ頻回摂取を促す
✅ 3. 涼感グッズを活用
- 冷感タオル
- ネッククーラー
- 首掛け扇風機
→ 室内でのリハビリ時にも役立ちます。
【関連リンク:熱中症対策グッズ5選(別記事へ内部リンク)】
✅ 4. エアコンの自動運転+タイマー活用
「暑くなってからON」では遅すぎます。自動運転+室温28℃以下の設定がおすすめです。
また、夜間の熱中症も多いため、就寝時にはタイマー+微風運転を組み合わせましょう。
✅ 5. 家族・ヘルパー・訪問職が声かけを
- 訪問時には「水分摂ってますか?」「暑くないですか?」と確認
- ひとことの声かけで、早期発見や予防につながる
高齢者の熱中症に気づくサインとは?
以下のような症状があれば、早めに涼しい場所で休ませ、必要なら医療機関へ。
サイン | 注意点 |
---|---|
顔が赤い・汗が出ない | 体温調節ができていない可能性 |
ぼーっとする・反応が鈍い | 脱水・脳への影響のサイン |
筋肉のけいれん | ナトリウム不足に注意 |
歩行がふらつく | 熱中症の初期段階 |
まとめ:予防が最も重要!「気づく力」「備える力」を高めよう
高齢者が熱中症になりやすい理由は、身体的な機能低下だけでなく、生活習慣や環境、社会的背景が複雑に絡み合っていることが分かります。
だからこそ、**予防=“周囲のサポート”と“仕組み化”**がカギ。
- 室温・湿度を見える化
- 飲水の時間を決めて習慣化
- 家族・介護職・訪問リハ職の声かけで“気づける環境”を
これらを日常に取り入れることで、高齢者が安全に、夏の生活とリハビリを続けることが可能になります。
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