肩が90°から上がらない原因は?
■ まず知っておきたい「肩が上がる仕組み」

肩はただの“関節”ではなく、
- 肩の関節(肩甲上腕関節)
- 肩甲骨の動き
- 胸の骨(胸郭)の動き
この3つがチームのように連動して、腕がまっすぐ上まで上がります。
イメージしやすい例:
- 肩の関節…ドアの蝶番(ちょうつがい)
- 肩甲骨…その下でドアを支えるレール
- 胸の骨…レールをさらに支える土台
どれか1つが動きにくいと、腕が途中で止まります。
特に、腕を90°より上まで上げるには《肩甲骨がしっかり動く》ことが必須です。
セラピスト向け↓
■ 肩が「90°で止まる」主な原因
以下は、一般的に多い原因をわかりやすく分類したものです。
① 肩の関節が固くなっている(いわゆる“凍結肩”)
40〜60代に多い「四十肩・五十肩」がこれに当たります。

● 特徴
- 徐々に痛みが強くなり、動かすと鋭い痛みが出る
- 夜に痛みが強いことがある
- 自分で上げても、人に上げてもらっても90°以上動かない
● 原因イメージ
関節の中の膜(関節包)が“ぎゅ〜っと縮こまって硬くなる”状態。
② 肩の筋肉が弱っている・うまく働いていない
特に「肩甲骨を支える筋肉(前鋸筋・僧帽筋)」が弱ると肩が上がりません。

● 特徴
- 力を入れても肩が重い・上がる気がしない
- 人が支えると上がる(=関節そのものは固くない)
- 姿勢が悪い、肩が内巻きの人に多い
● 原因イメージ
肩甲骨が動かないので、腕を“上”に押し上げる土台が失われている感じ。
③ 腱板(けんばん)や滑液包が痛んでいる(肩峰下インピンジメントなど)
肩の中で筋肉や腱が骨にぶつかり、炎症が起こる状態。

● 特徴
- 60〜120°くらいの中間で特に痛い
- 肩を上げる途中で「ズキッ」となる
- 荷物を持ち上げると痛む
● 原因イメージ
肩の中で組織が“挟まって”いる状態。
④ 筋肉や腱の大きな損傷(腱板断裂)
転倒や重い物を持った後に突然挙上できなくなることがあります。

● 特徴
- 力を入れても肩がほとんど上がらない
- 夜間痛がある
- 外傷のあとに発症しやすい
⑤ 姿勢が悪く、胸や背中が丸まっている
猫背・巻き肩の人は肩が上がりにくい傾向があります。

● 特徴
- デスクワーク・スマホ時間が長い
- 背中が丸まり、肩甲骨が動きづらい
- ストレッチすると比較的すぐ動きが改善しやすい
● 原因イメージ
“レール(肩甲骨)が動かないから腕も上がらない”。
⑥ 神経のトラブル(まれだけど重要)
首の神経が圧迫されていたり、肩の神経(腋窩神経)に障害がある場合。

● 特徴
- 力が入らない
- 肩の外側がしびれる
- 首を動かすと肩に痛みが走る
※この場合は医療機関に相談が必要。
■ 自分でできるセルフチェック(簡単)
✓ チェック1:人に腕を持ち上げてもらう
- 人に上げても90°で止まる → 関節が固い可能性
- 人が上げるとスッと上がる → 筋力不足・動かし方の問題
✓ チェック2:姿勢で変わる?
背筋を伸ばして胸を張ると、腕が少し上がりやすくなるなら
→ 姿勢・肩甲骨の問題が大きい。
✓ チェック3:途中で痛くて止まる?
→ インピンジメントや炎症が疑わしい。
■ 改善のための簡単エクササイズ
※痛みが強い時期は無理しないこと。
① 肩甲骨ほぐし(1分)
- 背筋を伸ばす
- 肩を後ろに大きく回す(20回)
→ 肩甲骨が動きやすくなり、可動域が変わりやすい。
② 壁スライド(前鋸筋トレーニング)
- 壁に手をつく
- 肘を伸ばしながらゆっくり腕を上にスライド
- 肩が痛い手前で止めて戻す
10回 × 2セット
→ 肩甲骨が上に回りやすくなり、腕の“土台”が整う。
③ タオルストレッチ(肩前面)
- タオルを背中の後ろで持つ
- 上の手で引き上げながら胸や肩前を伸ばす
- 気持ちいい程度に10〜20秒
→ 巻き肩を改善。
■ こんなときは早めに受診を
- 夜寝ているときに痛みで起きる
- 力を入れても腕がまったく上がらない
- 急に発症した(転倒・スポーツ中など)
- しびれ・脱力を伴う
早期に診察すれば、回復までの期間を大きく短縮できます。
■ まとめ
肩が90°より上がらなくなる原因は大きく分けて、
- 肩の関節が固い
- 肩甲骨の動きが悪い
- 筋肉が痛んでいる
- 姿勢の問題
- 神経の問題
など、いくつかのパターンに整理できます。
多くの人は 「肩甲骨の動き」+「姿勢」 が原因で、軽いトレーニングでも改善しやすいです。
一方で、痛みが強い・急に上がらなくなった場合は、必ず医療機関に相談して下さい。
投稿者プロフィール
最新の投稿
お知らせ2025-11-21リハビリテーションにおける「覚醒」を上げる方法:網様体賦活と感覚入力の科学的根拠
お知らせ2025-11-20脳梗塞・脳出血後のリハビリにおける麻痺側への荷重が重要な理由
お知らせ2025-11-20肩が90°から上がらない原因は?
お知らせ2025-11-19肩関節が屈曲90°から上がらない原因 — 解剖学的・運動学的に詳しく解説



