【作業療法士が解説】MMSE(ミニメンタルステート検査)の評価項目と解釈方法を徹底解説!
✅ はじめに
MMSE(Mini-Mental State Examination)は、世界中で広く使用されている認知機能検査です。
特に高齢者の認知症のスクリーニングや経過観察に用いられます。
この記事では、各項目の具体的な評価方法や観察のポイント、解釈方法を作業療法士の視点で詳しく解説します。
📋 MMSEの基本情報
項目分類 | 評価項目 | 満点 | 内容の概要 |
---|---|---|---|
見当識 | 時間・場所の見当識 | 10点 | 年・月・日など |
記憶 | 即時記銘・遅延再生 | 6点 | 単語の記憶 |
注意と計算 | 数字の逆唱、計算 | 5点 | 100から7ずつ引くなど |
言語 | 命名・復唱・理解など | 9点 | 指示動作・書字など |
合計:30点満点
→ 24点未満で認知症の可能性あり(ただし年齢・教育歴で補正が必要)
📝 各項目の評価方法と解釈
① 見当識(Orientation)【10点】
🔹 評価方法
- 時間の見当識(5点)
- 今日は何年ですか?
- 今日は何月ですか?
- 今日は何日ですか?
- 今日は何曜日ですか?
- 今はどの季節ですか?
- 場所の見当識(5点)
- ここはどこの県ですか?
- ここはどこの市(区)ですか?
- 今どの施設(場所)にいますか?
- この階は何階ですか?
- この部屋の名前はわかりますか?
🔸 解釈のポイント
- 点数が低い場合はせん妄や急性期にも見られる。
- 慢性の認知症では徐々に失われる傾向。
② 記銘(Registration)【3点】
🔹 評価方法
- 「桜・猫・電車」のように3語をはっきりと話し、1秒ごとにゆっくり提示。
- 「あとについて繰り返してください」と伝える。
- 全て復唱できれば3点。
🔸 解釈のポイント
- 注意障害や記銘障害があるとミスが多い。
- 正確な聴き取りができているかも重要な観察点。
③ 注意と計算(Attention and Calculation)【5点】
🔹 評価方法(いずれか1つ)
- 「100から7を引いてください。そこからまた7を引いてください…」×5回
→ 計算ごとに1点、合計5点 - 「世界」という言葉を逆に言ってください(カナ読みで「かいせい」→「いせいか」)
→ 正確に逆唱できれば5点
🔸 解釈のポイント
- 学歴や教育歴に大きく影響されやすい。
- うまくできない場合は前頭葉機能や注意力の低下を疑う。
④ 即時再生(Recall)【3点】
🔹 評価方法
- 最初に記銘した3語を「覚えていますか?」と聞く。
- 正確に答えられた数だけ得点。
🔸 解釈のポイント
- 記憶障害の有無を判断。
- 再提示なし・ヒントなしで答えることが重要。
⑤ 言語(Language)【9点】
🔹 評価項目と方法
- 命名(2点)
→ 鉛筆と時計などを見せて「これは何ですか?」 - 復唱(1点)
→ 「みんなで力を合わせて綱を引く」と言って復唱してもらう。 - 三段階命令(3点)
→ 「この紙を右手で持って、二つに折って、私に渡してください」 - 読字命令(1点)
→ 「目を閉じてください」と書いた紙を見せ、動作をするか確認。 - 書字(1点)
→ 「文章を書いてください」(意味のある一文) - 図形模写(1点)
→ 重なり合う五角形を模写してもらう。
🔸 解釈のポイント
- 失語症や構成障害の評価としても重要。
- 観察者が指示を明確に伝えることが大切。
⚠️ 点数の付け方で注意すべきポイント
MMSEの評価は簡便な一方で、判定者によって点数がぶれることもあります。以下のポイントに留意すると、より正確で一貫した評価が可能です。
✅ 1. 【記銘】と【遅延再生】の違いに注意
- 記銘(Registration):3つの単語を提示してすぐに復唱できたら満点(ヒントOK)。
- 遅延再生(Recall):時間を置いて再度聞いたとき、ヒントなしで思い出せた数が点数になる。
👉 ヒント(例:「動物の名前です」など)を与えた場合は減点対象。
✅ 2. 【注意と計算】は途中の正答でも加点できる
- 「100から7を引いてください」の方式では、
1問ごとに1点で、部分点OK(最大5点)。
(例:100→93→86→間違え→間違え →2点) - 「世界(せかい)」の逆唱は、「いかせ」などの発音順で判定。文字ではなく音で逆になるかが重要。
✅ 3. 【言語機能】命名は視覚提示が必要
- 時計や鉛筆を実物または明確な絵で提示する。
- 単語を口頭だけで伝えてはいけない。
- 片方だけ言えたら1点、両方で2点。
✅ 4. 【三段階命令】は順序を正しく実行しないと満点にならない
- 「右手で持つ → 二つに折る → 渡す」を順序通りに実行した場合のみ3点。
- 順序が間違っていたり、一部のみ実行した場合は部分点なしが原則。
✅ 5. 【図形模写】は「重なり」の再現が重要
- 五角形が2つ重なって描かれているか、角があるかを評価。
- 曲線になっていたり、重なりがない場合は減点。
✅ 6. 教育歴・年齢に応じた解釈が必要
- 教育歴の短い方(例:初等教育のみ)では25点程度でも正常のことがある。
- 一方、大学卒以上の方で28点でも認知機能低下の初期兆候がある場合も。
🔍 点数の評価と目安
点数範囲 | 評価の目安 | 解釈 |
---|---|---|
27〜30点 | 正常範囲 | 教育歴を考慮 |
21〜26点 | 軽度の認知障害 | MCIの可能性も |
20点以下 | 認知症の可能性 | 詳細検査が必要 |
※ 教育歴や言語能力により補正が必要。例:初等教育のみの高齢者では25点でも正常。
🧑⚕️ 臨床での活用ポイント
- 繰り返し実施により変化を追える
→ 数ヶ月おきに実施し、経過観察に有効 - リハビリ職(OT・PT)でも使いやすい
→ 動作観察・コミュニケーション支援と併用
📚 引用・参考文献
- Folstein MF, Folstein SE, McHugh PR. “Mini-mental state.” Journal of Psychiatric Research, 1975.
- 厚生労働省:認知症施策推進大綱(2023年改訂版)
- 認知症ケア実践ハンドブック 第2版(中央法規出版)
📝 まとめ
MMSEは簡便かつ信頼性の高い認知機能検査です。
各項目の意図や評価方法を理解することで、より正確な認知状態の把握が可能となります。日々の臨床や在宅支援で、ぜひ活用してみてください。