FIM とは何か?評価・採点方法を解説
FIM(Functional Independence Measure:機能的自立度評価)は、リハビリテーション医療の現場で世界的に広く使われている ADL 評価スケールです。
「どのくらい自立して生活できるか」「どの程度、他者の介助が必要か」を 18 項目・7 段階 で定量的に評価します。Physiopedia+1
FIM はもともと脳卒中後の患者さんを対象に開発されましたが、現在では脊髄損傷、外傷性脳損傷、整形外科疾患、内部疾患、高齢者のリハビリなど、診断名を問わず応用されています。ウィキペディア
FIM とは
- 18 項目からなる機能評価スケール
- 各項目を 1〜7 点で採点する 順序尺度(ordinal scale)
- 合計点は 18〜126 点
- 18 点:全項目で「1 点(全介助)」
- 126 点:全項目で「7 点(完全自立)」Shirley Ryan AbilityLab
FIM の大きな特徴は、「できるか・できないか」ではなく
実際の日常生活で、どの程度の介助量が必要か
という「介護負担(burden of care)」を反映している点です。ウィキペディア
FIM の評価内容・領域
18 項目は、以下の 6 領域(2 ドメイン)に整理されています。Strokengine+1
【運動(Motor)ドメイン:13 項目】
- セルフケア(Self-care:6 項目)
- 食事(Eating)
- 整容(Grooming)
- 清拭(Bathing)
- 更衣(上半身)(Dressing – Upper Body)
- 更衣(下半身)(Dressing – Lower Body)
- トイレ動作(Toileting)
- 括約筋コントロール(Sphincter Control:2 項目)
- 排尿コントロール(Bladder Management)
- 排便コントロール(Bowel Management)
- 移乗(Transfers:3 項目)
- ベッド・椅子・車椅子への移乗
- トイレへの移乗
- 浴槽・シャワーへの移乗
- 移動(Locomotion:2 項目)
- 歩行/車椅子
- 階段
【認知(Cognitive)ドメイン:5 項目】
5. コミュニケーション(Communication:2 項目)
- 理解(Comprehension)
- 表出(Expression)
- 社会的認知(Social Cognition:3 項目)
- 社会的交流(Social Interaction)
- 問題解決(Problem Solving)
- 記憶(Memory)

FIM の評価項目は 18 個
先ほど挙げた 18 項目を、臨床でイメージしやすいように日本語ベースで一覧にすると次の通りです。
1. セルフケア(Self-care)
- 食事:食べ物を口へ運び、咀嚼し、嚥下する一連の過程
- 整容:洗顔・歯磨き・髭剃り・髪をとかすなどの身だしなみ
- 清拭:全身の入浴またはシャワー動作
- 更衣(上半身):上衣・下着の着脱
- 更衣(下半身):ズボン・スカート・靴下・靴などの着脱
- トイレ動作:トイレへの出入り、衣服の上げ下げ、清拭
2. 括約筋コントロール(Sphincter Control)
- 排尿コントロール:尿意の認識、失禁の有無、自己導尿などを含む
- 排便コントロール:便意のコントロール、失禁、浣腸・摘便の必要性など
3. 移乗(Transfers)
- ベッド・椅子・車椅子への移乗
- トイレへの移乗
- 浴槽・シャワーへの移乗
4. 移動(Locomotion)
- 歩行/車椅子:屋内外の移動(距離・補装具・車椅子操作を含む)
- 階段:階段昇降の可否と介助量
5. コミュニケーション(Communication)
- 理解:口頭言語・文章・ジェスチャーなどの理解
- 表出:口頭・筆談・コミュニケーションエイドによる意思表出
6. 社会的認知(Social Cognition)
- 社会的交流:他者との関わり方・感情コントロールなど
- 問題解決:日常場面での判断・計画・危険予知など
- 記憶:エピソード記憶・見当識・日常情報の保持など
これらは「身体機能」だけでなく、生活の中での認知・行動面までカバーしている点が FIM の特徴です。サイエンスダイレクト+1
FIM における評価のメリット
1. 多職種で共有しやすい共通言語
医師・看護師・PT・OT・ST・MSW・ケアマネなど、多職種で 同じスケールを共有 できるため、患者さんの ADL を共通言語で議論しやすくなります。Shirley Ryan AbilityLab
2. 経時的変化を追いやすい
入院時・退院時・フォローアップで FIM を繰り返し評価することで、
- リハビリの 介入効果
- 在宅復帰・施設入所の 見通し
- 介護量の変化
を客観的に把握できます。Physiopedia+1
3. 研究・統計にも利用しやすい
総得点やドメイン得点、個別項目得点を用いて、介入効果や予後予測モデルの検討など、多くの研究で用いられています。Shirley Ryan AbilityLab+1
4. 他の評価指標との比較がしやすい
Barthel Index など他の ADL スケールとの比較研究も多く、
指標間の換算や関連性が報告されています。Shirley Ryan AbilityLab+1
FIM の点数採点ポイントとは
ここからは、FIM を採点するときの基本的な考え方と 7 段階の基準を詳しく整理します。
(各評価項目の「中身」は変わっても、1〜7 点の意味はすべて共通 です)
1. 評価の大原則
- 「できる能力」ではなく「日常生活で実際に行っているレベル」を評価する
- 訓練室ではできるが、病棟ではしていない →「していない」レベルとして評価
- 安全性と効率性(timely, safely)も含めて判断するicare.nsw.gov.au
- 原則として 24 時間の中で最も一般的な状態を反映する
- 複数の専門職が情報共有し、チームとして採点することが推奨されるキングズカレッジロンドン+1
2. 7 段階スケールの基本
FIM の 1〜7 点は、「どのくらい介助者(helper)が必要か」で決まります。
一般的な定義は次の通りです。Physiopedia+3Enable Lifecare+3Oxford Healthcare+3
7 点:完全自立(Complete Independence)
- 介助者は不要
- 補助具の使用なし、時間も通常、危険もない
- 100%自分で実施
6 点:修正自立(Modified Independence)
- 介助者は不要だが「何らかの修正」が必要
- 補助具の使用(杖・歩行器・コップの蓋・厚柄スプーンなど)
- 時間がかかる(一般の 1.5 倍以上など)
- 安全確保のための環境調整が必須 など
5 点:監視・準備(Supervision / Setup)
- 実際の動作は自分で行っているが、人の関与が必要
- 口頭指示・促し・見守りがないと危険、または開始できない
- 食事のトレイを準備してもらう、義歯や補助具を用意してもらう など
- 身体的接触は原則不要(一瞬の保護接触を除く)
4 点:最小介助(Minimal Assistance)
- 動作の 75%以上は自分で実施
- 介助者がわずかに持ち上げる・支える程度(身体介助は 25%未満)
3 点:中等度介助(Moderate Assistance)
- 動作の 50〜74%を自分で実施
- 介助者が 26〜50%程度の身体介助を提供
2 点:最大介助(Maximal Assistance)
- 動作の 25〜49%を自分で実施
- 介助者が 51〜75%を担う
1 点:全介助(Total Assistance)
- 動作の 25%未満 しか自分でできない
- もしくは
- 2 人以上の介助者を要する
- 全く動作に参加できない
- 評価が困難(重度意識障害など)の場合も 1 点扱い
このように、3〜4 点は「何割自分でできるか」、5 点以上は「介助者が必要かどうか」 が大きな判断の分かれ目になります。スプリンガーリンク+1
FIM の採点基準の具体例
1. 食事(Eating)の評価・採点の考え方
評価範囲
- 適切な食器・道具を用意された状態で、
- 食べ物をすくう/つまむ
- 口へ運ぶ
- 咀嚼し、嚥下する
の 3 工程を評価します。Veterans Affairs+1
7 点(完全自立)
- 全ての食事形態(常食〜嚥下食)で、
- お皿から口まで食べ物を運び
- 咀嚼し、嚥下する
一連の過程を危険なく、適切な速度で自立して行える。
6 点(修正自立)
- 自助食器・自助具、厚柄スプーン、コップの蓋、ストローなどを使用しているが、
- 介助者は不要
- 誤嚥リスクを十分コントロールできている。
5 点(監視・準備)
- 食器の準備、肉を切る、蓋を開けるなどの「下膳・配膳」の手助けが必要。
- 食べこぼしや誤嚥を防ぐための 見守り・声かけ が必要だが、
- 実際に口へ運ぶ・嚥下する動作は自力で行う。
4 点(最小介助)
- 口の中に食べ物が詰まっていないかを軽く触って確認する、軽い部分介助が必要。
- 3 工程のうち、2 工程以上は自立しているイメージ。
3 点(中等度介助)
- 自助具を装着してもらい、スプーンに食物を乗せてもらえば、
- その後は自分で口へ運び食べることができる。
2 点(最大介助)
- 食べ物をスプーンで口元まで運んでもらう必要があるが、
- 口に入った後の嚥下は自分で可能。
1 点(全介助)
- 咀嚼・嚥下はできるが、口まで運ぶことができない、あるいは胃ろうなどで
- 栄養摂取を介助者が完全に管理している。
※実際の採点には、所属施設で使用している公式マニュアルの定義を必ず確認してください。Veterans Affairs+1
その他の代表的な項目の採点イメージ
ここでは、構成にあった項目のうち、臨床で特によく議論になるものを簡潔にまとめます。
2. 整容(Grooming)
- 評価範囲:洗顔・歯磨き・髭剃り・髪をとかす・化粧のうち、通常行っている 3〜5 動作。
- 欠損している上肢がある場合は義手・自助具の使用も含めて評価。
- 5 点と 4 点の境目は「準備だけしてもらえば自分でできるか」「実際に手を添えて介助が必要か」がポイント。Veterans Affairs+1
3. 清拭(Bathing)
- 評価範囲:通常洗う 10 か所(胸・腹・両腕・両脚・背部・臀部など)をどの程度自分で洗えるか。
- 1 箇所当たり 10%として、洗えている割合で 1〜7 点を決める考え方が一般的です。Veterans Affairs+1
4. 更衣(上半身・下半身)
- 「着る」と「脱ぐ」を合算した一連の動作を評価。
- 更衣に要する時間、衣服の種類(前開き/被りタイプ)、装具の着脱なども考慮する。
5. トイレ動作・排泄コントロール
- トイレ動作(Toileting)と排尿・排便コントロール(Bladder / Bowel Management)は別項目。
- 漏れがないかどうかだけでなく、
- 尿意・便意の認識
- トイレまでの時間調整
- 失禁時の自己処理
まで含めて評価します。長崎大学リポジトリ+1
6. 移乗・移動・階段
- 移乗は「実際に使っている移動方法(ベッド⇔車椅子など)」で評価。
- 移動は、歩行か車椅子か、より 自立度の高い手段 を使って評価します。
- 階段は、通常利用している段数・手すり・補装具の有無を考慮。
7. コミュニケーション・社会的認知
- 理解・表出は口頭言語だけに限らず、ジェスチャーやコミュニケーションエイドも含めた 「意思疎通の実用レベル」 を評価。
- 社会的交流・問題解決・記憶は認知症や高次脳機能障害の評価に重要で、
- 感情コントロール
- 状況判断
- 危険場面での対応
など、生活場面の観察が必須です。Strokengine+1
FIM 総得点の解釈
総得点は 18〜126 点で、点数が高いほど自立度が高いことを示します。Shirley Ryan AbilityLab+1
研究によって区切りは異なりますが、例として以下のような解釈が用いられることがあります。JSTAGE+1
- 18〜60 点:重度の介助を要する
- 61〜90 点:中等度の介助を要する
- 91〜126 点:軽度介助〜自立レベル
また、1〜7 点をまとめて
- 1〜2 点:完全依存(Complete Dependence)
- 3〜5 点:修正依存(Modified Dependence)
- 6〜7 点:自立(Independence)
と 3 区分で扱う解析も行われています。JSTAGE
ただし、同じ総得点でも どの項目が低いか によって、生活上の困難さや必要な支援内容は大きく違います。
そのため臨床では、総得点だけでなく 各項目・各領域ごとのプロファイル を必ず確認します。
FIM を活用するときの注意点
1. 評価者のトレーニングと信頼性
FIM は正式には、所定の研修を受けた評価者が用いることが推奨されています。
トレーニングを受けずに独自の解釈で採点すると、施設間・評価者間のばらつきが大きくなり、
信頼性が低下するリスクがあります。Shirley Ryan AbilityLab+1
2. 著作権・ライセンス
FIM は著作権で保護された評価ツールであり、
正式なスコアシートやマニュアル、電子システムの利用にはライセンス契約が必要な場合があります。Shirley Ryan AbilityLab+1
ブログや解説記事では、項目名や一般的な採点の考え方を紹介することは多くの文献で行われていますが、
公式マニュアルの表現をそのまま転載しない よう注意が必要です。
3. ADL の全てをカバーしているわけではない
FIM は「基本的 ADL」に焦点を当てたスケールであり、
- IADL(買い物・家事・金銭管理など)
- 仕事や余暇活動
- 参加(Participation)の側面
までは評価しきれません。
必要に応じて Barthel Index、Lawton IADL、FAM(Functional Assessment Measure)など、
他の評価と組み合わせて用いることが推奨されます。キングズカレッジロンドン+2Shirley Ryan AbilityLab+2
まとめ
- FIM は、18 項目・7 段階 で日常生活における自立度と介助量を評価する国際的な ADL スケール。
- 「運動 13 項目」「認知 5 項目」の 2 ドメインからなり、合計点は 18〜126 点。
- 評価の中心は、患者さんが 実際の生活場面でどれくらい自分で行えているか、
どの程度 介助者の関与が必要か をみること。 - 1〜7 点の基準は、介助量(%)と介助者の有無で整理され、特に 5 点以上は「介助者不要」がポイント。
- 食事や整容などセルフケアから、移動・階段、コミュニケーションや問題解決まで、
身体と認知の両面をカバーしている。 - 研究・統計解析にも使いやすく、予後予測やリハ介入効果の指標としても有用だが、
評価者のトレーニングや著作権への配慮が必要。







