【行動心理学で解説】なぜ「よくなりたいのにやる気が出ない」のか? 〜現在バイアスという脳のクセ〜

「元気になりたい気持ちはあるのに、リハビリがなかなか続かない…」
「目標はあるのに、つい今日もテレビやスマホに時間を使ってしまった」
そんな経験、ありませんか?
この「やりたいのにできない」「目標はあるのに行動できない」という状態には、脳のクセ(バイアス)が深く関係しています。
その代表が、「現在バイアス(Present Bias)」と呼ばれる心理現象です。
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現在バイアスってなに?
現在バイアスとは、未来の大きな利益よりも、目の前の小さな快楽を優先してしまう人間の傾向のこと。
たとえば、
• 「3ヶ月後に歩けるようになりたい」と思っていても、
• 「今、ソファでゆっくりしたい」という誘惑に負けてしまう。

これは意志が弱いからではありません。
私たちの脳はもともと、今すぐのごほうびに強く反応するようにできているのです。
なぜ人は「今」に引っ張られてしまうのか?

人間の脳には、「即時の報酬」を優先する本能があります。
• 昔は、食べ物や安全な場所など、「今すぐ手に入るもの」が生き延びるために大切でした。
• その名残で、現代でも「未来の健康」より「今の快適さ」の方に心が動いてしまうのです。
これを「双曲割引(Hyperbolic Discounting)」とも言い、将来の利益を時間とともに小さく見積もってしまう傾向を表します。
リハビリが続かないのは「脳の仕組み」のせい
だから、「続かない」「やる気が出ない」ことを、自分のせいだと責める必要はありません。
むしろ、「現在バイアス」がある前提で、うまく付き合う工夫をしていくことが大切なんです。
現在バイアスとうまく付き合うコツ
1. 「今すぐ」のごほうびを用意する

リハビリのあとに、
• お気に入りのお菓子を食べる
• 好きな音楽を聴く
• 好きな人に電話する
など、すぐにうれしいことをセットにすると、脳が「やってよかった」と感じやすくなります。
2. 小さな目標に分ける

「1ヶ月で5kg筋力をつける」ではなく、
「今日はイスに座って10回だけ足を動かす」といったハードルの低い行動に分けましょう。
小さな達成感が、「もっとやろう」という前向きな気持ちを育てます。
3. 進歩を見える化する

ノートやアプリで記録をつけていくと、
• 「あ、前よりできてる」
• 「昨日より頑張れた」
といった気づきがモチベーションになります。
未来が少しずつ近づいていることを、目で見える形にするのがポイントです。
4. 「嫌われたくない人」と約束する

心理学では、「他人の目」が行動を強く後押しすることがわかっています。
• 好きな孫や配偶者
• 仲の良い看護師さん
• 信頼しているセラピスト
など、「この人にはがっかりされたくない」と思う相手に、「明日もリハビリやるね」と口に出して約束することで、やる気のブーストになります。
5. 紙に書き出す(目標・行動・理由)

頭の中だけで考えていると、気持ちも流れやすくなります。
• 「元気になったらやりたいこと」
• 「1週間の目標」
• 「今日やること」
などを、実際に紙に書き出すことで、曖昧な目標が明確になり、意識が切り替わりやすくなります。
おわりに:人は変われる。でも脳のクセも無視しないで。
「やりたいのにできない」という状態は、誰にでも起こります。
それは、意志が弱いわけではなく、行動にブレーキをかける心理的な力が働いているだけ。
この「現在バイアス」を知ることで、自分を責める気持ちを減らし、前向きな工夫ができるようになります。
リハビリは、毎日の小さな選択の積み重ね。
大きな目標も、「今日の一歩」から始まります。
焦らず、脳とうまく付き合いながら、少しずつ一緒に進んでいきましょう。

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