脳の神経回路「放線冠」ってなに?構造・機能を解説
脳は複雑で精緻な構造を持つ臓器であり、その中でも神経回路が情報をやり取りするための「道路」にあたる部分が数多く存在します。
放線冠(ほうせんかん、corona radiata)はそのような神経回路の一部で、脳の中で非常に重要な役割を果たす領域です。
本記事では、この放線冠の基本的な構造や機能、関連する病気やその役割を詳しく解説します。
放線冠ってなに?
(引用:株式会社STROKELAB ニューロリハビリ研究所)
放線冠は、大脳皮質から脳の深部に至るまで広がる白質線維の束です。
大脳皮質は情報の処理を行う脳の表面の灰白質から成り立ち、
その下にある白質は神経細胞の軸索(神経線維)によって構成されています。
放線冠は、大脳皮質と脳の他の部分、特に大脳基底核や視床などとを結ぶ神経線維の集まりであり、
脳全体の情報の流れを支える「通信網」として機能します。
放線冠はその広がりが放射状に見えることから、この名前が付けられました。
「放射」とは、中心から外側に向かって広がる様子を指し、
放線冠はちょうど脳の中心部分(視床や大脳基底核)から大脳皮質に向かって放射状に神経線維が広がっている構造をしています。
この神経線維の束は、脳が各種の感覚や運動の指令を正確に行き交わせるために重要です。
放線冠の構造
放線冠は大脳皮質の広範囲にわたって存在し、皮質下の白質に位置しています。
具体的には、放線冠を構成する神経線維は上方では大脳皮質のさまざまな領域に分散し、
下方では内部カプセル(internal capsule)に集まって、さらに視床や脳幹へと接続します。
この内部カプセルは、放線冠の中でも特に密集している部分で、
脳の重要な機能を持つ領域に接続されているため、損傷があった場合の影響が非常に大きくなります。
内部カプセルは、放線冠の線維が通過する狭い通路であり、特に視床と大脳基底核の間を走る部分を指します。
ここでは運動や感覚に関わる神経線維が密に集まっているため、この部分が損傷を受けると、感覚や運動の障害が広範囲に及ぶことがあります。
放線冠の機能
放線冠の主要な機能は、大脳皮質と脳深部との情報のやり取りを担うことです。
具体的には、次のような機能があります。
感覚情報の伝達
皮質に送られる感覚情報(触覚、視覚、聴覚など)が放線冠を通って伝達されます。
例えば、体の各部分で感じた触覚の情報が脊髄から視床を経て放線冠を通り、最終的に大脳皮質に到達します。
運動指令の伝達
反対に、大脳皮質から脊髄に送られる運動の指令も放線冠を経由して伝達されます。
これにより、体の各部分の筋肉を適切に動かすための信号が送られます。
認知機能や言語機能のサポート
放線冠は、単なる運動や感覚の伝達だけでなく、高次機能である記憶、言語、認知機能の処理にも関与しています。
特に、左右の大脳半球を繋ぐ神経線維である脳梁(のうりょう)との関連が深く、これらの高次機能をサポートしています。
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