杖の正しい高さとは?合わせ方と高すぎる・低すぎる場合の問題点を作業療法士が解説
杖を買ったけど、高さはこれで合っているのかな?」「なんとなく歩きにくい気がする……」
実は、杖は高さが数cm違うだけで歩きやすさや身体への負担が大きく変わります。高さが合っていないと、肩や首の痛み、腰痛、転倒リスクの増加など、さまざまな問題につながることがあります。
杖は「低すぎる方が危険」と思われがちですが、高すぎても身体への負担や歩行の不安定さにつながります。適切な高さに調整することが、安全な歩行の第一歩です。
本記事では、作業療法士(OT)の視点から、杖の正しい高さの合わせ方と、高すぎる・低すぎる場合に起こる問題について解説します。
目次
杖の正しい高さ
一般的には、以下の2点が目安になります。
- 持ち手が大腿骨大転子(太ももの付け根の外側の出っ張り)の高さ
- 杖を持った状態で肘が約30度曲がる

図①:杖の正しい高さの目安
杖が低すぎるとどうなる?
「少し低いくらいなら問題ない」と思われることがありますが、実は低すぎる杖はさまざまな問題を引き起こします。

図②:杖が低すぎる場合
肘が伸びきってしまう
本来は約30度曲がっている肘が伸びきってしまいます。その結果、杖へ体重を預けにくく、衝撃を吸収しにくくなり、腕に負担がかかるようになります。
体幹が側屈してしまう
杖に手が届きにくくなるため、身体を杖側へ傾けて歩くようになります。この姿勢が続くと、腰痛・背中の痛み・バランス低下につながることがあります。
歩行が不安定になる
身体を無理に傾けながら歩くため、歩幅が乱れたり、疲れやすくなったりします。特に高齢者では転倒リスクの増加につながる可能性があります。
杖が高すぎるとどうなる?
逆に杖が高すぎても問題があります。

図③:杖が高すぎる場合
肘が曲がりすぎる
肘が大きく曲がるため、肩から腕にかけて常に力が入り続けます。その結果、肩こり・首の痛み・腕の疲労が起こりやすくなります。
肩がすくんでしまう
杖が高いと肩を持ち上げるような姿勢になります。この状態では僧帽筋などが緊張し続けるため、肩や首の負担が大きくなります。
杖に十分体重を預けられない
杖が高すぎると、身体を支えるという本来の役割を十分に果たせません。特に下肢筋力が弱い方、脳卒中後の片麻痺、変形性膝関節症では歩行の安定性が低下することがあります。
| 低すぎる | 高すぎる | |
|---|---|---|
| 肘 | 伸びきる | 曲がりすぎる |
| 姿勢 | 体幹が側屈 | 肩がすくむ |
| 負担 | 腰・背中 | 肩・首 |
| 歩行 | 不安定 | 杖に荷重しにくい |
杖の高さは定期的に見直そう
杖の高さは一度合わせたら終わりではありません。例えば、次のような場合は適切な高さも変わる可能性があります。
- 靴が変わった
- リハビリで姿勢が改善した
- 歩行能力が向上した
- 新しい杖へ買い替えた
「最近歩きにくいな」と感じたら、高さを確認してみましょう。
高さ調整できる杖を選ぶのがおすすめ
市販の杖を購入する場合は、高さ調整機能が付いている杖を選ぶことをおすすめします。
数cm調整できるだけでも歩きやすさは大きく変わります。また、購入後はPT・OTなどの専門職に確認してもらうと安心です。
まとめ
杖の高さは歩行の安定性や身体への負担に大きく影響します。
| ケース | 特徴 |
|---|---|
| 正しい高さの目安 | 持ち手は大腿骨大転子の高さ/肘は約30度屈曲 |
| 低すぎる杖 | 肘が伸びきる/体幹が側屈する/腰や背中への負担が増える/歩行が不安定になる |
| 高すぎる杖 | 肘が曲がりすぎる/肩がすくむ/首や肩が疲れやすい/杖へ十分体重を預けられない |
杖は「支え」ではなく、「歩きやすさを引き出す道具」です。自分に合った高さに調整することで、より安全で快適な歩行につながります。
よくある質問
杖の高さはどう測ればいいですか?
立った状態で腕を自然に下ろし、手首の高さ(または大腿骨大転子の高さ)を目安に測ります。杖を持った際に肘が軽く曲がる(約30度)高さが適切です。不安な場合はPT・OTなどの専門職に確認してもらいましょう。
杖の高さが合っているかどうかはどうやって確認できますか?
歩いているときに肩が上がっていないか、体幹が左右に傾いていないか、腕が突っ張っていないかを確認しましょう。違和感や痛みがある場合は高さが合っていない可能性があります。
身長から計算できますか?
参考値はありますが、実際には大腿骨大転子と肘30度で合わせましょう。
高さ調整できる杖はどこで買えますか?
ドラッグストアや介護用品店のほか、Amazonなどの通販でも高さ調整機能付きの杖が購入できます。購入後は実際に使用しながら、専門職に高さの確認をしてもらうと安心です。
本記事は作業療法士(OT)の臨床知識をもとに作成しています。杖の高さ調整については個人差が大きいため、実際の調整はPT・OTなどの専門職にご相談ください。







