感覚検査の方法とアセスメント完全ガイド|OT・PTが臨床で使える評価手順と解釈
「感覚検査をどの順番で実施すればいいか」「健側が使えないときにどこを基準にすればいいか」——臨床でこうした迷いを経験したことがある方は多いのではないでしょうか。
感覚検査は、脳卒中はもちろん、脊髄損傷・末梢神経障害・糖尿病性ニューロパチーなど幅広い疾患に対応できるスキルです。正確な検査・アセスメントができると、病巣推定・リハビリ計画立案・ADL支援の精度が大きく上がります。
この記事では、OT・PTが臨床で使える感覚検査の実施手順・評価のポイント・障害パターンの解釈までを体系的に解説します。


この記事でわかること
- 感覚検査の種類と神経解剖学的な意味
- 表在感覚(触覚・痛覚・温度覚)の正しい実施手順
- 深部感覚(位置覚・運動覚・振動覚)の実施手順と判断基準
- 複合感覚(皮質感覚)の評価方法
- 健側が使えないときの基準部位の選び方
- 感覚障害パターンと病巣推定の考え方
- ADLアセスメントへの活かし方
感覚検査とは|なぜOT・PTが正確に評価する必要があるのか
感覚検査とは、体表および深部の感覚機能(触覚・痛覚・温度覚・位置覚・運動覚・振動覚・複合感覚)を系統的に評価する神経学的検査です。
感覚情報は、随意運動のフィードバック・姿勢制御・ADL動作の精度に直結しています。たとえば手掌の触覚が低下するだけで把握動作は「見ないと危ない」状態になり、位置覚が失われると立ち上がりや歩行の不安定性につながります。
感覚の神経経路:2つの系統を理解する
感覚は大きく2つの神経経路を通って大脳皮質に伝わります。この経路の違いが、感覚障害パターンの解釈に直結します。
| 経路 | 後索-内側毛帯系 | 脊髄視床路(前外側索) |
|---|---|---|
| 伝える感覚 | 触圧覚・振動覚・位置覚・運動覚 | 痛覚・温度覚・粗大触覚 |
| 交叉のタイミング | 延髄(同側を上行して延髄で交叉) | 脊髄(入力後すぐに交叉) |
| 走行 | 脊髄後索→延髄交叉→対側→視床→頭頂葉 | 脊髄前外側→交叉→対側→視床→頭頂葉 |
| 障害時の特徴 | 同側の触圧覚・深部感覚低下 | 対側の痛覚・温度覚低下 |
📌 臨床ポイント
この2経路が別々に障害されることを解離性感覚障害といいます。「触覚は正常なのに痛覚が脱出している」というパターンは脊髄視床路単独の障害(Brown-Séquard症候群・脊髄空洞症など)を示唆します。逆に「位置覚だけが障害されている」場合は後索系の選択的障害です。
感覚検査を始める前の準備と共通事項
評価尺度:NRS(Numerical Rating Scale)の使い方
表在感覚の評価には、患者の主観的な感覚量を数値化するNRS(Numerical Rating Scale)が広く用いられます。
NRSの基準
患者が「正常」と認識する感覚部位 = 10 として、評価部位の感覚量を患者が自己申告します。
- 9・8・7 軽度鈍麻
- 6・5・4 中等度鈍麻
- 3・2・1 重度鈍麻
- 0 感覚脱出(全く感じない)
【重要】基準部位の選び方:健側が使えない場合の対応
脳卒中では「非麻痺側=10」が基本ですが、以下の疾患では両側に障害が生じるため健側を基準にできません。
- 脊髄損傷(両側対称性に障害)
- 糖尿病性ニューロパチー(手袋靴下型)
- 多発神経炎・Guillain-Barré症候群
- 多発性硬化症(両側病変)
健側比較ができない場合の代替基準
- 顔面(三叉神経支配):末梢・中枢問わず最も保たれやすく、第一選択の基準部位
- 胸部(乳頭以上):脊髄損傷でも高位保存域として使いやすい
- 検査開始前に「まったく感じない=0、正常と同じ=10」と口頭で十分に説明してから開始する
検査共通の注意事項
- 視覚遮断を徹底する(深部感覚・複合感覚では特に厳守)
- 非障害側→障害側の順に刺激し、直後に評価側を刺激することで感覚の記憶が鮮明なうちに比較させる
- 疲労の影響が出る前に実施。重症例・高齢者は短時間で要点を絞る
- 患者が検査の意図を理解できているか(理解力・言語能力)を事前に確認する
- 半側空間無視・失認がある場合は感覚検査の解釈に注意が必要
表在感覚の検査方法
表在感覚とは、皮膚表面の受容器が感知する感覚です。触覚・痛覚・温度覚の3つを評価します。
① 触覚の検査
使用器具:筆(または綿棒・ティッシュ)
手順:
- 患者に視覚遮断(目を閉じてもらうか布で遮蔽)を指示する
- 非障害側の対称部位を筆で軽く触れる(基準刺激)
- 直後に評価側の対称部位を同程度の力で触れる
- 「先ほど触れた感覚を10とすると、今の感覚は何点ですか?」と問う
- NRSで記録する
📌 評価部位の順序:顔面上部・中部・下部→頸部→体幹上・中・下部→上肢(手掌・手背・前腕内側・外側・上腕内側・外側)→下肢(大腿内側・外側・下腿内側・外側・足背・足底)の順が基本。体節に沿って近位→遠位の順に評価すると障害の分布が把握しやすい。
② 痛覚の検査
使用器具:ピン車(Wartenberg wheel)または安全ピン
手順:触覚と同様の流れで実施。患者には「チクチク・鋭い感じ」で説明し、触れる感覚と明確に区別させる。
⚠️ 解離性感覚障害に注意
痛覚と触覚は異なる経路(脊髄視床路と後索系)を上行します。「触覚は正常なのに痛覚が脱出」または「痛覚は正常なのに位置覚が消失」というパターンは解離性感覚障害であり、障害部位の推定に重要な情報となります。必ず触覚と痛覚を別々に評価してください。
使用器具
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