ブルンストロームステージ完全ガイド|評価基準・判定の流れ・リハビリへの応用まで

📋 目次

  1. ブルンストロームステージとは
  2. 開発の背景と歴史
  3. 6段階の詳細
  4. 上肢・下肢・手指別の特徴
  5. 評価方法と実施のポイント
  6. リハビリテーションへの応用
  7. BRSの限界と補完的評価
  8. まとめ

ブルンストロームステージ(Brunnstrom Recovery Stage:BRS)は、脳卒中後の運動麻痺の回復過程を6段階で評価する指標です。理学療法士・作業療法士にとって日常的に使用する評価ツールであり、リハビリテーションの目標設定・治療アプローチの選択・経過観察に欠かせない存在です。本記事では、各ステージの詳細な特徴から評価のコツ、臨床への応用まで体系的に解説します。

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ブルンストロームステージとは

ブルンストロームステージ(BRS)は、スウェーデンの理学療法士シーグネ・ブルンストローム(Signe Brunnstrom)が1966年に提唱した、脳卒中後の運動回復を評価するための臨床的スケールです。

脳卒中後の運動麻痺は、単純に「動く・動かない」ではなく、弛緩→共同運動→分離運動という特有の回復プロセスをたどります。BRSはこの回復の「質」を段階的に表現したもので、上肢(UE)・下肢(LE)・手指(Hand)の3つを独立して評価します。

📌 BRSの3つの評価対象 上肢(Brunnstrom Stage:上肢)・手指(Brunnstrom Stage:手指)・下肢(Brunnstrom Stage:下肢)の3項目を、それぞれStage 1〜6で評価します。必ずしも3項目が同一ステージになるとは限りません。

開発の背景と歴史

ブルンストロームは1950〜60年代のニューヨークにおいて、多数の片麻痺患者を観察・研究しました。当時の主流は「異常運動パターンを抑制する」神経発達学的アプローチ(Bobath法)でしたが、ブルンストロームは共同運動パターンを回復初期の有用な段階として積極的に活用する独自の視点を提示しました。

1966年の著書『Movement Therapy in Hemiplegia』でこの段階評価が体系化され、現在では世界標準の評価指標として国際的に使用されています。日本においても脳卒中リハビリテーション診療ガイドラインで推奨されており、保険診療上の機能評価としても広く用いられています。

6段階の詳細

BRSは弛緩(Stage 1)から正常(Stage 6)まで、以下の6段階で表現されます。

Stage 1

弛緩期(Flaccidity)

  • 随意運動が全く認められない
  • 筋緊張は低下〜消失(弛緩)
  • 深部腱反射の低下・消失
  • 発症直後〜急性期に多い

Stage 2

共同運動の出現期

  • 最小限の随意運動が出現
  • 痙縮(スパスティシティ)が出現・増強
  • 連合反応が見られる
  • 共同運動パターンが誘発可能になる

Stage 3

共同運動の確立期

  • 共同運動パターンが随意的に実施可能
  • 痙縮がピーク(最も強い状態)
  • 分離運動は困難
  • ADLの一部介助が必要な段階

Stage 4

分離運動の出現期

  • 共同運動パターンから逸脱した動きが一部可能
  • 痙縮が軽減し始める
  • 比較的難易度の低い分離運動が可能
  • ADL能力が大幅に向上する段階

Stage 5

分離運動の確立期

  • より難易度の高い分離運動が可能
  • 痙縮がさらに軽減
  • 共同運動の影響はほぼ消失
  • 日常生活の多くの動作が自立に近い

Stage 6

正常に近い運動(協調運動)

  • 個別関節の分離運動がほぼ正常
  • 痙縮は消失もしくは最小限
  • 速度・協調性に軽微な問題を残すことがある
  • ADLはほぼ自立

共同運動(Synergy)とは

BRSを理解するうえで「共同運動」の概念は非常に重要です。共同運動とは、特定の筋群が一括して同時収縮してしまうパターンのことで、脳卒中後の上位運動ニューロン損傷によって出現します。

部位屈筋共同運動(Flexor Synergy)伸筋共同運動(Extensor Synergy)
上肢肩関節:外転・外旋
肘関節:屈曲
前腕:回外
手関節・手指:屈曲
肩関節:内転・内旋
肘関節:伸展
前腕:回内
手関節・手指:屈曲
下肢股関節:屈曲・外転・外旋
膝関節:屈曲
足関節:背屈・外反
股関節:伸展・内転・内旋
膝関節:伸展
足関節:底屈・内反
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上肢・下肢・手指別の詳細評価基準

Stage 4・5の分離運動:具体的な判断基準

Stage 4・5の評価は最も判断が難しく、臨床上の議論が生まれやすい部分です。以下に上肢・下肢・手指それぞれの具体的な動作基準を示します。

🦾 上肢(Upper Extremity)

Stage 4 の目安

① 手を腰後部に当てる
② 肘伸展位で肩を90°前方挙上
③ 肘90°屈曲位での前腕回内外

Stage 5 の目安

① 肘伸展位で肩を90°外転
② 肘伸展・前腕回外位で肩前方挙上
③ 肘伸展位での前腕回内外

Stage 6 の目安

上記すべてが滑らかに実施可能。速度・協調性が健側に近い状態。日常動作での自動的使用が可能。

✋ 手指(Hand)

Stage 4 の目安

側方つまみ(lateral pinch)が可能。全指の集団的伸展が可能(完全でなくてよい)。

Stage 5 の目安

手掌つまみ・球状つまみが可能。指の集団的伸展がより完全に実施可能。

Stage 6 の目安

全ての把握パターンが可能。個別指の分離運動(ピアノを弾くような動作)が可能。

🦵 下肢(Lower Extremity)

Stage 4 の目安

座位での膝屈曲90°以上(股関節伸展位)。座位での足関節背屈。

Stage 5 の目安

立位での膝屈曲(股関節伸展位)。立位での足関節背屈(膝伸展位)。

Stage 6 の目安

立脚期・遊脚期の分離運動が協調的。外反・内反の随意制御が可能。

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評価方法と実施のポイント

評価の流れ

BRSの評価は、原則として以下の順序で行います。

  1. 問診・観察:発症からの期間、麻痺側・非麻痺側の確認
  2. 筋緊張の確認:安静時の筋緊張・スパスティシティの評価(MAS等と併用)
  3. 反射の確認:深部腱反射(BTR・PTR等)の亢進・消失
  4. 共同運動の誘発:屈筋・伸筋共同運動が随意的または誘発で出るか確認
  5. 分離運動の確認:Stage 4・5の基準動作を系統的に確認
  6. ステージの決定:上肢・手指・下肢を独立して評価・記録

💡 評価精度を高める3つのコツ ①「最低限できる動作」ではなく「安定して再現できる動作」でステージを判定する。②痙縮が強い時間帯(朝)と軽減している時間帯(入浴後・運動後)でパフォーマンスが異なる点に注意。③Stage 3と4の境界は「共同運動パターンからの逸脱が起きているか」という視点で判断する。

Stage 判定のフローチャート

確認事項判定
随意運動が全くないStage 1
共同運動が誘発されるが、随意的実施は困難。痙縮出現Stage 2
共同運動が随意的に実施できる。痙縮が最強。分離運動なしStage 3
Stage 4の基準動作(比較的容易な分離運動)が可能Stage 4
Stage 5の基準動作(難易度の高い分離運動)が可能Stage 5
個別関節の分離運動が速度・協調性含めほぼ正常Stage 6

リハビリテーションへの応用

ステージ別の介入方針(作業療法の視点)

💡 在宅リハビリにおけるBRSの活用 訪問リハビリテーション場面では、病院のように設備が整っていないため、BRSのステージに合わせた生活動作の中での機能訓練が重要です。例えばSt.3〜4の方には、食事・洗顔・更衣の中で患側上肢を意識的に参加させる「生活埋め込み型アプローチ」が効果的です。

BRSの限界と補完的評価指標

BRSは非常に有用な評価ツールですが、以下のような限界点も理解しておく必要があります。

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BRSと組み合わせて使用する評価指標

評価指標特徴・補完できる情報
FMA(Fugl-Meyer Assessment)BRSを数値化した精細評価。研究・臨床研究での使用に適す
MAS(Modified Ashworth Scale)痙縮の重症度を6段階で評価。BRSの筋緊張情報を補完
STEF(簡易上肢機能検査)上肢の巧緻性・速度を定量評価。BRS St.4〜6での精細評価に有用
FIM(機能的自立度評価表)ADL全般の自立度。BRSの機能回復がADLに反映されているかを評価
Wolf Motor Function Test(WMFT)上肢の課題達成時間・質を評価。CI療法の効果測定にも使用

まとめ

ブルンストロームステージは、脳卒中後の運動麻痺回復を「弛緩→共同運動→分離運動→正常」というプロセスで捉えた、シンプルかつ臨床的に非常に実用性の高い評価ツールです。

単にステージを数値として記録するだけでなく、各ステージが持つ神経生理学的意味を理解し、それをリハビリテーションの目標設定・アプローチ選択・患者説明に活かすことが本質的な使い方です。

特に在宅リハビリテーションの場面では、BRSのステージに基づいた生活機能視点のアプローチが、患者のQOL向上と機能回復の両立に直結します。評価と介入を循環させながら、一人ひとりの回復過程に寄り添うリハビリテーションを実践していきましょう。

📝 この記事のポイント整理 ① BRSは上肢・手指・下肢を独立して1〜6段階で評価する ② 共同運動の理解がBRS評価の核心 ③ Stage 3→4の移行(分離運動の出現)がADL自立への転換点 ④ FMA・MAS・STEFなどと組み合わせることで評価の精度が上がる ⑤ ステージに応じた目標設定・アプローチ選択が臨床の要点


この記事はホームリハ福岡が作成した情報提供を目的としたコンテンツです。個別の病態・治療方針については担当医療者にご相談ください。

リハビリのスケジュール管理と目標設定がなぜ重要か(5月・6月・7月リハビリカレンダー付き)

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