【脳卒中リハビリ】ブルンストロームステージ(下肢)とは?6段階の評価方法と回復過程を作業療法士が解説

脳卒中後の片麻痺では、上肢・手指だけでなく「下肢」の回復段階を評価することも、歩行や立位動作の予後を考えるうえで重要です。本記事では、下肢のブルンストロームステージ(Brunnstrom Recovery Stage:BRS)について、各ステージの特徴・評価ポイント・OT/PT視点からの臨床的な意味を、作業療法士が解説します。
なぜ下肢のステージ評価が重要か
下肢のブルンストロームステージは、単に「麻痺の重さ」を表す指標ではなく、歩行や立位動作にどのような運動パターンが現れやすいかを予測する手がかりになります。
- ①共同運動が優位な段階では、股・膝・足関節が一緒に動いてしまうため、分回し歩行や尖足などの代償動作が出やすくなります。
- ②分離運動が向上してくると、遊脚期の膝屈曲や足関節背屈が個別にコントロールできるようになり、歩行の質が改善しやすくなります。
- ③ステージに応じて、装具の要否や自主トレーニングの内容、歩行練習の進め方を調整する判断材料になります。
訪問型の自費リハビリでは、病院での評価だけでは見えにくい「実際の生活場面での歩き方・立ち上がり方」まで確認できることが強みです。ステージの数字だけでなく、自宅の床材や段差、動線の中でどのような運動パターンが出るかまで含めて評価することを大切にしています。
下肢のブルンストロームステージ一覧
| ステージ | 状態 | 概要 |
|---|---|---|
| Ⅰ | 弛緩期 | 随意運動・腱反射ともにみられない |
| Ⅱ | 連合反応の出現 | 随意運動はまだ困難だが、連合反応や軽度の痙性がみられ始める |
| Ⅲ | 随意運動の出現 | 股・膝・足関節を同時に屈曲させる共同運動が可能。分離運動は困難 |
| Ⅳ | 共同運動からの離脱 | 共同運動から少しずつ離れ、分離運動が出現し始める |
| Ⅴ | 分離運動の向上 | 抗重力位での分離運動が可能となる |
| Ⅵ | 巧緻性の回復 | 分離運動が十分に可能となり、協調性が回復する |
ステージⅠ(弛緩期)
特徴
発症直後にみられる時期で、随意運動はもちろん、腱反射も減弱・消失している弛緩性麻痺の状態です。筋緊張は全体的に低下しています。
評価ポイント
股・膝・足関節いずれの関節にも、随意的な筋収縮がまったくみられないかどうかを確認します。
OT視点
この時期は関節可動域の維持や良肢位保持、廃用予防が中心の関わりになります。感覚入力を通じた早期からの働きかけも重要です。
ステージⅡ(連合反応の出現)
特徴
随意的な運動は依然として困難ですが、あくび・くしゃみ、健側への抵抗運動などをきっかけに、連合反応として麻痺側下肢にわずかな筋収縮や痙性の出現がみられ始める段階です。
評価ポイント
連合反応による筋収縮を、随意運動の出現と混同しないように注意が必要です。安静時と促通時の反応を分けて観察します。
連合反応はあくまで反射的な筋緊張の変化であり、本人の意思でコントロールできる随意運動とは区別されます。ステージⅡとⅢの判定を誤らないよう、実際に「意図して動かせているか」を確認することが大切です。
ステージⅢ(随意運動の出現)
特徴
股・膝・足関節を同時に屈曲させる共同運動が可能となる段階です。まだ分離運動は困難で、共同運動(屈曲シナジー)の影響を強く受けます。
典型的な運動
- 座位・立位で股・膝・足関節の同時屈曲が可能
- 股関節・膝関節・足関節を一緒に曲げることができる
- 関節を個別に動かすことはまだ難しい
評価のポイント
- 座位・立位で股・膝・足関節の同時屈曲ができるか
- 屈曲時に共同運動(屈曲シナジー)が出現するか
- 分離運動ではなく、3関節が一緒に動いているか
OT視点
歩行時には股関節の分回しや膝の振り出しが不十分になりやすく、代償動作が出やすい時期です。座位・臥位での随意運動の引き出しから段階的に進めます。
ステージⅣ(共同運動からの離脱)
特徴
共同運動から少しずつ離れ、分離運動が出現し始める段階です。
典型的な運動
- 座位で足を床の後方へ滑らせながら膝90°屈曲
- 足底を床につけたまま足関節背屈が可能
評価のポイント
- 足底を床から離さず膝を90°まで曲げられるか
- 随意的な足関節背屈が可能か
- 共同運動の影響が減少しているか
OT視点
座位での膝屈曲・足関節背屈の分離練習が、この後の遊脚期のコントロールにつながります。日常生活では椅子からの立ち座り動作の中で練習しやすい段階です。
ステージⅤ(分離運動の向上)
特徴
抗重力位での分離運動が可能となる段階です。
典型的な運動
- 立位で股関節伸展位(またはそれに近い肢位)で膝屈曲
- 一歩前へ踏み出した状態で足関節背屈
評価のポイント
- 股関節伸展位で膝を屈曲できるか
- 膝伸展位で足関節背屈ができるか
- 抗重力位で分離運動が可能か
OT視点
歩行の立脚後期における蹴り出しや、遊脚期の足関節クリアランスが改善しやすくなる時期です。屋外歩行や段差昇降の練習に進みやすくなります。
ステージⅥ(巧緻性の回復)
特徴
分離運動が十分に可能となり、協調性が回復する段階です。
典型的な運動
- 立位で骨盤挙上を伴わない股関節外転
- 座位で下腿の内旋・外旋(足関節の内返し・外返しを伴う)
評価のポイント
- 骨盤代償なく股関節外転できるか
- 下腿の内旋・外旋が可能か
- 足関節の内返し・外返しを伴う協調運動ができるか
OT視点
この段階では、速度やバランスを伴った実用的な歩行、階段昇降、方向転換など、より複雑な動作への応用が中心になります。
評価する上での注意点
重要なのは、ステージが高い=生活で歩ける・使える、とは限らないということです。
感覚障害、失調、半側空間無視、高次脳機能障害、疼痛、恐怖心などがあると、運動機能自体は回復していても、実際の歩行や立位動作での実用性は下がることがあります。そのため、ステージ評価に加えて、実生活場面での動作評価も併せて行う必要があります。
下肢のステージは「共同運動の減少 → 分離運動の向上 → 抗重力下での運動 → 巧緻性の回復」という流れで進みます。この流れを踏まえて、今どの段階の運動を引き出すべきかを判断することが、歩行再建の方針を立てるうえで役立ちます。
まとめ
- Ⅰ 弛緩
- Ⅱ 連合反応の出現
- Ⅲ 随意運動の出現(共同運動が強い)
- Ⅳ 共同運動からの離脱
- Ⅴ 抗重力位での分離運動
- Ⅵ 協調性・巧緻性の回復
下肢のブルンストロームステージは、歩行や立位動作の回復過程を把握し、「今できる運動」と「次に引き出したい運動」を明確にするための重要な評価です。上肢・手指のステージとあわせて確認することで、より全体的な回復状況の把握につながります。







